コンディション不十分でも好プレー随所に
今季ブレシアに移籍したマリオ・バロテッリが、9月24日のセリエA第5節ユベントス戦で今季初出場を果たした。
養子に出された後はブレシアの郊外で育ち、その地元に戻って来たバロテッリ。「父さん(養父のこと)はオレがブレシアでプレーすることを夢見ていた。だから、母さんが移籍をすごく喜んでくれた」。入団会見でこう語っていたが、デビューはお預けになっていた。5月24日に行われた昨季のリーグ1最終節マルセイユ対モンペリエでの悪質なファウルにより、4試合の出場停止を喰らっていたからだ。
それが解け、ホームのユベントス戦という大舞台で先発出場。実戦から遠ざかっていたため、運動量は少なくプレー強度も低い状態だった。だが懸命に動き、ボールを触れば印象的なプレーを披露。正確なサイドチェンジで局面を変え、長めの距離のシュートを枠へと飛ばす。1-2でリードされたアディショナルタイムにもチャンスに顔を出すなど、存在感は見せていた。
「マリオと一緒にコンビが組めるのは栄誉だよね」。現在開幕から5試合4得点をマークしているFWアルフレード・ドンナルンマは地元メディアに対し「これからあらゆる面でもっと良くなっていくと思うし、彼と一緒ならもっといろいろできると思う」と前向きに語った。マッシモ・チェッリーノ会長も、「マリオは正しいモチベーションを持って来てくれた。特別な選手だし、我われに力を貸してくれるだろう」と喜んだ。
「喫煙騒動」は濡れ衣
もっとも、良くも悪くもおとなしくは済まないのがこの男。試合前の映像から「ロッカールームでタバコを吸っているのではないか」とネットで話題になってしまったのだ。イタリアでこの試合を担当した『DAZN』の中継で試合前のロッカールームの様子が映し出されたのだが(現在イタリア国内でのセリエAの中継は『スカイ・イタリア』と『DAZN』の2局が分け合っている)、その際にマリオが小さな棒状のものを口に当てており、ちょっとした騒ぎになっていた。
これに対して『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の電子版は25日「バロテッリの関係者による情報」として「タバコを吸ったわけでもなければ、ミネラル剤を摂取していたわけでもない。亡くなった父親を思い、十字架のキリスト像にキスをしていた。まったく妥当なジェスチャー」と報じた。
1日に15本のタバコを喫煙するヘビースモーカーでありながらセリエAの得点王になったダリオ・ウブネルをはじめ、喫煙者のカルチャトーレは別にいないわけではない。そのウブネルは、かつてブレシアでもプレーした。「彼にとっては挽回の1年。きちんと考えて行動し、監督やチームのために働けば、良いシーズンにするだけの力が彼にはある」と語った大先輩の言葉を、バロテッリは現実のものとすることができるか。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。