ベルギーリーグ、他国に先駆けて開幕
7月27日、2019-20シーズンのベルギーリーグが開幕する。
ベルギーリーグは、7月末から3月中旬まで16チーム、ホーム・アンド・アウェーの総当たり戦でレギュラーシーズンを戦い、上位6チームが優勝を争うプレーオフ1を、7位~15位と2部の2位~4位までを加えた12チームがプレーオフ2を戦い、最下位チームが2部へ降格する。
今シーズンも、国内名門クラブのアンデルレヒト、クルブ・ブルッヘ、スタンダール・リエージュの「御三家」に、昨シーズン覇者のヘンク、5年ぶりの優勝を狙うヘント、潤沢な資金力で復活してきた「ベルギー最古のクラブ」ロイヤル・アントワープの6クラブが上位を争うと予想される。中堅のシャルルロワ、コルトレイク、ズルテ・ワレヘム、そしてシントトロイデンらが虎視眈々とプレーオフ1を狙う。
中でも注目は10シーズンぶりの優勝を狙う、スタンダール・リエージュ。フランス語を母語とするベルギー南部のワロン地方を代表するクラブで、かつては川島永嗣、永井謙佑、小野裕二がプレー。赤色を意味する「レ・ルーシュ」を愛称とする名門は、今夏の移籍マーケットで大きな話題を提供している。
昨シーズン終了後に、ルーマニア代表MFラズバン・マリンをアヤックスへ、マリ代表FWムサ・ジェネポをサウサンプトンへそれぞれ放出した。チームの核を担った2人の放出は大きな痛手と囁かれており、他の主力選手の放出も噂されたが、この後に大きな驚きをもたらした。
コンパニを彷彿とさせるCBが完全移籍
まずは、昨シーズンは19歳ながら守備の中心を担ったDFジーニョ・ファンフースデンを、所属元のインテル・ミラノから、ベルギーリーグ記録である1260万ユーロ(約15億円)の移籍金で完全移籍で買い取った。
彼はスタンダールの下部組織出身で、2015年8月に15歳でインテルのプリマベーラへ移籍した選手。各年代でキャプテンを務め、2017年5月にトップチームに昇格し、9試合ベンチメンバー入りすると、2018年1月にスタンダール・リエージュへ期限付き移籍で復帰していた。同年5月のプレーオフ1、ヘント戦でベルギーリーグデビューを果たすと、翌シーズンからレギュラーに定着し、26試合出場。最優秀ヤングプレーヤーにノミネートされ、ヤリ・フェルスハーレン(アンデルレヒト)、サンダー・ベルゲ(ヘンク)に次ぐ3位となった。鋭い飛び出しからのインターセプト、卓越したキープ力に加え、冷静沈着な佇まいは、若き日のバンサン・コンパニを彷彿とし、近い将来、ベルギー代表の守備の中心を担うと期待される。
ファンフースデンの他、コソボ代表DFメルギム・ボイボダ、年代別ベルギー代表にも選ばれるセントラルMFセリム・アマラーをムスクロンから獲得。ワースラント・ベフェレンからモンテネグロ代表右サイドハーフのアレクサンドル・ボリエビッチ、オランダのトゥエンテからフランス人MFニコラ・ガボリ、ボローニャから昨シーズンはコルトレイクでプレーしていたウルグアイ人センターフォワードのフェリッペ・アベナッティを獲得。移籍金の総額は2600万ユーロ(約31億円)を超え、ベルギーリーグでは破格の移籍金を費やしている。期限付き移籍で獲得しているベルギー代表FWアントニー・リンボンベ、セルビア人GKバニャ・ミリンコビッチ・サビッチを含め、今年のスタンダールは本気度の高さを感じさせる。
現在は35人を超える選手を保有しているため、モロッコ代表MFメフディ・カルセラ、キプロス代表DFコンスタンティノス・ライフィス、メキシコ代表GKギジェルモ・オチョアといった主軸が退団する可能性もあるが、9月2日の移籍期限終了後には、どのようなチームになっているのか興味深い。
かつては80年代から90年代にかけて、ベルギー代表のゴールマウスを守り、指導者としても数々のタイトルをもたらしているミシェル・プロドーム監督は、過去2回、スタンダール・リエージュ、クルブ・ブルッヘで、就任2シーズン目でリーグ優勝を果たしている。今シーズンは、ちょうど就任2年目に当たるシーズン。フランス語圏のメディアを始め、リーグ優勝への期待の声が高まっている。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。