経験豊富なセンターバックと契約
アタランタは9日、スロバキア代表DFマルティン・シュクルテルの獲得を発表した。契約は2年間。
リバプールを退団したのち、フェネルバフチェで3年間プレーしていた34歳のベテランは、契約を終了しフリーになっていた。そこに声を掛けたのが、今シーズンに晴れてチャンピオンズリーグへと参戦するアタランタ。イタリア代表の成長株で、最終ラインの柱となっていたジャンルカ・マンチーニがローマへ移籍したため、その穴埋めを求めていた。
アントニオ・ペルカッシ会長とジョバンニ・サルトーリTDは数日前に選手代理人と接触し、選手とクラブ間では合意。複数の地元メディアによれば、イスタンブールでの居心地が良過ぎて移住を望まなかったバルボラ夫人は難色を示したとされるものの、8日までに受諾。シュクルテルは9日にベルガモでメディカルチェックに応じ、同日に移籍が発表された。
「私自身は、分厚い選手層が必要だとはそれほど思ってはいない。ただ昨季の戦力も正直なところギリギリで、故障者が少なかったから回ったようなものだった。とりわけDFと(ヨシップ・)イリチッチの控えは必要だ」
地元メディアの取材に対し、そのように要請を明かしたジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督のリクエストに応えた形となる。マンマークの強靭なセンターバックを柱にチームの守備を作り上げるのは、ガスペリーニの得意とするところ。シュクルテルの経験がどう融合するか楽しみだ。
年俸100万ユーロは「覚悟」の証
一方でシュクルテルの獲得は、アタランタが彼らなりに覚悟を決めたというアピールでもある。移籍金ゼロのディールではあるが、彼らはこのスロバキア代表DFに対し100万ユーロの年俸プラス成功ボーナスを約束している。経営規模が決して大きくはなく、昨シーズンの年俸が100万ユーロを超える選手もわずか4人に留めていた彼らにとっては、重要な決断であった。
先立ってペルカッシ会長は8日、サポーター向けにクラブHP上で書簡を発表していた。
「“我われが敬意を払っていない”との批判には同意しません。新しいスタジアムを始め、我々は一世一代の投資を行っている。その上で、大半の選手たちはオファーを断って引き止めました。以前であれば断ることができなかった額のオファーを拒否してきたのです」
今シーズンの年間シートの値上げが発表され、ファンから批判を浴びたことに応えたものだ。その上でペルカッシは「ファミリーシートを販売しても利用が少なかったので」と前置きし、18歳以下の少年少女や女性ファン全て、そして65歳以上の高齢者に割引を約束した。
育成部門を柱とした堅実経営の一方で、新スタジアムの建築など今後への野心を抱くアタランタ。国際経験豊富なシュクルテルの獲得は、国際舞台に打って出る戦いの狼煙(のろし)でもある。
Photos: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。