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イタリアサッカー界の慈善活動。クラブ、サポーターが見せた力

2020.03.31

 新型コロナウイルス感染症でリーグが停止している中、選手や監督、クラブやサポーターによる慈善活動が行われている。

クラブが高齢者をサポート

 ローマでは、クラブが運営する非営利慈善事業基金「ローマ・ケアーズ」が、75歳以上の年間シート購入者に対して生活必需品の詰め合わせを配送した。段ボール箱の中には砂糖や塩、オリーブオイル、トマト缶、パスタ、コーヒー豆などの食糧品に加え、マスクにゴム手袋、ハンディサイズの消毒液が梱包されており、チームのタオルマフラーを添えて渡されたという。

 高齢化社会でのイタリアで、新型コロナウイルスによる死亡者の平均年齢は約79歳。外出制限が敷かれているこの国の中でも、お年寄りは特に外出をしない・させない対象となっている。しかし85歳以上の半数が一人暮らしと言われる中、家族も外から呼べない現在の状況では孤立しがちとなってしまう。

 100年以上の歴史を持つプロサッカーの伝統のなせるわざか、サッカーは高齢者にもファンが多く、その層のフォローに力を入れるクラブも存在する。冨安健洋の所属するボローニャでは、リッカルド・オルソリーニら選手4人とチームマネージャーのマルコ・ディ・バイオ氏が一人暮らしをしているサポーターのもとへ励ましの電話をかけた。

 一方、ボローニャから近いSPALでは、高齢者と障がい者、そして貧困により社会から孤立しがちな人々のためにサポーターが立ち上がった。ゴール裏を取り仕切る「クルバ・オベスト」は「募金活動ならすでに多くの人々が動いているが、それよりも社会的な弱者となっている方々のために活動をした方がいいのではないか」と発案。

 そして、本拠地フェッラーラの街で配送ボランティアに踏み切った。市役所の生活相談課にかかってきた電話の依頼事項に基づき、食料品や医薬品の買い出しなどを代わりに行うというものだ。

サポーターが野外病院設立に協力

 また、アタランタの本拠地で、ウイルス感染者が非常に多かったベルガモでは、15人のサポーターが野外病院の設営に協力した。ベルガモ周辺は北部ロンバルディア州の中でも感染が著しく拡大してしまった地域の1つで、病院の処理能力が限界を超えていた。

 3月24日、ゴール裏を統括する「クルバ・ノルド」は設営にあたる慈善団体の依頼を受け「今日(24日)の17時から、10 人から15人の人間を必要としている。条件はハケや塗装用ローラー、塗装用スプレーガン、シリコン、はしごを装備していること」と告知を出した。その結果100を超える問い合わせがあり、必要はすぐに満たされたという。

 死者が1万人を突破してしまったイタリアだが、感染拡大のペースは7日間に渡って緩まってきている。

 ロンバルディア州のアッティリオ・フォンターナ知事は3月29日「恐らく今、感染拡大の頂点に来ているか、頂点を過ぎたかもしれない」と語った。社会が元の姿に戻り、サッカーをまた楽しめる日を夢見ながら、それぞれが協力をして国難を乗り越えようとしている。


Photo: Getty Images

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神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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