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10年前に発生したサッカー賭博スキャンダル。改めて禁止ルールをおさらいする

2019.11.18

 2009年11月19日、2人のクロアチア人が逮捕された。1990年代から2003年にかけて、ベルリンのアマチュアリーグでプレーしていたアンテとミランのサピナ兄弟だ。欧州内の9カ国で200を超える試合で勝敗の操作が行われたのだ。当時のUEFA規律委員だったペーター・リマッハーは「欧州のサッカー史上、最大の賭博スキャンダルだ」と話している。

欧州で1000万ユーロが動いた10年前の賭博

 ことの発端は、フィリピンのベッティング会社『SBOBET』が賭けの対象としたアジアや欧州の複数の試合で不自然なほどの“偶然”が重なり、欧州で1000万ユーロ(約12億円)のリターンが出たことだった。これを不審に思ったドイツ警察は、国内で一斉操作を開始。ドイツ国内のベルリンを始めとする各州でさらに15人が逮捕され、ドイツ国内でも約100万ユーロ(約1億2000万円)強の金銭が動いたことが発覚したのだ。調査は現在も行われており、全貌はまだ正確には把握されていない。

 このスキャンダルが関連したのは、ドイツ国内では少なくとも32試合と見られている。そのうちブンデスリーガ2部は4試合、3部は3試合。そして4部レギオナルリーガが18試合で、5試合が5部のオーバーリーガ、残りの2試合はU-19の試合で行われたことが分かっている。

 ここ数年、ベルリンの試合を歩いていると、至るところでベッティング用のカフェやバーが乱立されていることが嫌でも目に付く。ブンデスリーガの各クラブも公式にベッティングサプライヤーがスポンサーに付くようになり、欧州サッカー界はますます投機的になっている。バーで試合を見ていると、ベッティングを行ったレシートを手にブンデスリーガの同時中継を見ているグループもたびたび見かけるようになった。

再発防止に向けて管理体制を強化

 ここでは、プロ、アマチュアを問わずにドイツサッカー連盟によって禁止されているルールをおさらいしよう。実際にドイツでプレーするようになる読者もいるかもしれないので、ぜひ頭に入れていただきたい。

  • 自身がプレーするリーグやカップ戦、練習試合に賭けてはいけない。
  • 自身のクラブ内の他のチームが参加するリーグやカップ戦、練習試合に賭けてはいけない。

 1つ目はわかりやすいだろう。2つ目は、クラブ内に複数のチームがある場合の話だ。例えばヘルタ・ベルリンのトップチームの選手が、応援する気持ちでヘルタのU-23やU-19のチームに賭けるとルール違反になる。その逆も同様で、ヘルタの3軍に所属してアマチュアリーグやシニアリーグでプレーしている選手たちは、ブンデスリーガに賭けることはできないのだ。

 ドイツサッカー連盟やドイツサッカーリーグ機構の賭博取締を担当する外部顧問のカルステン・ティールは『ビルト』紙に「本来なら、1部から3部ないし4部までの試合を賭けの対象からすべて外すべきだ。これならわかりやすいだろう。シンプルに言ってしまうと『スポーツでギャンブルするな!』ということだ」と話している。

 ブンデスリーガの1部と2部の各クラブは、ドイツサッカーリーグ機構によるベッティングのルールの講習会が義務付けられている。それに加えて、育成カテゴリーの各選手の契約書にもこのルールを守ることが条項に加えられ、選手のキャリアを守ることに傾注している。

 さらに、2017年からは刑事罰の対象となったことで、インサイダー情報の流出も監視されるようになった。疑惑を持たれた選手、監督や審判たちは、警察による操作の手順を踏んで電話やチャットなどの情報通信を監視されるようになり、管理は厳しくなり続けている。


Photo: Getty Images

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鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。

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