2019年5月から話し合いと調査を続けてきたオランダの6ビッグクラブ(アヤックス、フェイエノールト、PSV、AZ、ユトレヒト、フィテッセ)とベルギーの5ビッグクラブ(アンデルレヒト、クルブ・ブルッヘ、スタンダール・リエージュ、ヘンク、ヘント)は、コンサルティング業務に定評のある会計事務所『デロイト』が提出した報告書にポジティブな感触をつかみ、さらなるビジネスプラン策定を依頼した。これまで何度も浮かんでは消えたオランダとベルギーの合同リーグ構想が新たな局面を迎えたと言えるだろう。
ビッグクラブはおおむね賛成派
2月12日発売の『フットボール・インターナショナル』誌は、ベルギーの『フットボール・スポルトマガジン』と共同で「ベネリーグ」に関するアンケートを各クラブに取った。その結果は賛成11(オランダ4、ベルギー7)、様子見10(オランダ7、ベルギー3)、反対13(オランダ7、ベルギー6)と、かなり拮抗したものになった。
将来の欧州カップ戦の再編成に対し、オランダとベルギーは危機感を抱いている。現行のフォーマットでは国内リーグの成績に応じてCLとEL出場権が割り当てられているが、1部リーグ(CL)、2部リーグ(EL)、3部リーグ(カンファレンスリーグ)の昇降格制に改変されることが確実視されている。そうなるとますますビッグクラブやビッグリーグに冨が集中し、中堅リーグとの差は開くばかりとなる。そこでオランダ(人口1700万人)とベルギー(同1100万人)は、合計2800万人規模の市場を作ろうとしている。彼らが目指すのは「欧州6番目のリーグ」だ。
水面下(両国メディアは「秘密裏に」と表現している)で話し合いを進めている上記ビッグクラブのうち、アヤックス、ユトレヒトとベルギーの5大クラブはアンケートに対して「賛成」と答え、フェイエノールト、PSV、AZ、フィテッセの4クラブは「様子見」と、反対はゼロだった。
しかし、その他の中小23クラブで「賛成」と答えたのはデンハーグとズウォレだけで、13ものクラブが「反対」と答えた。ベネリーグ構想は欧州ビッグリーグ、ビッグクラブとの格差が広がらないようにするためのものだが、実際にリーグがスタートすると、オランダ、ベルギー国内のクラブ間格差が大きくなってしまうのは避けられない。
中小クラブは大半が反対
オランダ北部のフローニンゲン、ヘーレンフェーン、エメン、ヘラクレス、ベルギー南部のシャルルロワ、コルトライク、ムスクロン、ベルギー海岸部(オランダとの国境は近いが移動は大変)のセルクル・ブルッヘ、オーステンデといった中小クラブがこぞって反対しているのも目立つ。チームにとってもサポーターにとっても、移動の労力に見合う魅力的なカードを戦えるわけではない。
ベルギーの国境に接し、移動の便が良いフォルトゥナ・シッタルトも反対派だ。トルコ人オーナーのイシタン・ギュンは「今回の話し合いは(オランダでは)6クラブだけで話し合われていて、情報も公開されてない。サポーターをないがしろにして話し合いを進めているのはリスペクトに欠ける。また、これまで割り当てられていたオランダとベルギーに対する欧州カップ戦出場チーム数が減らされるかもしれない。国内チーム格差も広がってしまうだろう」と反対意見を述べた。
欧州内では他にも合同リーグ構想を持っている国があるが、果たしてオランダとベルギーがどのような判断を下すのか注目されている。
Photo: Getty Images
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。