【PR】幸せにしたい人がいる 岡部将和がドリブルを卒業するとき
“ドリブルデザイナー”
岡部将和がこの肩書きを名乗ってから数年が過ぎた。YouTubeに公開したドリブル動画の閲覧数は累計約1億回を記録する他、堂安律や原口元気など日本を代表する選手達からもアドバイスを求められるなどサッカー界における地位を完全に築いたと言える。そして、2019年4月には「99%抜けるドリブル理論」を言語化した著書『ドリブルデザイン』を発売。ますますの活躍が期待される中、あと数年でドリブルデザイナーを卒業する予定だという。パイオニアとして歩んできた岡部は今、日本サッカー界に、自身の未来に、何を見ているのか。
勝利の再現性を追求する
――岡部さんが過去に受けられたインタビュー記事を一通り拝見させて頂きました。ドリブルに特化した技術論がテーマになっているものが多かったのですが、今回は少し視点を広げて話を伺わせて頂こうと思っています。
「最高です。事前にマネージャーから今回のインタビュー概要の説明を聞いた時から楽しみにしていました」
――岡部さんは“ドリブルデザイナー”を名乗ることによりサッカー界で唯一無二のポジションを築かれた。これはブランディング的には素晴らしい一方で、理解がないゆえに周囲から正しい評価がされない不安や、競合がいない寂しさは感じることはなかったですか?
「不安も寂しさもないです。けど、前例がないし、正解もない。そういう難しさはあります。ドリブルをどのように表現することがプレーヤーにとっても、僕にとっても良いものなのかは常に考えています」
――ドリブルは感覚的に解説されることも多く、サッカーの中でも言語化が遅れている分野だと思います。そうした状況の中でも岡部さんの様な人が登場する不思議をどのように解釈すればいいでしょうか?
「僕が将棋家系であることは影響していると思います。つまり、逆算して物事を考える習慣が小さい頃からついていて。絶対に勝てる理論を細かく突き詰めるのが好きなんです。サッカーの場合は(細かく突き詰めると)個の1対1に辿り着く。まずはそこを理解できないことには11対11で勝つのは難しいんじゃないかという発想ですね。抽象的なものが苦手で、勝利の再現性をとにかく追及したいんですよ」
――理論化できれば自信にもつながりそうです。岡部さんはドリブルしている時、いつも表情に余裕があることが印象的でした。
「僕はドリブルを技術面と精神面を連動して捉えています。技術的に99%抜ける理論があれば、精神的にチャレンジしやすいじゃないですか。だって、失敗がない訳だから。そして、ドリブルで人を抜く経験をすることで更に前向きになれる。自分自身を信じてあげられるサポートをしたいんです」
――パサーと比べてドリブラーの数が日本は少ないと思いますが、その背景を考えるヒントになりそうなお話です。
「能力は高くてもドリブルを躊躇する子が多いのは事実です。それは失敗が怖いから。ドリブルのミスを叱る指導者が未だに多いという背景もあります。地域性もあるんですけど。関西は結構イケイケのチームが多い印象もありますし」
――今後は関西から日本を代表するドリブラーが生まれるかもしれないですね。そういう意味では岡部さんがドリブルのデザインをされた経験のある堂安律選手は関西出身ですし、精神的にも強い印象を持っています。
「堂安選手は上手くなることに飢えている。ビッグクラブに所属して、UCLで活躍して優勝するという夢に対して強い想いをブレずに持ち続けている。だから、精神的なアプローチは必要なくて、既に持っている自信の裏付けとなる理論や、改善案を提供するようなスタンスで話しています」
――話を少し技術論に移しますが、堂安選手にドリブルを伝える中で“左利き独特の感覚”を感じられたことはありますか?よく使われる表現ではありますが、抽象度が高いです。
「多分、(独特の感覚は)あると思います。僕もそこは突き詰めたいなと思っているテーマで。例えば、臓器を考えた時に左右対称には存在しないものがあるじゃないですか。そうなると、左側の方がスムーズである動きもあるんじゃないかと。あとは、右利きの人が多い環境でプレーする中で鍛えられる感覚も違ってくる部分もありそうで」
――日本と欧州の比較ではどうでしょう?個人差はあると思いますが、ドリブルの特徴に差は感じますか?
「攻撃性ですかね。選択の優先順位が違うと思うんです。欧州はゴールに一番近づくための選択を取ることが多いから縦に仕掛けることが多い、一方で日本はボールを失わないことが優先される。シュートを意識しないで最初からクロスを目的にドリブルする選手が多いのも日本の特徴かもしれません」
死を意識して、好きを見つける
――ここからは岡部さんのキャリア観について伺わせてください。まずは「ドリブルデザイナー」を始める際、前例がない事実を「市場のニーズがない」とは捉えなかったのでしょうか?
