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フランス・リーグ1の一大勢力。ポルトガル人が多く活躍する理由

2019.08.27

リーグ1とポルトガル人の密接な関係

 ポルトガル代表MFレナト・サンチェス(22歳)が、バイエルン・ミュンヘンからリールに入団したことが発表された。

 今シーズンの開幕戦では、リヨンのGKアントニー・ロペスら、7人のポルトガル人選手がリーグ1のピッチに立った。少し前は、パリ・サンジェルマンのストライカーで、2005-06、2006-07シーズンに2年連続でリーグ得点王になったペドロ・パウレタが、ポルトガル人選手でダントツに目立った存在だった。だが、2016年のユーロ優勝メンバーを見ても、大会前も含めると、リカルド・カルバーリョ、ジョゼ・フォンテ、ラファエル・ゲレイロ、アドリアン・シウバ、決勝ゴールを決めたエデル、そしてR・サンチェスと、6人の選手がリーグ1にお目見えしている。なかなかの数だ。

 R・サンチェスが加わったリールには、他にフォンテ、ジェカ、そしてやはりこの夏入団したセンターバックのチアゴ・ジャロと3人のポルトガル人選手がいる。リールのスポーツ・ダイレクターはポルトガル人のルイス・カンポスであるから、この“ポルトガル・コネクション”も納得。フランス代表の「自国開催のユーロで優勝!」の夢を砕いたエデルが、大会当時に所属していたのもリールだった。

ユーロ2016決勝で、開催国フランスを沈める決勝点を挙げたポルトガルのFWエデル

 その他、モナコも伝統的にポルトガル人選手が多いクラブのひとつ。

 ルイス・カンポスがリールに来る前にテクニカル・ダイレクターを務めていたからでもあるが、クリスティアーノ・ロナウドなど、多数のビッグプレーヤーを抱えるポルトガル人辣腕エージェント、ジョルジュ・メンデスとモナコの間には以前から太いパイプがある。R・カルバーリョやジョアン・モウティーニョ、マンチェスター・シティに移籍したベルナルド・シウバらもかつて所属し、現在は、冬のメルカートで加わったジェルソン・マルティンスとウィンガーのギル・ディアスがいる。そしてもちろん、モナコの監督はポルトガル人のレオナルド・ジャルディンだ。

 今シーズンは他にも、アンドレ・ビアス・ボラスがマルセイユ、元ポルトガル代表のパウロ・ソウザがボルドーで指揮を執っている。ジャルディンは2016-17シーズンにリーグ優勝を経験しているし、彼以前では、アルトゥール・ジョルジェが1993-94シーズンにPSGを頂点に導いた。

 その他でも、昨年ナントを率いたミゲル・カルドーソ、この夏までPSGのテクニカル・ダイレクターだったアンテロ・エンリケ等、フランスのフットボール界には、ポルトガル人勢力がかなり浸透している。

ポルトガル人はフランス社会との付き合いがうまい

 この現象には、いくつかの理由が考えられる。

 まず、フランスとポルトガルは、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの出場クラブ数が決まるUEFAのカントリーランキング(=いわゆる国内リーグのランキング)で競り合う仲。今現在はフランスが5位、ポルトガルが7位だが、2018-19シーズンだけ見ると、ポルトガルの方がポイントで上回っている。よって選手たちにとってはレベル的にも即戦力になりやすい。

 それから、フランスには古くよりポルトガルからの移民が多く、特にパリ近郊には巨大なポルトガル人コミュニティがある。現ドルトムント、元カーン、ロリアンのR・ゲレイロもその1人で、彼はパリ近郊で生まれ、カーンのアカデミーで育った。ポルトガル系だがフランス国籍を選んでいる選手もいて、彼らを合わせると、リーグ1のポルトガル勢力はさらに拡大する。

 ベンフィカがチャンピオンズリーグでフランスに来る時や、ポルトガル代表の試合などでは、フランス人ファンをしのぐ数のサポーターがスタジアムに集結するほどだ。

 それから、客観的に見ると、両者のメンタリティの違いが奏功している気もする。ポルトガル人はフランス人よりも、感情的にならずに物事を進められるタイプで、自我を出しすぎず、人付き合いがうまい人が多い。そんな違いがある一方で、同じ南ヨーロッパ人ということで、理解しあえる部分も大きい。

 フランスにいるポルトガル移民の家系は、アパートの管理人さんをしている人が多いのだが、みんなの世話を焼きつつ輪を保つ、といった役割や、フランス社会とのうまい付き合い方を熟知しているところも、外国人としてチーム組織に加わる上で、きっと重宝されているのだろう。

 個人的にもポルトガルは大好きなので、ついポルトガル人選手の応援には力が入ってしまう。

 リーグ1のリトル・ポルトガル、リールの今季に期待!


Photos: Getty Images

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リールレナト・サンチェス移籍

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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