現地発コラム
ここイングランドでも、コロナウィルスという見えない敵との戦いが本格化。「サッカーの母国」にして、サッカーは「二の次」の日常だ。
もちろん、庶民の意識からサッカーが消えることはない。リーグ日程の延期で試合がなくても、閉店要請でパブ集合が不可能でも、外出制限でレプリカシャツを着て草サッカーに興じることができなくも、「心のクラブ」への思いは尽きない。
先日、外出が許される犬の散歩中に、散歩仲間のクリスと出会した時のこと。“ソーシャル・ディスタンス”を心がけなければならないだけに、長い立ち話にはならない。互いの犬が一緒に遊びたがっても、飼い主同士は2mほど離れて軽く挨拶を交わす程度。「どう? 大丈夫?」と声をかけると、「ブラウン・エールで喉と淋しさを癒しているから(笑)」と返ってきた。彼は、ニューカッスル出身で、西ロンドンに住んでいても、出身地クラブの白黒縦縞ユニフォーム姿で散歩に出てくることがある。「ブラウン・エール」は、全国的に流通されているニューカッスルの地ビール。アラン・シアラーがエースでキャプテンだった当時、ユニフォームの胸にあった「楕円に青い星印」のラベルを覚えている日本のプレミアリーグファンもいることだろう。……
Profile
山中 忍
1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。
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2024.06.10