「例えば、過去100億人の人間がいたとして、100億人が成し得なかったことでも、100億1人目で僕が出来るという考えを持っているんです。だから、前例がないとか、リスクがあるということは全く考えたことがないです」
――その前向きなメンタリティのベースには才能への自信があるのでしょうか?
「いえ、才能があるとは思っていません。けど、誰よりもドリブルが好きですし、誰よりもドリブルと向き合っている自負はありますね。それで結果が付いてこないのであれば、仕方ないじゃないですか」
――とはいえ、一定の人気を獲得するまでの苦労で心が折れることもあったと思います。地道にYouTubeに動画を公開し続けるなど、継続性を担保したモチベーションの源は何でしょうか?
「目的を達成するための方法を逆算して考え、今何をすべきなのかを意識していることは(モチベーションを担保できている理由として)あるかもしれません。ドリブルデザイナーとしてどうすれば世間に認められるかを考えた際、『メッシやネイマールのドリブルを指導すること』と『世界中の子供達にドリブルを伝えること』を目標に定めました。けど、すぐには実現できるものではない。じゃあ、まずはYouTubeで自分の技術を公開して認知を広げることで日本の子供達に指導する機会を得る。次にアジアを意識して中国語、インドネシア語に対応した動画を公開する。その積み重ねの中で本田圭佑選手やイルファン選手(インドネシア)にドリブルを伝える機会を得て……そんな形で少しずつ世界を広げていきました」
――ドリブルしかり、常に論理的ですね。
「そうですね。論理的に考えることで物事がより理解できる。好きなものがより好きになっていく感覚はあります」
――「好き」を見つけることは案外難しいと思うのですが、何かヒントはありますか?
「僕は“死”を意識します。死ぬ瞬間にどうなっていたいのか。何を世の中に残したいのか。少し極端だとは思いますけどね(笑)。“好き”を突き詰めて考えると『幸せになりたい』『人を幸せにしたい』ってことに行き着くのではないかと思っていて。僕は好きなドリブルで人を幸せにしたい」
ドリブルを通じて挑戦を駆り立てる
――岡部さんにとってドリブルは手段という訳ですね。その発想はサッカー以外でも役に立ちそうです。オンラインサロンを立ち上げられたと伺いましたが、その理由も少し見えてきた気がします。
「はい。外から見ると“ドリブルデザイナーサロン”に見えると思います。実際、サロン名も『DDサロン』ですし。けど、僕はそこでドリブルを教えるという気持ちはなくて。DDって『Do Dream』なんです。夢を叶えることを応援したいという想いで運営しています」
――上手ですね。それがきれいごとではなく岡部さんの純粋な気持ちがベースにあることは分かります。
「ありがとうございます。これは仲間からのアドバイスで発見できた言葉なんです。『岡部君の生き方を表していていいんじゃない?』って言ってくれて」
――我々も「フットボリスタ・ラボ」というオンラインサロンを運営しているので感じるところですが、想いでつながった仲間の存在は世の中に何か起こせるポテンシャルを感じています。岡部さんはこのDDサロンで何を成し遂げたいとお考えですか?
「抽象的になってしまうんですが、少しでも多くの人にチャレンジする大切さを伝えたいです。そのためにドリブルデザイナーの活動をしているので。けど、サッカーという媒体では伝えきれないこともある。ちゃんと調べた訳ではないですけどサッカーの競技人口は世界中で16億人と言われている。世界の人口が70億人だから、4~5人に1人がサッカーに関心がある計算になる。これってすごい数字ですけど、逆に捉えれば5人のうち4人に対してはサッカーでは伝えられない。そこに対して何ができるのかなということを考えて、少しずつ行動に移しています」
――視点が広いというか、もっと有名になりたい、お金を稼ぎたいという欲はないんですね。
「僕が人生で得たいのは家族や好きな人と一緒にいること。そこへの満足感があるので、それ以外はいいかなって」
――ある種の境地に達していらっしゃるような。少し語弊があるかもしれないですけど、宗教感もあります(笑)。
「よく言われます。もし僕が70億人に挑戦する素晴らしさを伝えられたら、次は人でないものに何かしたいと思うかもしれません(笑)」
――人は何かを極めると岡部さんのようなメンタリティを得ることができるのかもしれません。
「僕ほど極端にはならなくていいとは思うんですけど、自分の目指したゴールに対して嘘無く生きていけば自然と結果も出るんじゃないかと信じています。今はドリブルという手段でそれを伝えたい。ドリブルの理論を伝えるのがゴールではなく、ドリブルを通じて挑戦を駆り立てることにつながればという想いで今回の書籍も作りました。私も何かやってみようという人が1人でも増えたら嬉しいですね」
<商品詳細・購入はこちら>
TAG
Profile
玉利 剛一
1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime