4月21日、ドイツサッカーリーグ機構(DFL)が制作した資料がドイツの週刊誌『シュピーゲル』によって紹介された。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響によって3月12日以降中断しているブンデスリーガ再開に向けて用意されたものだ。
ドイツサッカー連盟(DFB)のチーフドクターであるティム・マイヤー医師の下で“DFL医療タスクフォース”が結成され、リーグ再開に向けて健康・安全面で現実的な行動指針がまとめられた。この内容は、4月23日のリーグ代表者会議で紹介されるという。
スタジアムに入れるのは300人
まず、各試合でスタジアムに入れるのは300人。さらにここから“スタジアム内部(ピッチに繋がるエリア)”、“スタンド”、そして“スタジアム外部”の3カテゴリーに分けられ、それぞれ100人ずつが振り分けられる。
“スタジアム内部”には、ピッチ上でプレーする選手22人に加えて、18人のベンチ入りの選手、そして5人の審判団も含まれる。彼らに加え、各チームのスタッフ、救急医療スタッフなども含め、合計で98人が入ることになる。
このため、これまで恒例だったエスコートキッズやゲストを招いた試合前のセレモニーは行われず、試合前の記念撮影なども見合わせるようだ。スタジアム内部で行動するテレビクルーには、新型コロナウイルス感染の有無を判断するPCR検査の他にも、体調を調べるための質問表にも答える必要があるという。
PCR検査は週に最大64万件が可能
行政も含めてブンデスリーガの再開に向けて動いている一方で、これらのためのテストや準備が一般医療への妨げや負荷になっているのではないか、という批判も出ている。ドイツメディア『スカイ』は、これらの批判に対するDFL側の見解を説明する。
DFLは、この数週間でPCR検査のキャパシティが大幅に増えていることを数値として上げた。医療用に認可を受けている研究所では、最大で週に64万件の検査を行えるまでになっており、まだ余裕があるという。
DFLは「そのうちの0.5%に満たない数のテストを要請している」と強調した。もし、将来的に検査の許容量が不足しそうな場合は、一般市民へのケアを「妨害することはない」そうだ。
十分な人数のメンバーが必要
仮に検査結果が陽性だった場合はどうなるのだろうか。その場合は、すぐにその人物を隔離し、その人物と接触した人々の検査を行う。そして「チーム内で事実確認を説明し、落ち着かせる(パニックを起こさせないようにし、チーム内の行動戦略、衛生管理の確認など)」ことが求められている。
また、感染者が出た場合は「メディアに向けて、自発的な情報発信はしない」としている。「病気の判定、そして推測される感染経路の明確な記録が優先される」ためと理由を挙げた。DFLは各クラブに対して「シーズン終了に向けて十分な人数のメンバーを用意しておくように」と勧めている。
タスクフォースは各クラブに向けて、改めて強く願い出ている。
「スタジアムの中ではプロサッカーやチーム、そして選手たちへの公共の視線はさらに強まっている。ピッチ外での衛生面や隔離の措置に関して、模範となる行動を取ることを強く願う」
この他にも、サッカーファンやウルトラスが集合してしまうリスクなど、予測しづらい部分も抱えている。そういった中、ノールトラインヴェストファーレン州のアルミン・ラシェット州首相は「DFLが提出した資料にはしっかりとした防護対策が講じられていた。無観客試合が行える可能性もある」と再開に前向きな意見を述べた。
ドイツメディア『シュポルトバザー』によると、バイエルン州のマルクス・ゼーダー首相は「5月9日に再開できる可能性がある」としながらも「最終的には管轄であるロバート・コッホ研究所からの専門的な判断が必要だ」としている。
同研究所、およびドイツ政府はまだ具体的な日付を示すのには懐疑的だという。4月30日に各州の首相とドイツ政府のアンジェラ・メルケル首相が話し合い、最終的な再開予定日が発表される見込みだ。
Photo: Getty Images
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鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。