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争奪戦の熾烈さは今や選手以上!? ブンデスの「監督いない問題」

2019.06.21

ボルシアMGの監督就任会見に臨んだマルコ・ローズ(右)とマックス・エバールSD

ドイツサッカー誌的フィールド

皇帝ベッケンバウアーが躍動した70年代から今日に至るまで、長く欧州サッカー界の先頭集団に身を置き続けてきたドイツ。ここでは、今ドイツ国内で注目されているトピックスを気鋭の現地ジャーナリストが新聞・雑誌などからピックアップし、独自に背景や争点を論説する。

今回は、2018-19シーズンのブンデスリーガを振り返るうえで見逃せないトレンド「シーズン途中での現任監督退任と翌季から指揮を執る後任の発表」について。チームのモチベーションに影響を与えかねないトップ交代をシーズン中に発表するクラブが相次いだのはなぜか? その理由に迫る。

 ブンデスリーガの多くのクラブが昨季終盤、監督への信頼を見失い苦しんだ。早々に監督交代を発表したところもあれば、新監督探しに奔走したところもある。バイエルンのニコ・コバチでさえ、続投か否か不透明な時期が続いた。「監督市場はかつてないほど変化している。ブンデスの半数のクラブが、遅くとも2018-19シーズン終了後には、監督問題を解決しなければならない」と『ベルト』紙日曜日版が指摘したように、どのクラブもドイツでどんどん顕著になる問題――チームを持続的に良くしていける、トップレベルの監督の不在――に悩まされているのだ。

長期政権という遺物

 クラブが、一人の監督に長期政権を築かせることが理想であり模範的だとされていたのはそう昔のことではない。例えば、ユルゲン・クロップのマインツ時代(2002-08)やドルトムント時代(2008-15)。あるいは、フォルカー・フィンケが率いた16年間で一介の田舎クラブから1部リーグに定着し、2012年からはクリスティアン・シュトライヒの下で財政的により恵まれたケルンやハンブルク、ハノーファーのようなライバルたちを退けているフライブルクのように。

 しかし今、“方向転換”が起こっているようだ。「現在は、成績の低迷が理由にならない解任話が多くなっている」ことを驚く『フランクフルター・ルントシャウ』紙は、監督解任は「短期的にうまくいかないからでなく、長期的な展望に合わないからになりつつある」と続ける。

 継続性への羨望はいまだにあることはある。だが奇妙なことに、それがかえって多くの解任劇を招いている。何がうまく行っていないか、よりつぶさに“観察”されるからである。今、ブンデスリーガに関する報道は「チームから批判的に見られている」「クラブの首脳陣にあまり協力的でない」「燃え尽き症候群になる寸前だ」「明確なプレースタイルを浸透させられていない」といった監督にまつわる話題であふれており、ドイツサッカーコーチ連盟会長のルッツ・ハンガートナーはそうした現状を「雰囲気は明らかに悪くなっている。今では、監督は“いいカモ”になっている」と嘆く。

 『ターゲスシュピーゲル』紙は、決して失敗したとは言えないパル・ダルダイ(ヘルタ・ベルリン)、ディーター・ヘッキング(ボルシアMG)、ブルーノ・ラッバディア(ボルフスブルク)やマルクス・アンファング(ケルン)らの解任を「戦略と長期的視野によるものだという印象を与える。加えて、スポーツディレクター(SD)はその決定を下すまでにどれだけ考え抜いたかを、国家の一大事でもあるかのように発表することができる」と評する一方で、「いささか滑稽だ。なぜなら、コンセプトに合わない監督を連れてきた責任は、SD自身にあるのだから」と疑問を呈する。

 来季から前ザルツブルクのマルコ・ローズに指揮を託すボルシアMGのSDマックス・エバールは、ヘッキング監督にそれほど不満があったわけではないことを明らかにしつつ、「しかし、チャンスが来たら動かなければならない」と監督交代の理由を説明した。

ボルシアMGを“お役御免”となったヘッキング(右)はハンブルクの新監督に収まった

後任は外国人ばかり

 ローズにはシャルケ、ホッフェンハイム、ボルフスブルクからも声がかかっていた。その事実が、さらなる問題を浮き彫りにする。1980~90年代のサッカーを身につけた50歳以上の監督の需要はほとんどなく、求められているのは若くて弁論の立つ、戦術に優れた人材であり、それに加えて大金の動くプロサッカー界で十分な経験を積み、優れた社会的技能を持つ監督ならなお良しという風潮なのである。「現在誰もが探しているのは、モダンでデジタル、それでも感情的な監督」と『南ドイツ新聞』も論じている。

 ローズと、来季からRBライプツィヒの監督に就任するユリアン・ナーゲルスマに並びこのタイプに入るのがブレーメンのフロリアン・コーフェルトだろう。シャルケで失敗したドメニコ・テデスコも、次の展開が期待される。

 だが、多くのクラブは妥協するしかない。ということは、招へいされる新監督が近い将来“犠牲”になるであろうことは見え見えである。

 監督問題は、ドイツサッカーが国際競争で劣勢な要因の一つでもある。

 ホッフェンハイムは来季に向けてオランダ人のアルフレッド・シュロイダーを、ボルフスブルクはオーストリア人のオリバー・グラスナーを招へい。ドルトムントのルシアン・ファブレはスイス人、フランクフルトのアディ・ヒュッターはオーストリア人、レバークーゼンのペーター・ボスはオランダ人である。また、バイエルンでは現在クロアチア人のニコ・コバチが指揮を執っているが、カール・ハインツ・ルンメニゲCEOは将来的なスペイン人監督誕生を夢見ている。

 「近年のバイエルンの中盤で最高の選手はシャビ・アロンソ(現在レアル・マドリーのユースチームを指導)だ。彼は4カ国語を話し、ドイツ語も流暢で人格的も優れている。真のジェントルマンであり、いつの日かバイエルンに戻って来てほしいと私が願う人物だ」

2016-17シーズンのブンデス優勝報告会でのルンメニゲCEO(右)とシャビ・アロンソ。レジェンドの夢が現実となる日は訪れるだろうか

Translation: Takako Maruga
Photos: Bongarts / Getty Images

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ダニエル テーベライト

1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。

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