1月12日に行われたセリエA第19節ローマvsユベントス戦で、将来を嘱望される若手選手2人が相次いで靭帯断裂の重傷を負った。
ピッチ状態、過密日程との因果関係は?
まずはユーベのDFメリフ・デミラル。FKの際に前線に上がって相手選手と競り合ったのち、着地の際に左膝を痛めて途中交代。
検査の結果、左膝の前十字靭帯断裂および半月板の損傷が判明したため、1月14日にオーストリアのインスブルックに赴き、スポーツ外傷の権威として知られるクリスティアン・フィンク医師の執刀のもと手術を施された。クラブは6カ月から7カ月間の戦線離脱を発表した。
すると今度は、同じ試合中にローマのMFニコロ・ザニオーロが負傷。ドリブルでの中央突破を図ったところ相手ゴール前で倒され、その際に右膝を痛めた。検査の結果、右膝の前十字靭帯断裂並びに半月板の損傷が判明した。
ザニオーロの場合は膝関節の手術に実績のあるパオロ・マリアーニ教授がローマで再建手術を行い、手術は無事に成功。同教授は地元メディアに対して「医学的には3カ月で完癒する。そこから先、アスリートとしてコンディションを戻せるかどうかはザニオーロ次第だ」と語った。
このようなスポーツ外傷が立て続けに発生すると、当然ながら環境の不備がやり玉に挙げられる。試合後の記者会見でもスタディオ・オリンピコのグラウンドが問題視されたが、ユベントスのマウリツィオ・サッリ監督は「状態は年々良くなってきており、特に今回は今まで以上に良いと感じた」と因果関係を否定している。
もっとも、この日はラツィオvsナポリ戦の1日後という無理のある日程での開催であり、ローマFWディエゴ・ペロッティは試合後に地元記者に残した談話の中で「結構グラウンドに穴があった」と指摘している。「そもそも試合そのものがあまりにも多い」という批判も、各方面からなされていた。
故障の発生件数は最小だが……
そんな中、1月17日の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は興味深いデータを紹介している。今シーズン、筋肉系の故障を除いたスポーツ外傷による故障者の数では、セリエAは欧州5大リーグで実は最小の数字だったというのだ。ここまでの発生件数は37件で、故障離脱した選手の離脱期間の合計時間は、月に換算すると110カ月になるという。
一方、過密日程がたびたび批判の対象になるプレミアリーグは発生件数が82とダントツ。以下リーガ・エスパニョーラ(60)、ブンデスリーガ(47)、リーグ・アン(46)と続く。「ヨーロッパ全体の傾向で見れば、半月板や前十字靭帯の断裂や損傷、並びに膝や足首の捻挫などはコンスタントに多発している。試合数が多すぎることは、やはりダメージにつながる」と報じていた。
ザニオーロに関しては、半年後のUEFAユーロ2020を控えて「大会に間に合うのかどうか」という報道やネット上での反応が続いている。イタリア代表の医療チーム主任であるアンドレア・フェレッティ医師は『メッサッジェーロ』紙のインタビューに応え、「イタリアはこの手の故障に対する手術ではトップクラスともいえるノウハウがあるが、再建手術の治癒状況は患者によって違う。とにかくザニオーロについては、100%の状態に回復するための時間をしっかりと取って欲しいと思っている」と語っている。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。