日本代表DF冨安健洋が所属するボローニャは2月12日、スタジアム改築プロジェクト専門の内部会社を設立したことを発表した。
同クラブは本拠地レナート・ダッラーラの改築に向けて動いており、計画書は既に2019年1月にボローニャ市に提出され、仮承認されている。新たに開発地域を増やしたくないという市の意向を汲み、クラブは1927年に設立されたスタジアムを改築する意思を固めていたのだ。
2021年から3がかりの計画
「マラトーナの塔」を始めとした新築当時からの伝統的な意匠を残しながら、集客スペースを大幅に改善させる。観客数は現在の3万1000人から2万7000人まで縮小させるが、現状の陸上トラックを取り払い、スタンドをピッチに近づける模様だ。また、商業用のスペースも拡大されて様々なサービスが可能となり、収益を出せる近代型スタジアムとして生まれ変わる予定だ。
問題は改築期間。工事計画ならびに手続きのすべてが承認されてスタートを切るのが早くて2021年夏。そこから3年計画でスタンド全周を改築していく予定とされている。ウディネーゼのダチア・アレーナ、アタランタのジェウィス・スタジアムと同様の手順だが、最初の1年間は改築工事と試合開催の並行は難しい模様だ。そこでボローニャは他のスタジアムを間借りしてホームゲームを開催する計画となっている。
クラウディオ・フェヌッチCEOは内部会社設立発表と同日の2月12日、スタジアム間借りの交渉のための会談に向かったが、向かった先は80kmほど離れたラベンナ。ミケーレ・デ・パスカーリ市長ら市の当局者と、市内にあるブルーノ・ベネッリを借りられるかどうかを話し合った。
友好クラブに間借りを依頼
同スタジアムは現在、3部を戦うラベンナFCのホームスタジアムとなっている。『コリエレ・デッロ・スポルト』などの報道によると、市もクラブも前向きな姿勢を示しているという。ただ、同紙は「ネックはラベンナのスタジアムがセリエAの規格に適合しておらず、観客数増加のためにスタンド増設などの施設工事が必要となること。そして、その施設工事にも800万から1000万ユーロの改修費が必要になる」と伝えている。
近場にはSPALの本拠地であるフェッラーラのパオロ・マッツァ、モデナにあるアルベルト・ブラーリアなど、セリエA開催に適合したスタジアムが複数存在する。わざわざラベンナでやらなくても、と思うが、『コリエレ』紙によると「実質上、そこしか選択肢がない状態」だという。
それぞれのクラブとのサポーターはライバル関係が強く、治安上の理由から借り受けられない、というのだ。一方でラベンナとボローニャのサポーター同士は友好関係を結んでおり、その点の障害は少ない。『コリエレ』紙はジョー・サプート会長がラベンナを買収か資本参入し、傘下クラブとして運営に乗り出す可能性もあると報じている。
Photo: Getty Images
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神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。