ビジネスマン、ピケが所有するFCアンドラがスペイン2部B昇格
ピケのクラブが“昇格”
バルセロナのピケが所有するFCアンドラが“昇格”することになった。
スペイン2部B(実質3部)のグループ3には20チームが参戦(その中には安部裕葵が所属するバルセロナBも)し、カレンダーもすでに発表されていたが、財政破たんで2部から自動降格していたレウスがここでも供託金を払えずテルセーラ・ディビシオン(実質4部)に降格し、1つ空きが出ていた。そこにFCアンドラが滑り込んだわけだ。
FCアンドラ以外のクラブ、ハエン、サモーラらも昇格を狙っていたが、今回のスペイン連盟の決定には、レウスがカタルーニャのクラブだったという地の利が有利に働いたようだ。2部Bでは長距離の遠征を避けるために地理的な近さを考慮して、グループ分けがされている。
アンドラのリーグには参戦せず
FCアンドラは、スペインとフランスの国境にある人口約7万8000人の小国、アンドラ公国のクラブチーム。1942年の設立当時はサッカー連盟がなかったため、例外的にスペイン連盟への所属が認められた。その後、アンドラ連盟が設立されて代表チームもでき、独立したプロリーグも誕生したが、FCアンドラはそこには加わらず、スペインのコンペティションに参戦し続けたまま今に至っている。
アンドラのクラブなのに同国のプロリーグに所属しないという、このねじれ関係には、プラスもマイナスもある。例えば、FCアンドラはコパ・デルレイには参戦できるが、奇跡でも起きない限りアンドラリーグの首位に与えられているCL参戦、2、3位に与えられるEL参戦は不可能、というふうに。
このFCアンドラをピケが(正確に言えばピケが所有する会社が)借金ごと買ったのは、昨年12月のこと。当時チームはカタルーニャ地方リーグに所属していたが、ピケがオーナーになると同時に大型補強を敢行し、18-19シーズン終了時にはテルセーラ・ディビシオンへの昇格を勝ち取っていた。
「CLにチームを送り込むのが夢」
ピケは「FCアンドラをプロチームにする」という夢を語っていたが、今回の2部B昇格で一応プロチームの肩書は手に入れたことになる。もちろん、グラウンド上だけでなくビジネス面でも野心家の彼がこれで満足するはずがなく、「CLにチームを送り込むのが夢」と鼻息は荒い。
監督はあの元バルセロナのガブリ・ガルシア、助監督は同アルベルト・ジョルケラで、選手の中にはバルセロナやレアル・マドリーの下部組織出身者や南米のアンダー代表クラスもいる。
金の力に物を言わせるピケのやり方は批判されることもある。が、考えてみれば、そんなやり方はプロの世界では常識である。ピケが興じるリアル・プロサッカークラブ経営ゲームの行方を見守りたい。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。