ブラジルを代表するクラブの1つであるフラメンゴが、今年、リオデジャネイロ州選手権、ブラジル全国選手権、南米最高峰を決めるコパ・リベルタドーレスの3冠を達成し、その快進撃に国民が熱狂し続けている。
社会現象のごとき盛り上がりぶり
フラメンゴはその歴史の中で、国内最大のサポーター数を誇り続けている。調査会社『ダッタ・フォーリャ』によると、国民の20%がフラメンゴサポーターだという。つまり、5人に1人がこのチームを応援していることになる。
そのため、盛り上がりも全国区。チームが全国選手権で連勝街道を走り続け、コパ・リベルタドーレスで35年ぶりに準決勝に到達した10月頃から、社会現象のようになっている。
例えば、赤と黒のチームカラーのユニフォームは、全国のスポーツ用品店、クラブやメーカーのオフィシャルショップなどで売り切れが続出。子供たちにカメラを向けると、フラメンゴのFWであるガビゴウやジェウソンのゴール後のお決まりのポーズをしてみせてくれる。フラメンゴの試合翌日は飛行機がサポーターであふれ、機内で応援ソングの合唱が始まることも多かった。
リベルタ制覇で全国が歓喜
フラメンゴはここ数年、タイトルに手が届きそうなところまで来ながら達成できずに終わっていた。今シーズンも、年始から指揮を執ったアベウ・ブラガ監督が辞任し、その後、2人の代行監督を経て、6月に現在のジョルジ・ジェズス監督が就任するなど、平坦な道のりではなかった。
しかし、クラブは両サイドバックのフィリペ・ルイスとラフィーニャ、ストライカーのガビゴウなど、大型補強を実現。ポルトガルからやって来た強烈な個性を持つ監督が、選手たちとぶつかり合いながらも細やかな指導を行い、そうした新戦力と既存の主力を見事に融合させた。
ペルーのリマで開催されたコパ・リベルタドーレス決勝の日は、まるでワールドカップのようだった。10台の巨大スクリーンを設置したマラカナンを始め、全国のスタジアムやイベントホール、広場、映画館などがパブリックビューイングの会場となり、テレビのあるバールにもサポーターが詰めかけた。1981年以来となる優勝の瞬間、テレビでは年越しの瞬間などでよく見るリレー方式の生中継で、全国の歓喜の様子を映し出していた。翌日の凱旋パレードは、あまりに人出が多かったため、予定されていた2.5Kmキロのコースを3時間かけて半分も進めず、やむなく中断となったほどだ。
クラブW杯制覇へ、熱狂は続く
2016年にヨーロッパから12年ぶりにブラジルに戻ってフラメンゴに移籍し、そのプレーと精神力によってピッチ内外で支柱となってきたジエゴに聞くと、今年の数々の達成についてこう語ってくれた。
「すべてのものにプロセスがあり、ここまでやってきたことが、ここぞという時に結果となって現れた。重要なのは、常にタイトルに近いところで戦い続けたことだ。そして一人ひとりが常にベストを尽くし、選手キャリアの中でもなかなか出会えないほど結束の固いチームになれた」
このチームがすごいのは、全国選手権で4節を残して優勝が決まった後も勝ち続けていることだ。さらに、勝ち点や得失点差など、過去の様々な大会記録を破り、自ら塗り替え続けている。
ジョルジ・ジェズスにはブラジル代表監督就任を望む声すら高まっている。クラブで好調な監督に対し、メディアがそうした話題を盛り上げるのは毎度のことだが、長年続く「ブラジル代表への外国人監督の是非」論争はどこへやら。
そんなフラメンゴが、間もなくクラブW杯出場のためカタールに向かう。最後に、ジエゴからのメッセージを伝えたい。
「僕らを応援してくれるみんな、ありがとう。そして、フラメンゴサポーターのみんな、クラブW杯優勝というもう1つの大きな夢の実現のために一緒に戦おう。ピッチの中の僕らが必要としているのは、みんなのサポートだ」
試合当日は再び、国じゅうの機能がストップするに違いない。
Photos: Kiyomi Fujiwara, Getty Images
Profile
藤原 清美
2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。