7月22日に新オープン、PSGのスタジアムツアーに行ってみた
パリのスタジアムツアーが新設
7月22日にオープンした、PSGのスタジアムツアーに行ってきた。
まだ開業して1週間目ということで客はまばらだったが、同じグループには、地元パリ在住者だけでなく、ドイツやポルトガル、スペイン、ルーマニアといった海外からの旅行客もいた。
ツアーはまず、VIPのホスピタリティエリアを通ってVIPスタンドへ。そこから、メインスポンサー数社が個別に持っている「ロッジ」と呼ばれる個室ルームがある場所を見学。ここは試合の前やハーフタイムに、飲み物やスナックなどが提供されるスペースで、企業によって大きさも少しずつ違う。
ここに選手では唯一、キリアン・ムバッペの名前を冠した部屋がある。ガイドさんいわく「これは彼が一番重要な選手だからとか、パリ出身だからとかではありません。彼がムバッペ基金という財団を立ち上げているからです」とのこと。マッチデーには、彼の家族や友人たちが、このスペースでくつろいでいるのだそうだ。
そこから、試合日に選手がスタジアムに到着してからロッカールームに降りていく動線を通って、まずは記者会見場へ。ここでは、監督や選手が質問に答えるステージ上のテーブルに座って写真を撮ったりできる。ユーモアのあるガイドさんだと、入団会見気分を味わえるようなシチュエーションコントをやってくれたりもする。
イブラヒモビッチの提案で……
続いては、ファン待望のロッカールームへ。手前には、トレッドミルなど室内ワークアウト用のマシンが完備されたスペースがあったが、なんと設置を提唱したのは、2012-13シーズンから4年間在籍したズラタン・イブラヒモビッチだったのだそうだ。
イブラは、ロッカールームの配置についても、最初は選手ひとりひとりの椅子が離れていたのを、「絆を深めるために必要」と、ぴったり隣り合わせにした仕様に変えさせたのだという。すぐ隣にはマッサージを受けるベッドが並んだスペースもあったが、これもまたイブラの提案らしい。
経験豊富な選手の加入というのは、ピッチ上だけでなく、こういう準備段階の面でも影響を及ぼすのだな、と感心した。おそらく彼がそれまで在籍したクラブでの経験をもとにしたのだと思うが、逆にPSGにはそういった設備はそれまではなかったのかと、ちょっとびっくりだ。
ちなみに、この日はまだ新シーズン開幕前だったので、ロッカーにネームプレートはついていなかったが、昨シーズンの席順だと、ネイマールとアンヘル・ディ・マリアが隣り合わせ。対岸にエディンソン・カバーニ、一番端にムバッペという並びだった。
選手は客席のファンの顔が見えている?
続いて、1970年のクラブ創立時から現在までの全ユニフォームが飾られた通路を通ってピッチへ。ちょうどゴール裏の位置に出てくるので、「GKの視界はこんな感じか〜」と実感できる。広いような狭いような。ハイブリッドの芝のグリーンが眩しいほど美しい。それに案外、客席がよく見える。よくゴールを決めたあと投げキッスなどしている選手がいるが、奥さんや彼女のことがバッチリ見えているのだろう。
クラブからもらった案内には、ベンチメンバーが座るダグアウト席に座れたり、特殊な3D映像と音楽を駆使して、試合前にピッチに出て行くときの瞬間が味わえる、と書いてあったが、まだ開業したばかりで準備が整っていないのか、この日はゴール裏から眺めるだけで終わりだった。
最後に、メディアが待ち構える、通称ミックスゾーンを選手の気分になりながら通過して、スタジアムツアーは終了。トロフィーやクラブ史をまとめたヒストリールームと、VRを使ったゲームセンターは、このあとガイドの案内なしに自由に見学ができる。
「27.50ユーロ」はちょっとお高め?
土日も休まず毎日朝9時から夜8時まで営業していて(試合日は変更あり)、チケットは、スタジアムツアーにヒストリールーム見学、VRアーケードのトークン1個分がついたものが大人27.50ユーロ(約3300円)、13歳以下と65歳以上は17.50ユーロ(約2100円)。これに、VRアーケードのトークン11個分がついたプレミアムチケットは大人45.50ユーロ(約5500円)、13歳以下と65歳以上35.50ユーロ(約4300円)。ヒストリールームだけなら大人12.50ユーロ(約1500円)、13歳以下と65歳以上7.95ユーロ(約960円)となる。
ちなみに、パルク・デ・プランスの向かいにあるオフィシャルショップの2階にあるVRアーケードへの入場は無料で、その場で1個2.50ユーロ(約300円)のトークンを買ってゲームセンター感覚で遊ぶことができる(VRのゲームは、1プレイにトークンが最低2個以上必要)。
まだ開始したばかりで、すべてが完全に機能していないと思うので、これからもっと充実するのかな、とは思うが、今回体験した感じでは、「この内容で27.50ユーロは、正直ちょっと高いかな……」という印象。入り口のところにカメラマンがいて、撮った写真をムバッペら選手たちと並んだショットに加工してくれるサービスもあったが、これも1枚16ユーロ(約1900円)とけっこう高い。
スタジアムツアーはものすごくありふれているし、ヒストリールームも、まだそれほどトロフィーも歴史も充実しているわけではない。特別なものを見た、という感じが特にないので、写真くらいお土産にサービスしたらいいのにな、とも思うが、ファイナンシャル・フェアプレー絡みもあって収入が必要なのかもしれない。
クラブの財源の一端になれると思えば、ファンにとっては価値があるかもしれないが。
Photos: Yukiko Ogawa
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。