ネイマール抜きでPSGが開幕戦快勝
リーグ1が開幕した。
ディフェンディング・チャンピオンのパリ・サンジェルマンは、本拠地パルク・デ・プランスでニームに3-0で勝利を収めたが、この試合のチームシートにネイマールの名前はなかった。
試合前日の10日(土)に、スポーツ・ダイレクターのレオナルドが口を開いたのだが、彼の発言には、去就がはっきりするまで、ネイマールを試合には出さない、というようなニュアンスがあった。
「ネイマールの件については現在話し合いが進んでいる。その結果がはっきりするまで、様子を見るつもりだ。全員がこれからの去就をはっきりさせる必要がある。しかし我々にとって重要なのは試合で、しっかり集中して臨む必要がある。ただ、話し合いが進んでいること、すなわち(移籍の)合意に至ったという意味ではない。ともあれ、はっきりさせる必要はある。残るなら試合に出るし、もしくは去るかだ」
ニーム戦では、エディンソン・カバーニ、キリアン・ムバッペ、そしてアンヘル・ディ・マリアの攻撃トリオがそろって得点した。
カバーニの先制点は、相手のハンドで得たPKを決めたもの、そして2点目は、カバーニのパスをムバッペがネットに突き刺し、3点目はムバッペが流した横パスを、途中出場のディ・マリアがゴールと、攻撃陣による見事なリレー式得点だった。
ゴール裏のPSGサポーターは、『NEYMAR CASSE TOI』(ネイマール、失せろ)という横断幕を掲げていたが、実際に試合は、ネイマール以外の攻撃陣がきっちり得点を取って、「お呼びでない」展開となったのだった。
指揮官はネイマールとムバッペの「共存がベスト」
トーマス・トゥヘル監督は試合後の会見でこう語った。
「彼はまだ我々の選手、私の選手だ。そして私は自分の選手を常に守る。彼の言動を快く思わない人がいるのは理解できるが、彼の心情をしっかり伝えることが必要だ。
ネイマールには、彼にしかできないやり方で突破口を見つける術がある。その動きや加速でスペースを作り出し、一対一にも強い。今日の試合でも、特に前半戦はそういった部分が少し欠けていた。ネイマールの持つクオリティは、かけがえのないものだ。なんとかして解決策を見出したい」
またムバッペが彼の穴を埋められるのでは? という問いには、「2人が共存するのがベスト」と答えた。昨シーズンから一貫してネイマールをサポートしている彼らしい、誠実なコメントだ。
そんな監督の意思とは裏腹に、ネイマールは不要、と思っている人は多い。この試合に右ウィングで先発した新加入のスペイン人MFパブロ・サラビアも、精度の高いCKを披露するなど、アシスト役として今後活躍しそうな好感触だった。
ともあれ、これまでは交渉があることも否定していたレオナルドが、現在は具体的な話し合いがあることは認めた。ここまでサポーターの感情がアンチ・ネイマールに傾いていたらなおさら、クラブは条件次第で放出の方向に動くだろうから、ネイマールのPSG退団はついに秒読み段階に入ったということか。
カタールのお偉方にしてみれば、せっかく手に入れた念願の世界的スターだったのに、思惑違いの結末となってしまった、という感じだろう。
個人的にも、彼はこれまでリーグ1では見たことがなかったタイプの、独特の、傑出したプレーを見せてくれたから、それが見られなくなるのは残念だが、彼自身が充実した思いでプレーできる場所を見つけて欲しいと願う……。
Photos: Getty Images
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。