元サウサンプトンDFの超ハードコアな挑戦
フルマラソン(42.195km)を走ったことがあるだろうか? 180kmを自転車で走り続けたことは? はたまた、3.8kmをぶっ続けで泳いだことは? そして、それら3つを連続して行うことを想像してみてほしい。しかも、1週間毎日だ。イメージできるだろうか?
イングランドに、そんなとんでもないチャレンジに身を投じている男がいる。1988年から2004年までサウサンプトンでプレーし、300試合以上に出場した元DFのフランシス・ベナリという男だ。今年で51歳になるベナリは、去る4月のある日に「7日間連続でアイアンマン・レースに挑戦する」という壮大な計画をぶちあげて、その突飛な取り組みが『BBC』をはじめとする英国の複数メディアに紹介された。
アイアンマン・レースとは、いわゆるトライアスロンだ。ただ、五輪競技のトライアスロンが「スイム1.5km、バイク40km、ラン10km」なのに対し、アイアンマンは「スイム3.8km、バイク180km、ラン42.195km」という超ロングディスタンスで、だからこそ本物の“鉄人”しか完走できない超ハードコアな競技と言われている。
そんな1回だって超過酷で、1日に1万キロカロリーも消費するレースを、あろうことか7日間連続で。そんな無謀とも言える挑戦に踏み出した理由を、ベナリは『BBC』にこう語っている。
「何年も前から計画してきた、がんの基金に100万ポンド(約1億4400万円)の寄付を集めるチャリティのためなんだ。現役を引退して何年も経つが、私はフィジカル的にもメンタル的にも今までに経験したことのないチャレンジに身を置きたいとずっと思っているのさ」
過去にも「プレミア20クラブ」マラソン
引退後はコーチ業やメディア業に挑戦したが、どれもしっくりこなかった。「何か、ホンモノの目標を持って生きていたい」。そんな思いから、ジムに通い始め、もともと支援していたがん基金のチャリティと結びつけることを思いついた。
2014年には、プレミアリーグ20クラブのスタジアムすべてをマラソンで回る『Benali’s Big Run』を実施し、8月から9月にかけての3週間でおよそ1600kmを走り抜き、10万ポンドの寄付金を集めた。続く16年には、プレミアリーグと2部チャンピオンシップの全44スタジアムを回る『Benali’s Big Race』に挑戦し、今度はマラソンと自転車で毎日120kmの距離を2週間にわたって雨の日も風の日も走り続け、最後はサウサンプトン対バーンリーが行われたセントメリーズ・スタジアムのゴール地点に無事到着し、35万ポンドの寄付金を集めた。
そして、今回の「第3弾」ではさらにスイミングを加え、今度は100万ポンドという額の寄付を目標とする「Benali’s IronFran」計画が実施されるに至ったわけだ。
ベナリは現地時間4月29日からチャレンジをスタートさせ、いまこの瞬間も走っている。そして5月5日、最後のランでサウサンプトン・マラソンを42.195km走り、ゴールテープを切る予定だ。そんな彼のチャレンジが気になった方は、ぜひ「Benali’s IronFran」の公式ウェブサイトか、公式ツイッターをチェックしてみよう。
Photo: Getty Images
Profile
寺沢 薫
1984年生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、2006年からスポーツコメンテイター西岡明彦が代表を務めるスポーツメディア専門集団『フットメディア』に所属。編集、翻訳をメインに『スポーツナビ』や『footballista』『Number』など各媒体に寄稿するかたわら、『J SPORTS』のプレミアリーグ中継製作にも携わった。