イタリアでは5月末または6月初旬を目標に、セリエAを再開させる検討が始められている。新型コロナウイルス感染症拡大のペースが収束傾向に入ったことを受け、法令により課せられた事業者への労働制限が5月4日から徐々に緩和されることを受けてのものだ。
セリエAからの再開を想定
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、イタリアサッカー協会(FIGC)は4月15日、保険当局の関係者や医療の専門家を交えて幹部会議を行い、運営上の規約を固めた。
検査やフィジカルチェックを入念に行い、合宿で選手を隔離する。そして5月4日から練習を始め、手始めに27日と28日にコッパ・イタリア準決勝の第2レグ2試合を開催。5月31日か6月7日にリーグを再開させるというものだ。
まず先にセリエA、その後にセリエB、Cの下部カテゴリーを再開させていく構えだが、あくまで政府の認可が前提である。FIGCのガブリエレ・グラビーナ会長は「サッカーを安全に再開させていくためには、国の活動再開に備えて今の段階から万全な方策を組んでいくことが重要だ。しかし急ぎはしない。当局がゴーサインを出した時に備えて準備をする」と語った。
ラニエリ監督が5人交代制を提案
一方で、現場からはユニークな提案がなされている。サンプドリアのクラウディオ・ラニエリ監督は5月13日、国営放送『RAI』のラジオ番組のインタビューで、5人交代制の採用を提言した。
「予防のための対策をきっちりやるというのなら(再開は)結構なことだ」とした上で、「1週間に3試合ほどしなければならない場合もある。選手たち、とりわけコロナウイルス に感染した選手たちに過剰なストレスを与えてはいけないから、1試合で5人の交代枠を提案したい」と語った。
現在の情勢では、7月や8月にも試合こなさなければならない状況となっている。イタリアの長期予報によれば、6月以降はアフリカから来る高気圧が非常に強く、例年にも増して猛暑になると予想されている。
「クーリングブレークだけで果たして十分なのか? 1994年アメリカW杯決勝のように、猛暑はサッカーのようなスポーツには害をもたらす。ラニエリ監督の提案した通り、5人交代制を採用する必要があるのではないか(『ガゼッタ・デッロ・スポルト』)」と地元紙も同調している。
実はFIGCは昨年11月、国際サッカー評議会に対して5人交代制のテスト運用許可を求めている。ウイルス禍によってその話が再燃化するというのは数奇な話だが、再開がきっかけでサッカーの形も変容することになるのかもしれない。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。