文 神尾光臣
「チケットが高いのでアウェイ戦への遠征をボイコットしよう」
1月10日、そんな声明がパルマのサポーターズクラブから出された。やり玉に挙げられたのは、1月19日に行われるセリエA第20節のユベントスvsパルマ戦だ。
庶民離れした価格設定に猛反発
パルマのサポーターズグループ『クルセイダーズ』は声明を発表し、「ユベントスvsパルマ戦のアウェイサポーター席のチケットの価格は43ユーロ。モラルを欠いた値段で、これなら我われは寄付することを選ぶ」と、ユベントスのチケット価格設定を批判した。
その中で彼らは、アタランタとパルマが相互協定を結んで「アウェイサポーター席のチケットを16ユーロに設定した」ことを引き合いに出しつつ、ユベントスが設定した価格について次のように非難した。
「あまりにも高過ぎで、庶民向けの席でありながら手が届かないものとなった。子供をスタジアムに連れて行きたい親にとっても、家族連れにとっても、女性のパートナーを連れて行きたい人にとっても、またウルトラスにとっても、そしてチームを愛する者、日々の生活では見出せなくなった価値がスタジアムで見つかると信じて足を運ぶ者すべてにとってモラルを欠く値段である」
「我われはキャッシュカードではない」
パルマのサポーターズクラブがチケット高騰を理由にアウェイ戦遠征を拒否したのは、実は今シーズン初めてのことではない。2019年12月14日に行われた第16節のナポリ戦でも、スタジアム改修後に40ユーロとアウェイサポーター席のチケットが昨シーズン比で倍近くの値上げとなったことに反発。「サッカーはすべての人のためのものであるべきなのに、今はエリート層の客寄せのために普通のファンが損害を食らっている。我われはもうサッカークラブのキャッシュカードとなるわけにはいかない」とボイコットをした経緯がある。
そして、今回のユベントス戦前でも同様の動きだ。『クルセイダーズ』はサポーターにアリアンツ・スタジアムへの遠征をボイコットするよう呼びかけるとともに、1月14日のレッチェとのホームゲームでは、募金活動を行ってアウェイ席に使う予定だった金を集め、小児がん診療施設に寄付をする旨を発表した。
別のサポーターズグループは、ミラノにあるレガ・セリエAのオフィス前に横断幕を掲げ「43ユーロはモラルを欠く。庶民的な値段を望む」と抗議活動を行った。確かに近年、セリエAのスタジアムチケット価格は上昇傾向にあると指摘されており、『クルセイダーズ』も「フランスのように上限が設定されることを望む」と提言を行っている。
もっとも、この抗議行動についてSNS上では異論も出ており、「パルマvsユベントス戦のアウェイ席チケットは45ユーロだったのに、あいつらは43ユーロで文句を言ってやがる」「マンホールのような試合を見せられるのに50ユーロを払わなければいけないユーベのサポーターの立場も理解してほしい」などと、ユーベファンを中心に疑問も呈されている。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。