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「ドイツサッカー大使」ルポ【前編】サッカー国際交流を称える表彰式

2019.06.06

 2013年から公式に開始された“ドイツサッカー大使”の表彰式が5月15日に行われた。B2B向けSNSを通じて、ベルリン在住のスポーツ記者という名目で筆者も招待されたので、ドイツの外務省に出向くことにした。

日本にも縁がある“ドイツサッカー大使”

 この賞は、毎年ドイツ国外で慈善事業を行いながら活躍するサッカー関係者を表彰するもの。外務省はもちろん、ドイツの文化交流機関の『ゲーテインスティチュート』や国民的スポーツ誌『キッカー』もメインのオーガナイザーとして参加している。

 主催者のローラント・ビショフ氏が中心となって2013年に発足させたこの賞を最初に受け取ったのは、日本サッカー界の恩人でもある故デットマール・クラマー氏と、ドイツ代表のサミ・ケディラだった。その後、メスト・エジル、アンドレ・シュールレ、ユルゲン・クリンスマン、ミロスラフ・クローゼなど、錚々たる顔ぶれが並ぶ。昨年は、日本で福島の少年たちをサポートしている京都サンガのゲルト・エンゲルスコーチが表彰された。

 日本でも、主にアジアの国々で日本人の指導者や選手たちがサッカーの普及をはじめ、日本国内で培った経験を生かして活躍している。ネパールやカンボジアで活動している行徳浩二監督や、ベトナムで活躍している三浦俊也監督、中国の広州富力でドラガン・ストイコビッチ監督のアシスタントコーチを務める喜熨斗勝史コーチなど、例を挙げればキリがないほどのサッカー関係者が海外で活躍している。欧州では、田口哲雄氏のように、ケルンのGKコーチを務めるなど、第一線で活躍している人々もいる。

 こういった現場での活動の認知を広めたり、JFAや外務省管轄の海外での文化交流への貢献をPRするためにも、このような機会は有意義だろう。何かしら参考になればと、長いこと気になっていたイベントではあったので、ちょうど良い機会でもあった。

ドルトムントCEOのビジネスマンとしての“貫禄”

登壇したドルトムントCEOヨアヒム・バツケ

 外務省の入り口で、空港の国際便のような安全チェックを受けて、明らかに住む世界が違う来賓たちが集まる会場に入場。偶然居合わせた顔見知りの記者たちと居心地悪そうに一緒に隅の方に座っていると、式が開幕した。外務省の広報担当者がシャルケのファンだと話をすれば、ドルトムントCEOのヨアヒム・バツケはライバルに比べて今季は成功だったと話し、笑いを誘った。2019年の“サッカー大使”受賞者でもあるクロップとの思い出話で聴衆を退屈させない話しぶりには、ビジネスマンとしての貫禄も感じさせた。

 大企業の代表者を務めるぐらいになると、ある意味で“パフォーマー”のような能力も必要になるものだ、と感心させられた。この辺りは、タイプこそ違えどV・ファーレン長崎の高田明社長と重なるのかもしれない。人の関心を引きつける術を身につけているのだろう。

クロップらと並ぶ大使には……

「ドイツサッカー大使」表彰式の受賞者や登壇者たち

 2019年の“ドイツサッカー大使”候補は、3人。リバプール監督のユルゲン・クロップ、モンゴル代表監督のミヒャエル・バイス、そして元ドイツ女子代表のペトラ・ランダースだ。

 クロップ、バイスの両者はシーズン中のため、ビデオでの挨拶にとどまった。会場に姿を表したランダース氏は、ザンビアの貧困層の少年少女たちに向けてサッカーのコーチを務めている社会貢献の面で、今回の表彰を受けた。

 写真では気づかなかったが、登壇した彼女を見て、以前一緒にプレーしたことを思い出した。2013年に「ディスカバー・フットボール」というイベントにボランティアとして参加したときのことだ。この組織は、女性がサッカーをすることが社会の中で認められていない国々で、「サッカーをプレーしたい」と望む女性たちを支えるプロジェクトを行っている。

 壇上で、「サッカーは、誰もが開くことができるドアなのです。人々は、このドアを通じて人生を変えることもできます」と話したランダース氏。授賞式後、表彰を受けた彼女のザンビアでの活動、そして、そのモチベーションについて話を聞いた。次回の記事は、そのインタビューをお送りしたい。

→【中編】に続く

Photo: Deutscher Fußball Botschafter e.V.

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Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。

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