「試合はすべてリアルタイム観戦」KOP声優・白井悠介がFCWCでリバプールに期待すること
クラブ世界一を決めるFIFAクラブワールドカップ(FCWC)の季節が今年もやってきた。開催地が昨年までのUAEから同じ中東カタールへ移った今大会、大本命はやはり6年連続で王者を輩出している欧州代表のリバプールだろう。そこで今回は、熱狂的なKOP(リバプールファンの愛称)である声優・白井悠介さんに愛してやまないリバプールへの想いとともに、このFCWCでリバプールに期待することを語ってもらった。
リバプールへの本気度
心をつかまれた“イスタンブールの奇跡”。試合はすべてリアルタイムで見ています
── 本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございます。最初に、白井さんは15年来のリバプールファンだとおうかがいしたのですが、なぜリバプールを好きになったのか、きっかけを教えてください。
「最初は『なんとなく』だったんです。もともとプレミアリーグが好きではあったんですけど、当時、僕の家にはリアルタイムで試合を見られる環境がなかったのでスポーツサイトで結果を追ったり、月曜日のニュース番組でダイジェストを見たりするくらいでした。ただその中で、当時だとレアル・マドリーとバルセロナや、プレミアだったら(マンチェスター・)ユナイテッドやアーセナルのような『強いチーム』にはあまり惹かれなくて。毎シーズンCL出場権を争っていたリバプールに自然と肩入れしていました。あとはやっぱり、(スティーブン・)ジェラードの存在は大きかったですね。ダイナミックなプレーやミドルシュートに目を引かれるものがあって、なんとなくリバプールいいなって思っていたんです」
── それが変わった、リバプールの虜になるきっかけは何だったのでしょう?
「一気に心をつかまれたのは、やっぱり2004-05シーズンのCLでの快進撃、そしてイスタンブールの奇跡と言われたあの決勝戦ですね。一気に引き込まれて、そこでリバプールのファンになりました。GS最終節オリンピアコス戦でのジェラードのミドルから始まり、決勝ラウンドでもユベントス、チェルシーとの激戦を制して決勝に進出して。
ちょうど僕が東京に出て来てすぐ、声優の専門学校に入った年だったんですけど、決勝の時はリアルタイムで見ていて、1人暮らしの狭い部屋で絶叫しちゃいましたね。前半で3点取られて相手はミラン。『もう無理なんじゃないか……』って思いがあったわけですけど、後半1点を取り返したのがジェラードのヘディングで、あの1点がチームにもサポーターにも火をつけたというか。その後の『お前ら、もっと沸けよ!』ってジェスチャーでもうグイっと持っていかれちゃって。そこからの勢いはもう本当に、今でも忘れられません」
── なるほど。ちなみに、ファンになる以前にサッカーをプレーされた経験はあったんでしょうか?
「実は僕、経験はあんまりないんです。むしろ中学は野球部で、小学生の頃に少年野球をやっていた流れでそのまま野球部に入っちゃいまして。ただ、小学生の頃からずっとサッカーは好きだったんです。普通に、友達と放課後ボールを蹴って遊ぶみたいなことはしていました。それなのになんであの時、サッカー部に入らなかったのかなっていうのは、僕の人生の中で一つの後悔です(笑)。うちは父親が野球が大好きで家でもずっと野球の試合を見ていましたし、外で草ソフトボールをやっていたので、その影響ですかね」
── そうなると、サッカーとの出会い、好きになったきっかけは何だったんでしょうか?
「ゲームだったかもしれません。タイトルは何だったっけな……うわー思い出せないなぁ。おそらくスーファミ(スーパーファミコン)のもので、対戦型のやつでした」
── その頃でスーファミだと、海外サッカーではなくJリーグのものをプレーしたことは私もありますが……。
「Jリーグだったかもしれません。確かそうです、Jリーグを見ていたので最初は。2歳年上の兄がいるんですがその兄が鹿島アントラーズファンで、僕が清水エスパルスファンで。そうそう、話しているうちに思い出してきました。そのあと、徐々に海外のサッカーをテレビなどで見るようになって、『海外のプレー、凄いな』って。ワールドカップなどは見ていたんですが、リーグ戦での連係とか凄くハイレベルで、見ていて楽しいなって感じるようになって、リーグ戦の状況や試合の速報を自分で調べるようになっていった感じですね」
── そうだったんですね。ちなみに、ゲームで対決する動画を拝見したんですが、やっぱりゲームでも使うのはいつもリバプールですか?
