ラグビーの祭典がいよいよ日本で。 サッカーと“二刀流”だった選手も
同じフットボール、二刀流も少なくない
今月20日に日本でラグビーのワールドカップが幕を開ける。同じ“フットボール競技”の一種ということで、今回のW杯を楽しみにしているサッカーファンも少なからずいるのではないか。
いわゆる“兄弟スポーツ”なのだから、若い頃にはサッカーとラグビーを両天秤にかけていた選手も実は少なくない。有名なところでは、今夏アーセナルからユベントスに移籍したウェールズ代表MFアーロン・ラムジーがそうである。
彼の場合、学生時代にサッカー、ラグビー、陸上で好成績を残しており、ラグビーではフライハーフ(スタンドオフ)として活躍。「ラグビーを選んでいても成功したはず」と過去に『Daily Mail』紙のインタビューで語ったことがある。
このように、ラグビーが国技のウェールズでは“二刀流”は少なくないのだ。レアル・マドリーのギャレス・ベイルも、学生時代にはラグビーを含む複数のスポーツを試したという。だが彼の場合はラグビーの元ウェールズ代表サム・ウォーバートンと同級生だったせいか、「僕は細かったのでラグビーは違うなと思った……」と、すぐにサッカーに専念したそうだ。
反対に、サッカーからラグビーに転向する選手も多い。ラグビーができる環境が少ない日本ではよくある話だ。前回大会で一躍時の人となった五郎丸歩もそうだし、今大会の活躍が期待されるスタンドオフの田村優もそうだという。海外にもそういう選手はおり、「チーター」の愛称で知られる、フランス代表のセンター、ウェスレイ・フォファナ(31歳)も元サッカー小僧だったという。
「子供の頃はいつもサッカーをしていた」
自身2度目のW杯に臨むフォファナはパリ生まれで、父がサッカーの指導者だったため、パリにある「CFFパリ」というジュニアクラブでサッカーに打ち込んでいた。「子供の頃はいつもサッカーをしていた」と、フォファナは『FIFA.com』のインタビューで明かしたことがある。この世代の子供たちは、誰しもが1998年ワールドカップ(これはサッカー)のフランス代表の初優勝に感化されており、フォファナもプロサッカー選手になるのが夢だったという。
CFFパリでは、後にフランス代表サッカー選手となるジェレミー・メネスとも一緒にプレーしたという。「13、14歳の頃さ。彼の方が1歳年上だった。周りのコーチたちは、彼なら必ず一流のプロ選手になると話していたものだった。僕も悪くない選手だったけれど、プロになれたかは分からない。でもラグビーを選んだことに後悔はない」とフォファナは振り返る。わずかな隙間を見逃さずに、爆発的な加速力から見せるラインブレークは、その時に培ったのかもしれない。
父がパリ・サンジェルマンの熱狂的なファンだったため、子供の頃には何度か試合に連れていかれたというフォファナ。そんな彼がラグビーに出会ったのは学校でのことだった。体育教師に勧められて、楕円形のボールを追いかけるようになったという。最初は二束のわらじを試みたが、じきにラグビーの道へ進むことを決心。「ラグビーを選んだので父は落胆していた」というが、182cm・93kgの恵まれた体躯と圧倒的なスピードで、ワールドカップ選手にまで登り詰めたのだから父親も納得しているだろう。
ラグビーW杯で過去8大会のうち6回もベスト4に入っている強豪国フランスだが、今大会に関してはニュージーランド、南アフリカ、イングランドといった優勝候補に比べると実力は一歩劣る。
それでも、今大会を最後に代表引退を表明しているフォファナは、最後の晴れ舞台で“フットボール”を存分に楽しむことだろう。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。