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意外な新戦力。ボローニャが獲得した日本人DF冨安健洋はどんな選手?

2019.10.09

『ウルティモ・ウオモ』がボローニャに加入した冨安健洋の分析記事を公開した(2019年7月24日)。セリエAという新たな舞台でさっそく存在感を見せている若武者の現在地を探るために、その専門性の高さからイタリアで独自のポジションを獲得しているWEBマガジンが、シーズン前に日本人CBをどう評価していたのか振り返ってみよう。

 冨安健洋は、日本列島を構成する主要4島のうち最も南に位置する九州の最都市・福岡で1998年に生まれた。日本の中で特にサッカーが盛んな地域というわけではなく、実際彼も、地元にバルセロナが設立したサッカースクールに入るまでは、水泳と陸上競技を楽しんでいた。

 アビスパ福岡の育成部門に入った冨安は、16歳でトップチームにデビューし、18歳の時にはすでにJリーグでレギュラーの座を手にしていた。そして、日本の企業DMMが2017年から経営権を持っているベルギーのシント=トロイデンへと活躍の場を移す。新しい環境に慣れるために半年を過ごした後(シーズン途中での移籍だった)、昨シーズンはレギュラーに昇格して40試合に出場した。日本サッカー協会も彼には非常に大きな期待を懸けており、A代表ですでに15試合に出場、今夏のコパ・アメリカでもレギュラーとしてプレーした。まだ20歳でたった3年のプロキャリアしかないにもかかわらず、ピッチ上での振る舞いはチームの中で最も成熟した選手という印象を与えるものだった。

 これまでGKとCBの育成に困難を抱えてきた日本にとって、冨安は真の意味でモダンなCBが誕生したという確信をもたらしてくれるタレントであり、ボローニャにやってきた彼の双肩には母国の大きな期待が懸かっている。なにしろ彼は、2010年からヨーロッパでプレーしている吉田麻也以降初めて出現した、トップレベルへの成長が期待できるCBなのだ。吉田は最終的に、プレミアリーグ中位のクラブでプレーする好選手という位置づけに収まったが、冨安は彼を超える可能性を秘めているように見える。とはいえ、彼はまだ成長途上であり、非常に興味深い才能を備えているものの、どこまで成長できるかまだ未知数の部分も少なくない。セリエAの舞台はそのまたとない試金石となるだろう。

 彼のプレーを特徴づける要素は2つある。1つはスピードだ。出足の鋭さ、そしてとりわけそこからの伸びが素晴らしい。さらに何より彼はヨーロッパでCBとしてプレーできるだけの体格を備えている。188cmの身長にはまだ筋肉をつける余地が残されているが、それが持ち前の反応性とスピードを殺さないよう注意すべきだろう。スライディングの動きも速く、後手に回った時にもそれを挽回することができる。

 アンティチポ(後方からマークしてのパスカット)の巧さも強みで、自分より俊敏な相手も苦にしない。とりわけ空中戦では、より身長のある敵を相手にしてもフィジカルで圧倒されることなく、先手を取ってより高く飛んで競り勝つことができる。1対1での体の向きや位置取りはまだ完璧とは言えないが、後手に回ってもすぐに修正して対応する反応性の高さと状況把握力を備えている。これも大きな長所の1つだ。

 断っておかなければならないのは、これらは彼がこれまで経験してきたベルギーリーグや日本代表の試合を分析して得られた評価であり、トップレベルのストライカーと対峙した時にどう振る舞うかというサンプルは不十分だということ。積極的に前に出てアンティチポを狙うプレースタイルを持ち味とする一方、おそらくカバーリングについてはまだ大きな伸びしろを残している。常に高い集中力を保ち続けているわけではないが、先手を許した時にもそれを修正する能力は高い。例えば先のコパ・アメリカでも、ゴールラインぎりぎりのボールをスライディングでクリアするなど、味方のミスをカバーしてチームをピンチから救う場面が見られた。スライディングの正確性はモダンなCBに要求される重要な能力ではないが、それが彼にプラスアルファをもたらす強みであることは確かだ。

コパ・アメリカではウルグアイの両雄、スアレス(左)とカバーニを筆頭に強力な攻撃陣と対峙した

 彼のプレーを特徴づけるもう1つの要素はボールスキルの高さだ。技術を重視する傾向が非常に強い日本のサッカーにあって、ビルドアップ能力を備えたCBは珍しい存在ではないが、冨安のクオリティはその中でも際立っている。何よりも左右両足を自在に使いこなせるため、ピッチの幅全体を使って攻撃を組み立てることができる。後方からのビルドアップに対する意識も高く、レジスタと呼べるほどパスの精度が高いわけではないが、ショートパスでもロングパスでも受け手にとって有利な足にボールをつけようとするし、それはプレッシャーを受けている状況でも変わらない。積極的にボールに絡んでプレーしようとするだけでなく、ボールを持った時には簡単なパスに逃げることをせず、常に局面を前に進める上で最良の選択肢を選ぼうとするし、その責任を担うことを厭わない。敵守備ラインを割るキーパスに勇気を持ってトライし、必要ならば持ち前のスピードを生かした持ち上がりで敵のプレッシングを破壊する。

 こうした彼のプレースタイルが、DFが過大なリスクを冒すことを嫌う傾向が強いセリエAでどう変化していくのかは興味深い。冨安は間違いなく、非常に大きなポテンシャルを持ったCBだ。しかし、技術的にも戦術的にもより難易度が高い上に、DFのミスに対して極めて許容度が低く厳しいセリエAという舞台においても、その個性を存分に発揮できるかどうか、すべてはこれからの課題である。


Photos: Getty Images

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ボローニャ冨安健洋

Profile

ウルティモ ウオモ

ダニエレ・マヌシアとティモシー・スモールの2人が共同で創設したイタリア発のまったく新しいWEBマガジン。長文の分析・考察が中心で、テクニカルで専門的な世界と文学的にスポーツを語る世界を一つに統合することを目指す。従来のジャーナリズムにはなかった専門性の高い記事で新たなファン層を開拓し、イタリア国内で高い評価を得ている。媒体名のウルティモ・ウオモは「最後の1人=オフサイドラインの基準となるDF」を意味する。

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