「実は僕、リーグ戦を戦ってチームを育てていくモードの時には、逆にリバプールは使わないんです、好きだからこそ。自分の手で汚したくない、リバプールはリバプールのままでいてほしいって思いがあって。普通に他の人と対戦する時は使うんですけどね」
―― こだわりがあるわけですね。再びリバプールファン歴のお話に戻りますが、サッカー史に残る名シーンの一つだった2004-05シーズンに一気に引き込まれた後は、もうリバプール一筋ですか?
「そうですね。ただその後、僕自身が声優という仕事に就くまでに時間がかかったんです。その間もチームや試合の成績だったり順位だったりというのは気にかけてチェックしていたんですけど、なかなか試合をしっかり見る余裕というのがなくて。なので、リアルタイムで試合を見られるようになったここ数年で、さらにサッカー愛、リバプール愛が強まってきている感じですね」
── では、その当時からも含めて、リバプールで一番好きな選手は誰になりますか?
「一番好きな選手は……いやー難しいですけど……(悩みに悩んで)やっぱりジェラードですね。当時、ガッツあふれるプレーを見ていて『凄い、強い人なんだな』ってずっと思って応援していたんですけど、彼のドキュメンタリー(『Make Us Dream』/2018年公開)でキャプテンとしての重圧やいろんな責任感などと闘いながら、苦しんでいたんだなって一面を見て、『そうだったんだなぁ』って感慨深いものがあったんです。選手がどう思って普段、プレーしているのかというのは、僕らにはなかなか見えないじゃないですか。ピッチ上での姿しか見られないので、そういう部分を垣間見た時に、『そりゃあそうだよな。あのジェラードとはいえ人間だもんな』っていう、不思議な感覚に陥りまして。それで余計好きになりましたし、そういうことを踏まえて過去の試合を見返してみると、また違った見方ができるんじゃないかと思いました。なので、やっぱりジェラードは外せないかな。
ちなみに、次にくるのは(サミ・)ヒーピアです。僕、けっこうシブい人が好きなんですけど、ヒーピアはまさにそれでいぶし銀というか。2004-05の時のプレーもずっと注目して見ていましたし、彼もキャプテンをやっていましたし。リバプールに限らず、キャプテンになるような存在って(僕の中で)大きいのかなって思いますね」
──思い返してみるとジェイミー・キャラガーやディルク・カイトなど、リバプールは戦える選手のイメージが強いですね。
「ハート、気持ちが前面に出るチームだなって思いますし、だからこそこれだけ応援したくなるのかな、リバプールサポーターって熱狂的なのかなって思いますね」
──ちなみに、今までの流れからするとまだなのかなって思うんですが、アンフィールドに行かれたことは……。
「まだなんです、行きたいんですよ! 声優という仕事柄、なかなかこう、まとまった休みというのが取れないというところもあって行けてなんですけど、いずれは絶対に見に行きたいなと思っています。いやー行きたいなぁ」
──そして今、リバプールの試合の日にはTwitterで試合経過を実況なさっていますが、いつもリアルタイムでご覧になっているんですか?
「もちろん! 試合はすべてリアルタイムで見ています。たとえ4時キックオフの試合で次の日10時から仕事があったとしても起きて見ますよ(笑)。今もう、僕の仕事のモチベーションがリバプールなんです。『この仕事を頑張れば、週末リバプールの試合が待ってる』って思いますし、CLがある週は『2回も試合が見られるなんて、こんな幸せなことはないな』っていう感じなんです。
それと、(実況をするのは)僕のTwitter をフォローしてくださっている方に、少しでもサッカーに興味を持ってもらえたらなという気持ちもあります。実際、応援してくださる方は女性が多いんですけれども、中には興味を持ってくださって、リバプールの試合を見てくれている方もいるんです。今は気軽にサッカーを見られる環境があるので、それが凄く大きいのかなと思っています」
FCWCは「悲願」
異例のチーム編成もありますし、そんなに簡単な大会にはならない
── ではここからは、FCWCについておうかがいします。リバプールは先ほどお話に出た“イスタンブールの奇跡”後の2005年大会に出場しています。当時は日本開催でしたが、見に行かれましたか?
