女子ワールドカップが開幕!開催国フランスが華麗な白星発進
パルク・デ・プランスに4万人以上が集まった
6月7日、フランスでFIFA女子ワールドカップが開幕した。
ホスト国フランスと韓国が対戦する開幕戦の会場は、パリ・サンジェルマンの本拠地パルク・デ・プランス。全仏オープン真っ最中のローラン・ギャロスは目と鼻の先で、パリ西端のこのエリアに、スポーツ熱が集中している。
この日の空は分厚い雲に覆われていて、冷たい風がビュービュー吹きすさび、そこに時折雨が混じって体感温度は12℃と、6月とは思えない悪天候だった。それでも優勝候補の呼び声高いフランスを応援しようと、スタジアムは満員御礼! ウェーブが起こったり、フランス側がゴールに迫るたびに大歓声が飛んだり、45,261人の観衆が初戦を大いに盛り上げた。
ホスト国、初戦で華麗に韓国を撃破
試合は、開始からずっと、ハーフコートゲームかというくらい韓国側のハーフで展開され、9分、熊谷紗希のチームメイトでもあるウージェニー・ルソメールが先制点を挙げたのを皮切りにフランスが前半だけで3得点。その後もウェンディ・ルナール、アマンディーヌ・アンリが続いて、今季の女子チャンピオンズリーグを制したリヨンの3人衆がそろってゴールを挙げ、4-0でフランスが圧勝した。
4月に日本代表と対戦したときもそうだったが、フランスはサイドからの突破がとにかく速いのと、リーチが深い。マッチアップしている相手が予測する以上に深いところまで足が伸びてくる。攻撃はサイドから持ち上がって中に入れるパターンが主だが、ゴール前でのパスワークも多彩で、なによりスピードと迫力がある。
試合開始前、チーム写真撮影が終わってピッチに散らばったとき、フランスの選手たちが猛烈な勢いでダッシュしていた姿に「おおっ!?」と目を見張ったのだが、自国開催のワールドカップでの初優勝を世間も期待している、昨年の男子に続く男女アベック優勝(死語?)の実現に向け、選手たちも相当気合が入っているみたいだ。
謙虚な女子フランス代表監督
その彼女たちを率いるのは、コリーヌ・ディアクル監督。フランス女子代表歴代2人目の女性監督だ。
現在44歳。身長176cmと長身で、現役時代はセンターバックとして活躍していた。18歳でフランス代表に選出されてから2007年に引退するまでに121キャップを積み上げ、2003年のワールドカップ予選では、彼女の決勝点で初出場が決まった。またリーグドゥの男子チーム、クレルモンを率いたことでも有名だ。
2017年に着任してから、23試合で17勝3分3敗と成績も立派。しかし、そんな輝かしい経歴がありながら非常に謙虚で、「まだ何も成し遂げていないから、自分について話すことはない」と、今大会前に殺到したインタビュー取材もすべて断った。たいていの取材は可能な大御所『レキップ』紙でさえ、1年越しで口説いてもダメだったというから、意志の固さは相当だ。
まっすぐで自他共に厳しい性格は事実のようだけれど、語り口はそんなイメージとは対照的にびっくりするほど柔和で、癒される感じすらある。変にはぐらかしたりせず自分の意見ははっきり言うけれど、そこに傲慢さはまったくない。
会見で見せるそうした様子だけでも、とても信頼できそうなお人柄だという印象を受ける。自分が選手でも、ひたすらこの人を信じてついて行きたい! と思うだろう。
初戦で4-0と快勝したあとの会見で監督は、「ここまで、相当な時間をかけて準備してきました。一朝一夕になしえたことではありません。しかしまだたった1試合に勝っただけ。私たちの野望を実現するにはあと6試合残っています。しっかり地に足をつけていきたいと思います。今日は感情は完全に排除しています。それはもっと後にとっておかなくてはならないものですから」と、いつもどおりソフトに、そして冷静に話した。
自国開催の今大会は初優勝のチャンス
クラブのレベルは高く、世界でも女子サッカー先進国の一角といわれているフランスだが、オリンピックやワールドカップではセミファイナル止まりだ。自国開催というまたとない機会で、果たしてトロフィー獲得の悲願達成なるか?
この大会のメンバーは、若手も加わっているものの、中核は前述のリヨンの3人やベテランのガエターヌ・ティネイら、ここ数年間チームを引っ張ってきたお馴染みの面々だ。その彼女たちにプラスアルファの化学反応を起こすことが、ディアクル監督ならできるかもしれない。
となると、なでしこジャパンにとっても避けては通れない難敵となるわけだが、フランスがA組1位で勝ち抜けるのはほぼ確実として、日本がフランスと当たるのは、D組1位通過の場合はセミファイナル、2位通過の場合は決勝戦、3位通過の場合はラウンド16だ。
なでしこジャパンの初戦は10日(日本時間11日午前1時キックオフ)。同じくパルク・デ・プランスでアルゼンチンと対戦する。
Photos: Getty Images, Yukiko Ogawa
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。