スポーツと音楽の切っても切れない関係
スポーツと音楽は切り離せない。格闘家の入場テーマは一瞬で会場のボルテージを最高潮に誘う。プロ野球を見ていてもそうだ。どの選手がどんな音楽で打席に入るのか、ちょっと聞き入ってしまう。だが、そこはサッカーファンの性なのだろう。読売ジャイアンツの阿部慎之助が打席に立つ際にEarth, Wind & Fireの『September』が流れると、どうしても昨夏のワールドカップを思い出してしまう。
昨年、ロシアの地で躍動した新生イングランドには様々なチャントが送られた。そのひとつが『September』で、イングランドらしい「ウォーウォオ、ウォッカを飲み干す♪」という替え歌で盛り上がった。同じく人気を博したチャントはAtomic Kittenの2001年のヒット曲『Whole Again』のメロディーに乗せたものだった。「サウスゲイトしかいない。今でも私を熱くさせる。フットボールが帰ってくる♪」と指揮官を称える替え歌はイングランド中のパブで歌われた。
現在、フランスで開催されている女子ワールドカップでも同じことだ。男子に負けじとベスト4に進出したイングランド女子代表の試合でもラッパ隊が『Whole Again』を演奏していたし、お決まりの「It’s coming home~♪」(『Three Lions』)の大合唱も聞かれた。イングランドの準々決勝をスタンドで観戦していたデイビッド・ベッカムの娘、ハーパーちゃんも、ルーシー・ブロンズの強烈なシュートとともにイングランドの応援歌を記憶に刻んだはずだ。
フェス会場でイングランド代表戦
だからスポーツには音楽が欠かせないのだが、逆もまた然りである。6月末にイングランドのサマセットで開催された世界最大規模の音楽フェス「グラストンベリー・フェスティバル」は今年も大盛況に終わった。今年のフェスには、リアム・ギャラガー、ジャネット・ジャクソン、ザ・キラーズ、ストームジーなどが参加して話題になったほか、BABYMETALも出演したため日本でも注目を集めた。そして今年はサッカー界でも話題になった。
というのも、フェスの2日目に大型スクリーンで女子ワールドカップが放送されたのである。実はイングランド女子代表のMFジョージア・スタンウェイ(20歳)が、フェスを訪れる自分の兄妹が音楽とサッカーを同時に楽しめるように、SNSでフェスの主催者に直談判していたのだ。
「頼みがあります。私の兄妹が木曜日のフェスに行くので私たちの準々決勝をフェスで放送してくれませんか?」
そう頼むと、主催者側は「もちろん!」と快諾。
これで“フェス愛好家”も無事にサッカーを満喫し、イングランドがノルウェーに3-0で快勝すると、フェス会場でも「It’s coming home~♪」の大合唱が始まったという!
Photos: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。