現在フリーのコンテ監督、次の仕事場は?
「代表監督の時代によく通っていたから、ローマという街には惚れている。サッカーに対する街の人々の情熱は濃密なもので、ローマのことならみんな熱くなる。今はまだ条件が整っていないけど、遅かれ早かれローマに行って監督をやってみたいね」
7日、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は現在フリーとなっているアントニオ・コンテの独占インタビューを掲載したが、それを巡ってイタリアのサッカーファンの間で喧々諤々になっている。
とりわけショックを受けたのは、ロマニスタたちだ。来季からのコンテ監督就任の噂が高くなっていたが、ここにきて「今は条件が整っていない」と事実上の“否定発言”。冒頭のセリフの少し前には「私は損害を減らすために監督をしたくはない。それに私には問題が一つある。勝利だ」などと、優勝を狙える体制を整えることを監督就任の条件として挙げたのである。「つまり、オレたちは結局勝利に値しないということか。コンテはクラブにダメ出しをしたってことなんだろ」とファンはSNSで怒りと失望のメッセージをクラブに向け、地元メディアは「就任を期待していたフランチェスコ・トッティは落胆し、フロントを辞する考えを固めた」などとも書きたてた。
というわけで現在、コンテの去就が大きな話題となっている。ユベントス時代、ともに最強のチームを作り上げたジュゼッペ・マロッタGDのいるインテルか、またはマッシミリアーノ・アッレグリ監督退団の際はユベントス復帰か、との噂が地元メディアで書き立てられている。
カルチョに影響をもたらすもう1人のコンテ
一方、イタリアではもう1人、サッカーシーンに大きく影響を及ぼすであろう“コンテ”の動向が注目されていた。イタリア共和国のジュゼッペ・コンテ閣僚評議会議長(首相)である。コンテ首相率いる政府は先月の30日に官報を出し、事業者を助け経済危機を乗り切るための『成長法令』を発布したが、それは競争力の低下に苦しむセリエAのクラブを助けるものになるかもしれないと期待されているのだ。
その中には、外国人ないし海外に在住していたイタリア人を招聘し、雇用する際の税制優遇措置が記載されている。イタリアでは75,000ユーロ(約925万円)を超える個人所得に税率43%の所得税が課せられているが、2年以上海外に在住していた者を国内に呼んで5年契約を結ぶ際には、2年以上の滞在を条件に30%まで軽減されることになったのである。
経済紙『イル・ソーレ24オーレ』は、「年俸1000万ユーロ(約12億3000万円)だったアントニオ・コンテ監督を呼ぶ場合には税込で2000万ユーロ(約24億6000万円)ほど掛かる算段になっていたが、それが1200〜1300万ユーロ(約14億8000万円〜16億円)程度に抑えられる可能性が出てくる」と報じている。
これは当然優秀な監督のみならず、有力選手の獲得をしやすくすることになるとも期待されている。クリスティアーノ・ロナウドに続くスター選手の到来なども望めるというわけだ。コンテ監督と『コンテ法』が、セリエAの勢力図を塗り替えることになるかもしれない。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。