「それが行けなかったんです。当時は専門学校に通っていた頃で、チケットを取ることができなくて。もちろんテレビでは見たんですけど…… 優勝できていないんですよね、サンパウロに負けてしまって(0-1)」
── リバプールにとっては欧州王者対南米王者の対戦だったインターコンチネンタルカップ時代も含めて、いまだに手にできていないタイトルになります。
「だからこそ今回は、もちろん優勝してほしいと思っています。ただ、イングランドはカップ戦が2つあることもあって12月、ただでさえ過密日程で相当厳しくなりますがカラバオカップが重なって、異例の2チーム編成で臨むことになりましたからね。とんでもないことだなと。そういった事情もあるので、そんなに簡単な大会にはならないんじゃないかと思っています」
── 今季のリバプールはリーグ無敗を維持。最高のスタートを切りましたがどのようにご覧になられていますか?
「いや~もう本当に、今季優勝できたら30年ぶりですよ。現状の強さを見たら、本当に30年間優勝してないのかと思うくらいですし、ちょっと期待しちゃいますよね。とはいえ、まだ前半戦も終わっていませんので何とも言えないところはありますけど。
今季は本当に粘り強く、勝負強く戦えているなと思います。リーグ戦で唯一引き分けたユナイテッド戦(第9節/1-1)も追いついてのものでしたし、終盤に追いついたり逆転したりする試合が多いので応援しがいがありますよね。ハラハラドキドキさせるんですけど、そこがまたリバプールだよなって思わせるところもありますし。ここ数シーズンは負けないけど勝ち切れずドローが多かったんですが、今季はそうした試合を勝ち切る強さが目に見えて出てきていますよね。
目立った補強はなかったんですが、逆にそれだけ成熟していて、それが結果として出ているんじゃないかと思います。そして、ああした劇的な試合を見せられるたびに、リバプールのことがさらに好きになっていきます。3トップに注目が行きがちだと思うんですが、個人的には中盤が本当に充実しているな、誰が出ても十分なパフォーマンスができる選手層がそろっているなと思います。チームの核となる部分なので、ここが機能するというのは大きいなと。中でも(ジョルジニオ・)ワイナルドゥムが好きで、今日着ているこのユニフォームは彼のものなんです。
あとはやっぱり両SB。SBからSBへのサイドチェンジをあんなふうに何本もなんて、なかなかないですよね。(アンドリュー・)ロバートソンも(トレント・アレクサンダー・)アーノルドも凄い球蹴るなって。SBが今、どれだけ重要かって他のリーグなどを見ていてもわかるなと思うんですが、そんな中で彼らは本当に頼もしいなと思いますし、見ていて飽きない、目が離せませんよね」
── ワイナルドゥムはどのあたりが好きなんでしょうか?
「まず、派手さはないかもしれないですけど献身的なところ。昨季のCL準決勝バルセロナ戦の第1レグでは、ケガで出られないフィルミーノの代わりにトップをやりましたし、さらにそのCL準決勝の第2レグでは途中出場から2ゴールを決めて。普段、リバプールでは点を決めるタイプの選手ではなくてボールを繋いだり運んだり奪ったりする役割なんですけど、オランダ代表ではけっこうゴールを決めているんですよね。リバプールではリバプールの、代表では代表の立ち位置を理解して、落とし込んでプレーしているんだなっていうのを感じます。あとは、彼のボールの受け方がすごく好きで。後ろに目がついてるんじゃないかというくらい、いい位置にボールを置いたり反転したりするんです。そういうところに惹かれます」
── 先ほどプレー経験があまりないと話されていましたが、それでボールの受け方に目が行くというのはすごいですね。
「さっきお話ししたのは中学までだったんですが、実は高校時代に3カ月だけサッカー部に入ったことがあって。でもそれが2年生の時で、急に途中から入ったので全然馴染めなくてすぐ辞めちゃったんです(笑)。ただ、もともと運動神経はいい方なので体育の授業の時には率先してプレーしたり、クラスにサッカー部がいなかったので体育祭でサッカーの種目がある時には、僕がポジションを考えたり指示したりしていたんです。なので素人なりにではありますが、サッカーをプレーする難しさというのはわかっているつもりです。
あとは最近、月に2回できればいいなくらいの頻度ではあるんですが声優仲間とフットサルをやっていて、そこでボールの扱いが難しいなと実感しているんですが、このワイナルドゥムはもう本当に、綺麗に球をさばくんですよね。彼のそういうプレーにはもう、毎回注目しています。
加えて、ここぞというところで点が取れるのも彼の魅力です。今季のシェフィールド(・ユナイテッド)戦もですし、先ほどお話しした昨季のCLのバルセロナ戦もそうでしたし。あれはもう、めちゃくちゃ歓喜しましたね。もう、次の日の仕事にユニフォームを着て行って1日ずっと過ごしましたから(笑)。あの日と、CL優勝した日は1日ユニフォームで過ごしました。あんな劇的な試合を、FCWCでも見られるといいなって思います」
── リバプールが好きというのが大前提にはなると思うのですが、サッカースタイル的な好みというのはありますか?
