2019年のU-21欧州選手権を勝ち上がり、ドイツ代表は2021年の東京オリンピックに出場する。
とはいえ、アンダーカテゴリーの代表チームで最も結果を残しているのはスペインだろう。選手のクオリティでいえば、フランスの選手たちは若くして欧州トップリーグへと移籍し、10億円単位の移籍金を残している。イングランドの追い上げも急ピッチで進み、ジェイドン・サンチョのような選手がブンデスリーガに登場している。
以前『フットボリスタ』でも紹介したように、ドイツの育成年代の指導者たちは危機感を抱いている。こういった状況の中、ドイツサッカー連盟もアンダーカテゴリー代表の仕組みについて変更を行った。5月20日の『シュポルトビルト』では、ドイツのアンダーカテゴリー代表全体を統括するマイケル・シェーンバイツが、そのプログラムについて説明している。
特色の異なる3人がチームを結成
シェーンバイツは、ヘッセン州選抜チームの監督を経て、岡崎慎司や武藤嘉紀が所属したマインツでU-17監督として活躍した。
この活躍が認められ、当時ドイツサッカー連盟でテクニカルディレクターだったハンジ・フリック(現バイエルン監督)に雇い入れられる。現在40歳と比較的若いが、U-16からU-20までの代表監督を、毎年1年ずつカテゴリーを上げながら担当し、その経験を生かして現在の役職に就いている。
この経験から導き出されたのが、次に紹介する5つの“仕組み”だ。
1 監督3人からなるコーチングチーム
各カテゴリーの代表チームは、3人の監督たちによって率いられることになる。1人はプロで実績を残し、長らく活躍してきた「経験豊富」なタイプ。2人目は各年代のアンダーカテゴリーでの知見が豊富な「育成年代のスペシャリスト」。3人目は若くて新しい技術やデータに強く、知的好奇心が旺盛な「イノベーションタイプ」だ。
この異なる強みや視点を持った監督たちが、それぞれの考えを交錯させながら選手たちの指導に反映させ、指導者自身も成長していこう、というのが1つ目のコンセプトだ。
例えば現在のU-18ドイツ代表は、元ドイツ代表で、ドルトムントやパリ・サンジェルマンで活躍したクリスティアン・ベアンスが“育成年代のエキスパート”として担当している。“経験豊富” なアシスタントコーチとして、バイエルンやデュッセルドルフで宇佐美貴史を指導したこともあるペーター・ヘアマンが補佐し、27歳と若いファビアン・ヒュアツェラーが“イノベーション”担当として加わっている。
次回は、残りの4点について紹介しよう。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。