10月半ばからPSVが不振の谷に落ち込み、今シーズンのエールディビジはアヤックスが優勝に向かって独走するかと思われた。しかし、U-21オランダ代表に5人もの選手を送り込むタレント集団AZが大健闘を見せ、首位アヤックスと勝ち点3差で2位につけている。この結果、オランダの権威ある専門誌『フットボール・インターナショナル』が選んだ前半戦のベストイレブンは、アヤックスとAZの選手たちが8ポジションを占めることとなった。
各メディアで高評価のブリント
同誌のベストイレブンは以下の顔触れとなった。
GK ベーレンロイター(ウィレムⅡ)
DF スベンソン(AZ)、フェルトマン、ブリント(ともにアヤックス)、ワインダル(AZ)
MF ファン・デ・ベーク(アヤックス)、コープマイナース(AZ)、イハターレン(PSV)
FW ジエク(アヤックス)、ベルフワイン(PSV)、プロメス(アヤックス)
惜しかったのは板倉滉(フローニンゲン)だ。フェルトマンの平均採点6.38に対し、板倉は6.28。僅差で次点になった。
各メディアの採点ランキングも見てみよう。
『フットボール・インターナショナル』(専門誌)
1位 イハターレン(PSV)
2位 ブリント(アヤックス)
3位 プロメス(アヤックス)
4位 ベルフワイン(PSV)
5位 ファン・デ・ベーク(アヤックス)
『アルヘメーン・ダッハブラット』(全国紙)
1位 ブリント(アヤックス)
2位 ドロメル(トゥエンテ)
3位 コープマイナース(AZ)
4位 ジエク(アヤックス)
5位 ステングス(AZ)
『デ・テレフラーフ』(全国紙)
1位 ステングス(AZ)
2位 ジエク(アヤックス)
3位 ブリント(アヤックス
4位 コープマイナース(AZ)
5位 スメーツ(スパルタ)
際立つのはアヤックスのブリントが各メディアでトップ3入りを果たしていることだ。主に左CBとして先発することの多いブリントだが、試合中に左SBやMFの位置にポジションを移し、チームを機能させてしまう。CBとしては高さ不足、SBとしてはスピード不足など欠点はあるが、それを補う戦術眼の高さと多機能性という長所がある。ボール奪取回数162回は、ファイク(MF/ヘーレンフェーン)と並ぶ首位タイだ。
評価が分かれるイハターレン
一方、PSVのイハターレンはメディアによって極端に評価が分かれた。『フットボール・インターナショナル』で1位になったが、『アルヘメーン・ダッハブラット』では9位、『デ・テレフラーフ』ではなんとベスト30にも入らなかった。イハターレンは試合を決することができる抜群の『個』を持つ。『フットボール・インターナショナル』はそこを高く評価したのだろう。ただ、良いところだけを集めて映像を作ればイハターレンは規格外の存在だが、90分間のプレー関与という点では物足りない。このようなプレーヤーは「モメント・フットボーラー」と称され、低く評価される。『デ・テレフラーフ』はそこをマイナス面と見たのだろう。
『デ・テレフラーフ』で1位を獲ったステングスは『アルヘメーン・ダッハブラット』で5位、『フットボール・インターナショナル』では10位だった。右サイドのポジションから「10番」のように振る舞うアタッカーで、エースストライカーのボアドゥへのスルーパスはまさにホットライン。躍進AZの顔的な存在である。
だが、今シーズンのAZを語る上ではいぶし銀のプレーを見せるコープマイナースも避けては通れない。彼は『アルヘメーン・ダッハブラット』で3位、『デ・テレフラーフ』で4位、『フットボール・インターナショナル』で7位と非常に評価が高かった。U-21オランダ代表のキャプテンを務めるコープマイナースは左利きのコントロールMFだが、CBとしての経験も豊富で、チームに戦術の幅をもたらすことのできる選手だ。
ここまで8ゴール13アシストと最も多くのゴールに絡んでいるタディッチ(アヤックス)は、各メディアでベスト10から漏れた。今シーズンの彼を見ていると、本調子が出ていない印象を受ける。だが、やはり21ゴールに関与している事実は燦然と輝いており、採点では報われなくても、彼について言及した記事からはあふれるリスペクトが感じられる。
得点王ランキングトップは12ゴールのデサース(ヘラクレス)。以下、11ゴールのベルフハウス(フェイエノールト)、ボアドゥ(AZ)、リンセン(フィテッセ)、マーレン(PSV)が2位タイで続く。
ベルギー人のデサースは、欧州ではまだ無名の存在だが、オランダでは2016-17シーズンに22ゴールを記録し、NACからサブトップのユトレヒトに移籍するなど実績のあるストライカーだ。最近はベルギーメディアに取り上げられる機会も増えており、母親がナイジェリア人ということもあってスーパーイーグルス(ナイジェリア代表)入りを目指していると言われている。
Photo: Getty Images
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。