引退のロッベンが振り返る(後編)「移籍は最善の決断だった」
ロッベンがバイエルンに来た理由
今夏に引退を表明したばかりの元オランダ代表のアリエン・ロッベンが、ドイツのスポーツ誌『ソクラテス』のなかで、バイエルン時代を振り返っている。前回は、バイエルン時代に指導を受けた監督のなかで、自身が「最も学ぶことが多かった」と語るペップ・グアルディオラについてまとめた。
しかし、他にも選択肢があるなかで、なぜバイエルンを選んだのだろうか。それには、同じオランダ人で、オランダ国内で名声を不動なものにしていたルイス・ファン・ハールの存在が大きかったようだ。
「(ファン・ハールとは)ミュンヘンで素敵な時間を過ごせたよ。あのタイミングでファン・ハールがバイエルン・ミュンヘンの監督じゃなかったら、僕がミュンヘンに来ていたかは、分からないな」
「ファン・ハールが電話をかけてきたとき、僕自身はレアル・マドリーでも幸せな生活を送っていたんだ」と話す。だが、2009年の夏は、レアル・マドリーがクリスティアーノ・ロナウドやカカ、そしてカリム・ベンゼマらの大型補強を敢行し、話題を集めた年でもある。25歳と全盛期を前にしたロッベンにとって、決断のときが迫られていた。「僕の唯一の願いは、チャンピオンズリーグ優勝だったんだ。当時のバイエルンはCL優勝を狙えるトップグループには入っていなかったけれど、リスクを取ったんだ。結果的に、この決断は報われたね」と話した。「バイエルンに行く決断は簡単ではなかったけれど、結果的には僕のキャリアにとって最善の決断だった」とバイエルンでのキャリアに後悔がないことも強調した。
最も辛かった出来事は……ブーイングから愛情へ
2013年のCL優勝がキャリアのハイライトと話すロッベンにとって、最も辛い経験となったのが2012年のCL決勝での敗戦だ。チェルシーとの一戦では、「僕らが有利とみなされていて、試合も支配していた。終了8分前には先制までしたにもかかわらず、最後は何も勝ち得ることはできなかった」と振り返った。だが、それだからこそ、2013年のCL優勝の意義は大きい。自身がバイエルンで現在の特別な愛情を受けられたのも、この浮き沈みを乗り越えられたからだと信じている。
「2013年のCL優勝という最高潮に達したあと、2012年のあとに僕に向かってブーイングをしていたファンたちも、ようやく僕に愛情を注いでくれるようになった。(ブーイングをされようと)僕はずっと変わらずにあり続けたし、クラブに全てを注いできたんだ。今まで僕が示してきたこの姿勢が、人びとを感動させてきたんだと思うよ」
Photos: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。