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ドイツから代表へ!18歳サンチョがイングランドを“鎖国”から解く?

2018.12.25

10月の代表デビューは、09年ベッカム以来となる「国外組」フィールド選手としての出場でもあった。マンチェスター・シティからのプロ契約を断り、ドルトムント挑戦で成功をつかんだサンチョとは何者だ?

 イングランドフットボール界に“ニュータイプ”が現れた。ジェイドン・サンチョ、18歳。憧れの選手はロナウジーニョで、ゆくゆくは「英国のネイマールになれる」と話題のドリブラーだ。早熟の天才は、10月12日のUEFAネーションズリーグ、クロアチア戦でイングランド代表デビューを果たした。10代の台頭はオーウェン、ウォルコット、スターリングなど過去にも例はあって、それ自体は決して珍しくないのだが、サンチョが新人類たるゆえんは、従来の若手選手とは異なる決断をして、唯一無二のキャリアを切り開いて代表にやってきたことにある。

 ロンドン生まれのサンチョは2015年、14歳でワトフォードからマンチェスター・シティのアカデミーに引き抜かれた。シティでもすぐに当代屈指の選手とみなされ、同い年のフィル・フォデンと一緒に各年代の代表でもエースを張った。当然、ペップ・グアルディオラもサンチョの才能は認めていて、クラブもアカデミー卒業生の最高額にあたる契約オファーを提示した。ところが、サンチョはこれを断った。ただでさえ分厚い選手層を誇り、今後も資金を投じて大物が次々やってくるであろうシティのトップチームで、ウインガーとして定期的な出場機会を得る日が遠く感じられたからだ。

 かくして、サンチョは2017年夏の移籍マーケット最終日、自らの意思でシティを飛び出した。行き先はドルトムント。このご時世、背番号はそれほど大きな意味を持たないかもしれないが、ドルトムントは当時17歳のサンチョに7番を託した。先代は現バルサのウスマン・デンベレ。そのデンベレに匹敵するテクニシャン、というのがクラブの評価だった。それを受け、サンチョも覚悟を決めた。有望株にありがちなレンタルではなく、完全移籍の“片道切符”を選んだのが、その証だった。


今やドルトムントの確たる主力

 結果的に、この決断が吉と出た。昨季後半にはゲッツェやロイス、プリシッチ、香川真司といった名手たちとポジションを争う存在になり、そして2年目の今季はさらに成長のギアを上げ、10月末時点で公式戦13試合、580分間の出場で5ゴール8アシスト(うちCLで3試合164分出場、1ゴール1アシスト)。実に44分間に1得点のペースでゴールに関与する大活躍を見せている。シティの“同期”フォデンが同じ時点で公式戦出場わずか213分間、CLのピッチには3分しか立てていないことを考えても、サンチョは賭けに勝ったと言える。

 代表監督のギャレス・サウスゲイトは、シティと決別するというサンチョの「勇敢な決断」に報いる形でチャンスを与えた。フィールドプレーヤーではベッカム以来の国外組となった彼の代表デビューは、英国の若手、とりわけビッグ6でベンチに入ることすらままならない「有望株」と呼ばれる選手たちにとって分岐点になるかもしれない。真剣味に欠けるリザーブリーグでのプレーや、あくまでも残留が優先のプレミア下位クラブ、明らかにレベルが落ちる下部ディビジョンへのレンタル移籍が、本当に成長を促すのか。そんな疑問に対する答えの一つがサンチョの挑戦だ。

代表デビュー戦となったUNLクロアチア戦でドリブルを仕掛けるサンチョ。新世代の台頭によりロシアW杯4位となったイングランドに、また一人楽しみな新星が現れた

 実際、サンチョの移籍と前後して、ブンデスリーガでの“腕試し”自体は徐々に増えている。今季ホッフェンハイムで5試合4ゴール1アシストと驚きを提供するリース・ネルソン(18歳)は、11歳からの親友だというサンチョからのアドバイスを受けてブンデス参戦を選んだアーセナルからのレンタル選手だ。また、昨季もU-20代表FWアデモラ・ルックマン(21歳)がエバートンからRBライプツィヒへのレンタル移籍を志願し、後半戦の11試合で5ゴール4アシストと輝いた。

 サンチョのように覚悟を決めて完全移籍する選手はまだ少ないものの、若手イングランド人プレーヤーの海外挑戦はかつてのようにレアケースではなくなっている。プレミアでの成功という枠にとらわれず、自身が輝ける舞台と、自分を使ってくれるチームを見つけて果敢に飛び出していける新世代が、今後のスリー・ライオンズには増えていくのかもしれない。

Photos: Getty Images

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大谷 駿

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