“10番”クルーゼが抜けた穴を埋めるのは……
昨季までエースであり、キャプテンを務めた元ドイツ代表のマックス・クルーゼが抜けたブレーメン。今季は、日本代表の主軸の1人である大迫勇也がその穴を埋めることになりそうだ。
7月11日に『キッカー』、7月12日に『ビルト』がそれぞれ同じ見解を載せており、信憑性も高い。両紙ともに、それぞれ専属のレポーターを合宿先に帯同させており、今夏は落ち着いてチームのキャンプに参加できている大迫の様子も伝えている。
キャンプでのプレーぶりに指揮官も手応え
元々は、クルーゼの後釜にオーストリア代表のミヒャエル・グレゴーリッチュをアウクスブルクから獲得するつもりだったが、移籍金が高すぎるとマネージャーのフランク・バウマンが判断したことから、交渉は難航している。
この状況のなか、フロリアン・コーフェルト監督の構想のなかで攻撃陣の軸となるのは大迫になりそうだ。昨季、自身が首脳陣を説得して獲得を希望した監督自身も、「彼は特別評価している」と話しており、日本人アタッカーへの評価は揺るがない。キャンプ中のトレーニングの様子から、新シーズンに向けてエースの穴を埋められる手応えも感じているようだ。
「ユウヤは、数年ぶりに4週間のまとまった休みを取ることができた。それは、見て取ることができるし、際立って素晴らしい印象を与えている」
そうコーフェルト監督は話すと、起用法にも言及した。
「ユウヤは、センターフォワードでもプレーできるし、トップ下でもプレーできる。非常に攻撃的なセンターハーフとしても機能するし、ワイド2トップのサイドに置くこともできる」
昨シーズンも複数のシステムを併用したコーフェルト監督は、大迫を軸に今季の前線のメンバー構成を組むことを『キッカー』で示唆している。
チームメイトからの信頼も確固たるものに
『ビルト』は、チームメートのドイツ人MFケビン・メーバルトから大迫の評価を聞き出している。
「チームには、大迫勇也という昨シーズンすでに高いクオリティを証明した選手がいる。彼は、マックス(クルーゼ)に似たタイプの選手だ。ユウヤになら、喜んでパスを出すよ。確実にボールをキープして、次に繋いでくれるからね」
現在のトレーニングや、このメーバルトの発言から、『ビルト』も前線の中央から中盤に下りてきて、パスワークに積極的に参加し、フィニッシュに絡む昨季のクルーゼと同じ役割を与えられると予想している。
同紙は、ハノーファーからニクラス・フュルクルークが加入したこともあり、システム変更もあり得るとした上で、大迫のレギュラーの座は不動だと見ている。「ポリバレントなオオサコなら、先発メンバーの座を確実に得られるだろう」。
補強を含めたチーム構成のプランニングと同時に進むプレシーズンの合宿に落ち着いて帯同できたことで、“主軸”としての評価を確固たるものとした大迫。能力はもちろんだが、評価が行われる場にタイミング良くいることが、選手のシーズンの命運を分けることを示すこととなった。
Photo: Getty Images
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。