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CLやリーグ・アンの試合にも影響か? フランスで大規模ゼネスト発生中

2019.12.14

 フランス全土は、12月5日からゼネラルストライキに突入している。

 報道によれば、初日の5日に各地でデモに参加した人たちの総計はおよそ80万人。火炎瓶の煙がモウモウと立ち込める中、警備隊と暴徒が揉み合う「どこの紛争地帯なんだ?」と思わせる物騒な映像は、日本のニュースでも報じられていると思う。

大規模なゼネストで各機関が麻痺状態に

 エマニュエル・マクロン大統領の年金制度改革案に異を唱えるべく、フランス国鉄(SNCF)やパリの地下鉄を運営するパリ交通公団(RATP)がストライキを発表したところ、他の都市の交通機関や電力会社、警察、教員、病院、公務員など、日頃の不満が溜まりに溜まった労働組合も参加を表明。昨年冬から継続中のデモ「黄色いベスト運動」も加わって、大規模なゼネストに発展した。

 6割の教員がストに参加した小学校では多くの授業が休講になり、航空管制官もストに入ったため、空の便にも影響が出ている。

 ただでさえクリスマス前のこの時期は空き巣やスリが多発するのだが、警察官がストと知った悪い輩たちが「稼ぎ時だ!」とばかりに活発になるに違いにないと、大勢の人が警戒している。

 パリ市内の地下鉄も、自動運転の2路線以外はほぼ運休の状態だ。

今後は試合への影響が出る可能性も

 そんな中で行われた先週末のリーグ・アン第17節だが、特に大きな影響はなかった。キックオフ時間に遅刻するとリーグから莫大な罰金を課せられるとあって、各クラブとも入念に事前準備を進めたのが幸いした模様だ。たとえば12月6日の金曜日にリールで試合があったスタッド・ブレストワは、ゼネスト突入前の4日のうちに空路で移動し、現地で練習場を確保して試合直前の調整を行った。デモと重なるため延期の可能性があると報じられていた7日のモンペリエvsパリ・サンジェルマン戦も予定どおり開催され、中止になった対試合はなかった。

 ただ、今後も地下鉄が動かないようだと、パリでの試合は観客の足に影響が出そうだ。地方はもともと車や徒歩でスタジアムに行く人が多いが、パリの西端にあるパルク・デ・プランスへは、ほとんどの人が地下鉄を利用している。

 11日には同スタジアムでUEFAチャンピオンズリーグのグループステージ最終節ガラタサライ戦が行われたが、PSGはすでに首位での決勝トーナメント進出を決めていたためスタジアム観戦を回避したサポーターも多かったようで、実際スタンドには空席が目立った。

 両者は2001年に対戦した際、両軍のサポーター同士が衝突して試合が中断し、56名もの負傷者を出している。そのためパリ市もUEFAも警戒レベルを上げていたが、パリではこの試合前日の12月10日にふたたび大規模なデモが行われており、事前準備のための警備員の確保も悩みどころだった。

当面の“お茶の間観戦”は不可避か

 昨年冬に勃発した「黄色いベスト」運動でも、サッカー試合の開催にとって一番のネックになったのは警備問題だった。デモはたいてい土曜日に行われるため、試合日と重なると警備隊をそちらに回さなければならず、スタジアムの警備に人員を確保できないという理由で、やむなくサッカーの日程をずらさなければならなくなる。

 パリやマルセイユといった大都市は警官の数が多いので影響は出にくいが、昌子源が所属するトゥールーズやナントなど地方都市では、昨シーズンの後半戦は土曜日に予定されていたホームゲームの多くが日曜日に変更になった。

 政府は12月11日に年金制度改革案の詳細を明らかにしたが、労働組合側はその内容に満足せず、ストの拡大化、長期化は不可避となっている。つまり、公共交通機関のない日々がまだ当分続くことになる。

 試合後の深夜、氷点下の寒空の下、タクシーもつかまらずに帰宅難民になったら確実に体を壊す。パリのサポーターはしばらく“お茶の間観戦”で我慢することになりそうだ。


Photo: Getty Images

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パリ・サンジェルマンビジネス

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小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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