日本代表アタッカー南野拓実のリバプール行きが、着実に近づいているようだ。ザルツブルクのスポーツディレクターを務めるクリストフ・フロイントは、すでに交渉が進んでいることを認めている。「現在、我われがリバプールと交渉を進めていることは認める。リバプールのようなクラブが我われの選手に興味を持ってくれるのは栄誉なことだ」
移籍交渉がまとまる前の時期にここまで公にしてしまうことに、いささか不思議な感じがしなくもない。とはいえ、英国版のオンラインサイト『The Athletic』によれば、リバプールは南野をすでに3000万ユーロ(約36億円)の価値がある選手と評価しており、850万ユーロ(約10億2000万円)の違約金を支払うことに何ら抵抗はないという。双方にとって何も障壁がなければ交渉を隠す必要はない、というリバプール側の思惑も透けて見える。
「南野はピッチ内外で“賢い”選手」
同紙によれば、リバプールの他にもミランやボルシアMGも獲得競争に名乗りを挙げていたようだ。ボルシアMGには、昨シーズンまでザルツブルクで指揮を執っていたマルコ・ローゼがいる。そして、彼のアシスタントを務めるレネ・マリッチは、12月13日に自身のTwittter上でクリスマス企画の一環として受けたファンからの質問に答え、南野の名前を出している。
その質問とは「これまで指導してきたなかで最も“賢い”選手は誰?」というものだ。マリッチは、「現在、指導していない選手に限定する」と条件を付けたうえで、今シーズン、ホッフェンハイムに移籍したマリ代表MFディアディ・サマッセクと南野の名前を挙げた。
マリッチによれば、この2人は「ピッチ上でインテリジェンスに溢れる動きをするだけにとどまらず、ピッチ外でも自分の考えを意識的に言葉にして伝えることができる」という。また、ザルツブルクでともに働いた選手の中では、チーム戦術の領域で突出していたのはベテランのアンドレアス・ウルマーだという。そして、個人戦術の領域では、現在ボルフスブルクに所属するオーストリア代表のハビエル・シュラーガーがベストな選手だと評価している。
リバプールの前線では、マネやサラー、フィルミーノといったアタッカーが身体面やスピード、そして技術面で圧倒的な能力を駆使し、活躍を見せている。ピッチ内外で“賢い”選手として評価される南野は、ここに割って入ることができるだろうか。もし実現するならば、今後の日本人選手が目指す具体的な道筋を提示できるようになるかもしれない。
冬の移籍市場はまだ開いてすらいない。夢を見るには早過ぎるが、年末年始に胸踊らせる理由がさらに増えたことを喜びたい。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。