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ネイマールがピッチに帰ってきた。いきなり決勝弾で「神様のご加護だ」

2019.09.17

ネイマール、復帰戦でいきなりバイシクル決勝弾

 ネイマールが、リーグ・アン第5節の対ストラスブール戦でパリ・サンジェルマンに帰ってきた。

 このユニフォームでピッチに立つのは、昨シーズン、怪我から復帰したあとの第36節(5月11日)以来だ。

 残念ながら別の取材でこの試合をパルク・デ・プランスで観ることはできなかったのだが、案の定、ウルトラスが彼について批判的な横断幕を掲げたり、彼がボールを持つたびにブーイングを浴びせたらしい。

 しかし、しっかり守ったストラスブール(川島永嗣も所属しているストラスブールは本当に質の高い中堅チームで、好セーブを連発したGKマッツ・セルスはベルギー代表の第3GKでもある)相手になかなかゴールをこじ開けることができなかったPSGを、アディショナルタイムの劇的なバイシクルシュートでゴールレスドローから救ったのは、ネイマールだった。

「ゴールを決めることができてとてもうれしい。今日はちょっと特殊な試合だったからね。ホームでブーイングを浴びるとは思っていなかったけど、光明が差した。神様のご加護だ。サポーターのみんなも喜ばずにはいられなかったはずだよ」

 試合後にネイマールは、そうコメントしていたが、ここで「神様」が出てくるところがブラジル人らしい。

 サポーターのネガティブな反応については、こう話した。

「いろいろあったから、サポーターが穏やかでいられないのは理解できる。でもここからは、僕はPSGの選手としてプレーする。僕へのブーイングはかまわない。けれどこんな状況はチームの仲間にとっても酷だ。サポーターのみんなには、どうかチームを応援してほしい。サポーターがチームを支えてくれたとき、それが大きな力になるのだから」

 ブーイングを浴びることは悲しいが、「問題ない」と気丈なところを見せていた。

ネイマールがすべきことはただひとつ

 派手な批判ネタは広まりやすいが、実際には、多くのPSGサポーターは、ネイマールが選手としては傑出していて、彼がいることはPSGにとってプラスになると思っているし、フランスのサッカーファンは、彼のプレーをこのリーグで見られることを喜んでいる。

 それに、これだけ高いレベルでやっている選手というのは、いろいろな境遇を乗り越えてきているから、そうは動じないものだ。

 中国で行われたバスケットボールのW杯では、ドーピング疑惑のあった中国人スイマー孫楊を皮肉るツイートしたオーストラリア代表のセンター、アンドリュー・ボーガットが、あらゆる会場でボールに触れるたびに会場の中国人ファンから痛烈なブーイングを浴びていたが、「アンドリューがここまで中国で人気者だったとは!」「雰囲気が盛り上がっていい」と、本人もチームメイトも一向に気にしていなかった。このように、ブーイングされるたびに「よおし、見てやがれ!」と逆に奮起する負けん気の強い選手も多い。

 もっとも、「ドーピング疑惑を許さない」という確固とした信念に基づく行動だったボーガットと、チームを去りたがったり、バルセロナがPSGをコテンパンにやっつけた試合が「これまで一番興奮した試合」と発言するなど、サポーターのプライドを傷つける行動をとってしまったネイマールとでは、後ろめたさがあるかないかで批判への耐性も違ってきそうではあるが……。

 しかしこの試合でもチームを救ったように、PSGの勝利に貢献していれば、やがて野次は賞賛に変わる。

 だからネイマールがやることはただひとつ。ひたすら懸命にサッカーに打ち込み、PSGのトロフィー獲得に貢献することだ。

 それにしても、できるだけ無駄にエネルギーを使わずに暮らしたいお年頃の筆者は、間髪入れずに「ブー」と叫べる観衆の気力の方に、いつも感心してしまうのだった……。

Photo: Getty Images

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ネイマールパリ・サンジェルマン

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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