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ブライトンのテキーラ・マンがリバプールに勝利の美酒を?

2019.05.08

プレミア優勝争いに一石を投じるかもしれない男

 今週末に最終節を迎えるプレミアリーグ。マンチェスター・シティとリバプールによる熾烈な優勝争いは、やはり最終戦までもつれることになった。

 首位シティを1ポイント差で追うリバプールは、自分たちが勝った上で、シティが最終節のブライトン戦で躓くことに期待するしかない。そう考えると、逆転優勝を目指すリバプールの最後の希望がブライトンのチームスピリット……いやブライトンの“スピリッツ(蒸留酒)”なのだ!

 最近、ブライトンに気になる選手がいる。精力的にピッチを走り回り、攻守において大事な場面で必ず顔を出す。そしてボールを持ったら細かいタッチでキープして攻撃につなげる。最近対戦したトッテナムやアーセナルの選手と比べても引けを取らないレベルだ。

 その選手こそ、マリ代表のMFイブ・ビスマ(22歳)である。コートジボワール出身のビスマは、13歳にして故郷を離れてマリのアカデミーに入団すると、そこからフランスに渡ってプロキャリアを歩み始めた。そして昨夏、リールからブライトンにやってきた。

元コートジボワール代表のダイナモに憧れて

 リール時代には、そのオールラウンドなプレースタイルでポール・ポグバと比較されたこともある。

 だがビスマは今年4月の英紙のインタビューで「ポグバはワールドカップなどのタイトルを勝ち取ってきたけれど、僕は駆け出しの身なので比較はできない」と謙遜しつつ、「もしかすると髪型が似ているのかな」とおどけてみせた。

 むしろ参考にしたのは、トッテナムなどで活躍した元コートジボワール代表MFのディディエ・ゾコラだという。友達から“ゾコラ”の愛称を付けられて喜ぶほど尊敬していたようで「テクニックや運動量、アグレッシブなプレーに憧れた」と話している。ビスマの長所はそうやって磨かれたのだ。

 ただし、セントラルミッドフィルダーとしてのキャリアが危ぶまれた時期もあった。2017-18シーズン、当時リールを率いていたマルセロ・ビエルサ監督(現リーズ)によって右サイドバックにコンバートされかけたのだ。幸いにも同指揮官が半年でクラブを去ったため、再び中盤を任されるようになった。

『テキーラ』のメロディがスタジアムの定番に

 そして今季からプレミアリーグに挑戦している。シーズン前半戦こそ「プレミアでは一瞬の油断で殺される」とレベルの違いに戸惑ったが、今年に入って第一子が誕生して私生活も充実すると、プレーも安定感を増し、最近はレギュラーに定着する勢いだ。「毎週末がチャンピオンズリーグのようだ」とプレミアの強豪クラブとの対戦を誰よりも楽しんでいる。

 ファンからの人気も高く、それは彼のチャントに表れている。皆さんも一度は耳にしたことのある名曲、ザ・チャンプスの1958年のヒットソング『テキーラ』に乗せて歌われ、「テキ~ラ」と歌う部分で「ビス~マ」と叫ぶのだ。今では本拠地アメックス・スタジアムの定番曲となりつつある。

 だから今週末、ブライトンで『テキーラ』の曲が何度も歌われることになれば、マージーサイドでは飛ぶようにお酒が売れることになるかもしれない。

Photos: Getty Images

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イブ・ビスマブライトン文化

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田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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