好調ヘンク勢を抑え、バナケンが2年連続MVP
5月6日、ベルギープロリーグ連盟が年間最優秀プロ選手を発表し、クルブ・ブルッヘ所属のベルギー代表MFハンス・バナケンが2年連続で受賞した。
昨シーズンも最優秀選手に輝いたバナケン。今シーズンはレギュラーシーズンを独走したヘンクから、ウクライナ代表MFルスラン・マリノフスキーと得票数のトップを争ったが、わずか13点差でバナケンが勝った。なおヘンクからはトップ10に5人が入っており、またシントトロイデンで活躍した鎌田大地も11位に入っている。
<得票数>
1位:ハンス・バナケン(クルブ・ブルッヘ) 361票
2位:ルスラン・マリノフスキー(ヘンク) 348票
3位:アレハンドロ・ポスエロ(ヘンク ※3月にトロントFCに移籍) 242票
4位:レアンドロ・トロサール(ヘンク) 181票
5位:アリー・サマッタ(ヘンク) 113票
6位:ラズバン・マリン(スタンダール・リエージュ) 110票
7位タイ:ウェズリー・モラエス(クルブ・ブルッヘ) 102票
7位タイ:メフディ・カルセラ(スタンダール・リエージュ) 102票
9位:サンダー・ベルゲ(ヘンク) 59票
10位:ディウメルシ・ムボカニ(アントワープ) 36票
日本に入ってくるベルギーリーグのニュースでは、どうしても日本人選手が中心になりがちで、リーグのトッププレーヤーを知ってもらえる機会はほとんどなく、バナケンは日本では馴染みが薄い選手だと思われるので、今回は彼に触れておきたい。
懐の深さを生かした抜群のキープ力
バナケンは1992年生まれの26歳。育成年代では6年間、オランダの名門PSVに所属した。2010年に当時2部のロメル・ユナイテッドでデビューし、13年にはロケレンへ移籍。1部デビュー戦となったアンデルレヒト戦で2得点の活躍で前年度の覇者を3-2で撃破すると、その後のロケレンでの2年間は、不動のトップ下に定着していた。13年はベルギーカップ制覇に貢献し、またチームを優勝を争う「プレーオフ1」圏内の6位以内に導き、翌14年にはヨーロッパリーグのプレーオフで、イングランド・プレミアリーグのハル・シティを破りEL本戦にも出場。ロケレンの隆盛期を築き上げた。
アンデルレヒト、ヘンクをはじめ、数多くのクラブからのオファーがあった14年夏。バナケンはクルブ・ブルッヘへの移籍を選ぶと、初年度からレギュラーに定着し、クルブの9シーズンぶりの優勝に貢献。17-18シーズンには12得点13アシストの活躍で、初めてリーグMVPを受賞した。昨年8月のUEFAネーションズリーグでは、ベルギー代表にもデビューしている。ヘンクのレアンドロ・トロサールと共に、今のベルギーリーグの顔と言えるだろう。
ポジションはトップ下だ。194cmの長身を活かしたハイボールへの強さと、トップ下の選手らしい、巧みな脚さばきとパスワーク、さらに遠目からのシュートも得意としており、手でハートを作るゴールパフォーマンスがお馴染みだ。
股下のリーチが長いため、多少の精度が欠いたボールでもうまくマイボールにしてしまうことが多いのが特徴で、懐の深さを生かした抜群のキープ力は、今のベルギーリーグのレベルにおいては際立っており、相手選手も対応に苦慮している。他のチームは高い位置でボールをさばけるバナケンへのパスコースの分断に手を焼いているのをよく見受けられる。
現在26歳のバナケン。念願のベルギー代表にも選出され、今季はチャンピオンズリーグのモナコ戦で2ゴールを挙げた活躍も話題となり、国外からの注目度も急上昇している。すでに移籍の可能性はベルギーメディアでも上がっているが、ベルギーから去る日が近づいているのはたしかだろう。ベルギーリーグでスケールの違いを見せつけてきたバナケンの今後に期待したい。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。