パレルモ、紆余曲折でセリエBから除外へ
イタリアサッカー連盟(FIGC)内のプロサッカークラブ監査委員会(COVISOC)は4日、セリエBパレルモの会計証明書類を承認しなかった。理由は、金融保証証明の不備ならびに給与や諸経費の未払い。従って同クラブは、2019-20シーズンのセリエBから除外されることになった。
ルカ・トーニやエディンソン・カバーニ、またハビエル・パストーレなど国際的にも有名になったタレントを擁し、多大な売却益を得ていたはずの南イタリアの雄は、2016年にセリエBに転落してから大変な困難に直面していた。数年前からクラブの売却を画策していたマウリツィオ・ザンパリーニ会長は、2017年3月にイタリア系アメリカ人の資本家グループに譲渡を決める。ところが、最終的な買収には至らず頓挫。そのまま経営を続行するも、今度は財務警察から決算に大幅な不足があると指摘され、検察から破産請求が提出される事態に陥った。
紆余曲折を経て2018年12月にロンドン資本への売却を発表したが、給与の支払い等を怠った挙句に彼らも撤退。5月に旅行関係の投資会社であるイタリア資本のアルクス・ネットワークに売却を決めるが、今度は過去の粉飾決算が発覚。チームはセリエBでプレーオフ圏内に入っていたが、一度は3部降格処分を宣告された。その後ペナルティは修正されたが、その矢先にCOVISOCから会計審査で跳ねられたというわけだ。オーナーのサルバトーレ・トゥットロモンドはビデオメッセージを公式サイトにアップし「これは陰謀だ」とFIGCを非難。クラブは反訴を提出すると表明したが、一方で第4部からの再出発も現実的に準備しているのだという。
サンプのオーナーがパレルモ取得に興味
さてそんなパレルモの明日に関してだが、実は別クラブのオーナーがクラブの経営権の取得に向けて動いている。サンプドリアのマッシモ・フェッレーロ会長が、「クラブを手中に収め、デ・ラウレンティスのようなことをしてみたい」と買収に意欲を見せているのだ。
イタリア国内では、セリエAクラブのオーナーは他クラブの経営権を取得することができないルールとなっている。しかし、カテゴリーが違えばそれは別。これまでもラツィオのクラウディオ・ロティート会長がサレルニターナの経営権を獲得したり、ナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティス会長がバーリを手中に収めてもいる。つまり実質上のサテライトチームとして、トップチームの経営に役立てようとしているのだ。
このままセリエDからの再出発ということになれば、現在所属している選手たちが軒並み移籍市場に出されることになる。パレルモの明日がどうなるのか、地元のファンも、他クラブ関係者も固唾を飲んで見守っている。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。