欧州制覇も、先行きは……?
スペインがU-21欧州選手権で優勝した。初戦敗退でスタートし先行きは決して明るくなかったが、イタリアと並ぶ最多5度目の優勝を飾り、ついでに来年の東京オリンピックの出場権を得た。
当然、地元では絶賛の嵐なわけだが、冷静になって考えると23人の優勝メンバーの未来は、決して明るくない。
たとえばMVP級の活躍をしたセバージョス(レアル・マドリー)は、ジダンと馬が合わず放出が決定している。会長が気に入っているので完全移籍はないが、レンタル移籍または買い取りオプション付の移籍先で、ほとんど出場機会がなかった昨季の雪辱を期すことになる。
彼のように所属クラブで出番が無く移籍先を探しているのは、他にヘスス・バジェホ、マジョラル(いずれもレアル・マドリー)、マヌ・バジェホ(バレンシア)、ラファ・ミル(ウルバーハンプトン)、ペドラサ(ビジャレアル)、ダニ・マルティン(スポルティング)、アントニオ・シベラ(アラベス)と8人もいる。
そもそも、スペインで居場所を失い海外修行に出ざるを得なくなった者が、前出のラファ・ミルに加え、アーロン(マインツ)、メレ(ケルン)、リロラ(サッスオーロ)、ウナイ・オルモ(ディナモ・ザグレブ)と5人もいることが、リーガの敷居の高さを示している。こらのうちアーロン、リロラ、ウナイ・オルモはステップアップする形で移籍することになりそうだ。
逆に、明るい未来が保証されているのが、MVPに選ばれたファビアン(ナポリ)。昨夏ベティスからの移籍に続き、今度はCL優勝を狙うクラスのビッグクラブからお呼びが掛かるかもしれない。元ビジャレアルのフォルナルスは、大会開幕直前にウェストハムへの移籍を一足先に決めている。
その他、スベルディア、メリーノ、オイヤルサバル(いずれもソシエダ)、ソレール(バレンシア)、アギレガビリア(アラベス)、ジュニオール(ベティス)、マルク・ロカ(エスパニョール)はレギュラーとして、ウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)は第2GKとして、それぞれのクラブに残留することになる。
スペインは2013年の大会でも王者に輝いているが、その優勝メンバーのうちディエゴ・マリーノ(スポルティング)、マルク・ムニエサ(ジローナ)、アルバロ・バスケス(サラゴサ)は現在2部でプレーしているし、イグナシオ・カマーチョ(ボルフスブルク)、アルバロ・ゴンサレス(ビジャレアル)は出場するのに苦労している状態だ。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。