「ひと言で表すと『攻める』でしょうか。リバプールの場合はゲーゲンプレスで、前からどんどんボールを取りに行ってという攻めの姿勢が見ていてわかります。そういうチームは応援したくなっちゃうっていうのは、僕の好みとしてはありますね」
── 今のスタイル、そしてチームを確立したユルゲン・クロップ監督についてはどんな思いで見ていますか?
「彼って感情を露にするじゃないですか、そういうのが選手だけじゃなくてサポーターにも凄く伝わる、連動するのかなって思います。感情むき出しで怒鳴ったりする姿に見ているこちらも感化されるというか。ゴールが決まった時のリアクションを、僕は凄く楽しみにしています。
先ほどお話ししたサッカースタイルを浸透させて、チームを成熟させたのも含めて、本当にクロップが来てくれて良かったと思いますし、できるだけ長く指揮してほしいなというのがサポーターとしての願いです」
── FCWCならではの見どころ、注目したい点はありますか?
「ワイナルドゥムがインタビューで、『欧州以外のチームと対戦するのはすごく楽しみだ』って話していたんです。今まで戦ったことのないチームと戦うことで得られるものもあると思いますし。それは見る側も一緒で、普段とは違うサッカーを体験できる、見られるというのが選手にとってもファンにとっても醍醐味じゃないでしょうか。
最大のライバルはフラメンゴかなと思います。顔ぶれを見てもジエゴやフィリペ・ルイス、ラフィーニャなど、いい選手がそろっていますし」
── 最近はそういう、懐かしい選手がいろんなところで活躍していますよね。
「そうですよね。“レッズ対決”が実現しなかったのは残念ですが、浦和レッズを倒したアルヒラルにもジョビンコとゴミスがいたりして、以前欧州で活躍していた選手たちが見られるのはうれしいですよね」
── では最後にあらためて、今大会のリバプールに期待することを聞かせてください。
「過密日程が続きますのでケガにだけは気を付けつつ、このFCWCで14年前の雪辱を果たして、30年ぶりのリーグ制覇へ向けてさらに勢いをつけてほしいです。そして、普段はリバプールを見ていない人たちにもう勝ち切れないとは言わせない、こんなに強いんだというところを見せてほしいですし、見てもらいたいですね」
Yusuke SHIRAI
白井悠介
1986.1.18(33歳)
長野県出身。愛称は「しらいむ」。2011年に『未来日記』でテレビアニメ初出演を果たし、2016年の『美男高校地球防衛部LOVE!』で初めてメインキャラクターを担当。代表作は『アイドリッシュセブン』『アイドルマスター SideM』など。現在放送中の『Z/X Code reunion』にネフライト役で出演している。また、「ヒプノシスマイク」として第13回声優アワード歌唱賞を受賞した。
<大会・放送スケジュール>
詳しい放送スケジュール等はこちら
http://www.ntv.co.jp/fcwc/
Huluでも全試合の国際映像をリアルタイムで配信!!
https://news.hulu.jp/programguide-cwc2019/
Profile
久保 佑一郎
1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。