伝統の白黒縦縞から大胆なイメチェン?
「ニュースを見た。あれは3rdか4thユニフォームであってほしいと思う。シエナのパリオ(古式競馬)の騎手が着る服みたいだ。私なら変えないし、多くのファンも賛成していないだろう。重要なのはユベントスが勝つことなので、それに比べれば些細なことだろう。でもユーベの伝統といえば白と黒の縦縞で、ファンだって思い入れがある。世界にもあの縦縞で認識されているんじゃないのかね」
80年代にユベントスの正GKとして活躍したステファノ・タッコーニが先月、こんなコメントをした。ユベントスの来シーズン用の1stユニフォームが大きく変わるというニュースが流れたのだ。
伝統の縦縞ではなく、白と黒の大胆な切り替えに、1897年に発足した際のチームカラーであったピンク色の縦線が一本入る。フルアムのそれとあまりに似ているため、同クラブの公式ツイッターが「常に我われの影にいる」などとジョークを飛ばしたほどだった(現在は削除されている)。
そして4月24日、イタリアの各紙は「正式に変わることになった」と一斉に報道した。変更の理由はマーケティング、それも海外を睨んだものだという。『イル・ジョルナーレ』紙は「白と黒の縦縞はアメリカだと審判のユニフォームとして認識されるもので、それを嫌って変更された」と報じている。
賛否両論、でも時代は変わってきている
このようなユニフォームの大胆な塗色変更は、これまでにも様々なクラブで行われている。そして、そのたびに物議を醸した。
白地に十字のユニフォームを伝統としていたパルマは90年代後半、黄色と青の横縞のユニフォームへと変更し、ファンからはいまだに恨みを持たれている。13-14シーズンにはインテルが赤色の2ndユニフォームを発表したが、ミランのチームカラーでもあることからファンの怒りを買った。ウルトラスからは他のファンに向けて「アレを買ってスタジアムに行くことを禁ずる」といった発表までされたのだ。
さて、来季のユーベの1stユニフォームについて、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙が実施したアンケートでは実に75%のファンが反対を表明している。ただ、ユーベファンの声を生で拾ってみると、賛成意見も意外に多かった。「見た目が単純にカッコイイ」とは30代の男性ファン。「個人的にはシマウマ模様が好きだけど、ロゴが大胆に変更されても結局受け入れられたのだから、今回もそうなるだろう」と筋金入りのユベンティーノを自認するジャンパオロさんは語った。
どこのクラブも、とりわけユベントスは海外市場への訴求を強めている。「(マーケティングに強い)NBAではユニフォームの塗色変更が頻繁に行われているが、それで議論は起こっていない。最終的には不信感よりも新しいものに対する興味が勝る」。スポーツマーケティングに携わる者の間ではそんな話がされているというが、そういう価値観のもとで各クラブがマーケティング戦略を図る流れは今後も強まりそうだ。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。