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このままでは、再建なんて…アルゼンチン代表が抱える病巣

2019.09.03

コパ・アメリカ2019の準決勝で敗れたアルゼンチン代表

EL GRITO SAGRADO――聖なる叫び

宿敵ブラジルに屈し、最終的に3位でコパ・アメリカを終えたアルゼンチン代表。あれから2カ月、リスタートを切る彼らが、真に解決すべき問題とは?

 本稿はコパ・アメリカ準決勝でアルゼンチンの敗退が決まった直後に書いている。不完全な状態で挑み、大会途中で批判の嵐も巻き起こったが、結果的には納得のいく内容で負けたとの評価が大半を占めており、国内メディアの反応は非常に冷静だ。レアンドロ・パレデス、ロドリゴ・デ・パウル、ラウタロ・マルティネスら若手が将来性を感じさせ、世代交代が不可欠なチームにとって明るい兆しとなったこともその要因の一つだろう。

 しかしここで冷静になり過ぎてはいけない。AFA( アルゼンチンサッカー協会)は代表チームの再建に関わるすべての事項を見直し、真摯な態度で改善する必要がある。今大会ではグループステージで敗退しても不思議ではない状況に追い込まれたが、その原因のもとはピッチ内ではなく外にある。あの悪夢のようなロシアW杯が終わってから1年が経っても、代表再建が理想的な形で行われてこなかったからだ。

タピアよ、メノッティよ

 いま一度、本格的な再建に取りかかる前に見直すべき点は2つ。1 つは、代表チームに関する重要な案件のすべてをAFAのクラウディオ・タピア会長が独断で決めていることだ。ロシアW杯後、サッカー界の識者を集めて意見を請うという提案があったが、結局そのような機会は設けられず、タピアは誰に相談することもないままトップチームの指導経験がゼロのリオネル・エスカローニを監督代行に任命。その後、正監督に就任させたのも彼の判断だった。

アルゼンチンサッカー協会のクラウディオ・タピア会長
AFAを統べるタピア会長

 さらにタピアは、セサル・ルイス・メノッティを「総ディレクター」なる役職に抜擢したが、これが2つ目のポイントである。以前この枠でもディレクターとしてのメノッティに対する疑問について書かせてもらったことがあるのだが、疑念はさらに増す一方。兎にも角にも彼が何をやっているのかがいまだにわからない上、その言動はチームのためにならないことばかりなのだ。

 コパ・アメリカ中は「健康上の理由」からアルゼンチンに留まり、その間スペイン紙『スポルト』にコラムを寄稿していたが、そこで代表について「再建途中にあるチーム」「長期プロジェクトが必要」「選手たちの魔術によって結果が得られると思うのは間違い」などと他人事のように書き、まるで自分がそのチームの責任者であることを忘れているかのような印象を与えた。これには監督も選手も不快感を示したというが、身内は何があっても守るのが普通とされるアルゼンチンだけに当然だろう。メノッティには知識があり、威厳もある。だが彼が代表再建を成功させた40年前とはサッカー界も大きく変わっている。新世代の監督や選手の上に立つリーダーとして、本当にふさわしい人物なのかどうかは疑わしい。

 ブラジル戦後、メッシは判定への怒りを露にしながらも、今後も代表でプレーし続ける意思を明らかにした。まだ彼の力を借りることができる今こそ、タピア会長は周囲の意見に耳を傾け、チームに必要なものは何か、何が不必要かを見極める賢明な判断を下さなければいけない。もうこれ以上、時間を無駄にしてはならないのだ。

Photos: Getty Images

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クラウディオ・タピア

Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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