現役ドイツ代表GKで、女子サッカーでは欧州屈指の強豪ボルフスブルクの守護神でもあるアルムート・シュルトが双子を出産した。現役ドイツ代表の選手としては、現代表監督のマルティナ・フォス・テックレンベルク以来2人目となる。
生まれたばかりの子どもたちについて「今まで腕に抱えたものの中で最も素晴らしいもの」と語るシュルトは、同時に「再びGKグローブを付けることができればうれしい」と意気込む。5月27日の『シュポルトビルト』が伝えた。
「サッカーは人生のすべてではない」
シュルトは2019年の女子ワールドカップ・フランス大会でベスト8敗退すると、肩を手術するために戦列を離れた。そのタイミングで妊娠がわかったそうで、まったくの予定外ではあったものの、「とてもうれしい」と喜んだ。
周囲には、現役選手として全盛期に妊娠したことに懐疑的な目を向ける人もいたというが、本人は確固たる信念を持っている。
「私にとって、サッカーは人生のすべてではありません。自分のキャリアに満足しているし、これで私の代表選手としてのキャリアが終わるという感覚もありません。世の中には、子育てと職業上のキャリアを両立させている女性がたくさんいます。サッカー界だけが不可能ということはないでしょう」
「ドイツ代表やクラブは前向きに取り組んでくれる」
現ドイツ代表監督のフォス・テックレンベルクは、出産後も女子ドイツ代表でプレーした唯一の選手だ。この経験から、母親でありながらアスリートである難しさも理解している。
「監督は『当時は大変だった』と話していました。サッカーのために自分の娘と離れることも多かったことが、とりわけ辛かったようです。私には同じ経験をさせたくないようで、サポートを約束してくれました」
所属クラブのボルフスブルクやドイツ代表も、このテーマに前向きに取り組んでくれているそうだ。だが、この“育児とサッカー”というテーマでは「アメリカ代表では、毎日チームに帯同してくれるベビーシッターがついています」と世界王者を例に出す。ジョイ・フォーセットのように、現役代表選手として3人の子供を生んだ選手も輩出している米国代表は、彼女たちの経験をもとに、ノウハウとして現場で生かしている。
「アメリカでは “プロサッカーと育児の両立”というテーマに関して、ドイツよりもさらに先に進んでいます。ロッカールームに子供がいることには確かに慣れる必要があります。とはいえ、これからドイツ国内でどのように発展していくのか、ドキドキしています」
照準は2022年の欧州選手権
ボルフスブルクとの契約は2022年まで残っているが、その後もドイツ代表、そしてボルフスブルクの守護神としてプレーを続けるつもりだ。
「2022年までの契約を全うし、その後もプレーし続けるでしょう。2022年には欧州選手権イングランド大会が開かれます。当然、この大会に出場したいですね。来季のシーズン中に復帰することが当面の目標です」
現在29歳のシュルトは「すべてのワーキングマザーをお手本としている」と話す。ドイツ女子サッカー界が、多様なライフスタイルを実現するロールモデルの1つとして、今後の彼女の経験を生かしてくことになる。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。