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クラブワールドカップ2018開幕!波乱の予感!?世界王者は誰の手に?

2018.12.12

12月12日(水)~22日(土)の11日間にわたり、中東はUAEを舞台に6大陸7つの王者が熱戦を繰り広げるFIFAクラブワールドカップUAE2018。


絶不調に陥った欧州王者レアル・マドリードが監督解任に踏み切り、コパ・リベルタドーレス決勝でのトラブルにより南米王者が直前まで決まらないなど、例年であれば2強となる両大陸王者に不安がのぞく今回は、他の出場クラブにも例年以上にチャンスがありそう。


Rマドリードが地力の差を見せ3連覇を遂げるのか。それとも、対抗馬リーベルプレートが2012年のコリンチャンスを最後に遠ざかっている南米勢の世界制覇を果たすのか。あるいは、Rマドリードとの“再会”を目指す鹿島アントラーズをはじめ伏兵たちのアップセットはあるのか。出場チームを、キーマンに着目しながら紹介する。


3連覇へ。Rマドリード復調のシグナルは“周囲を生かす”ベンゼマ復活

Karim Benzema
カリム・ベンゼマ

ヨーロッパ王者|スペイン
REAL MADRID
レアル・マドリード
3年連続5回目
監督 サンティアゴ・ソラーリ(42歳/アルゼンチン)

文 小田紘也

 今年6月に就任したジューレン・ロペテギ監督を解任し、サンティアゴ・ソラーリの監督就任によって新たなスタートを切ったレアル・マドリード。この変化とともに復活の兆しを見せている。中でも象徴的なのがFWカリム・ベンゼマだ。

 スペイン代表から引き抜かれた前監督ロペテギの下、スペイン代表同様のポゼッションスタイルを志向したチームは開幕から公式戦6戦5勝1分と好スタートを記録した。この間にはベンゼマ自身、リーガ第2節ジローナ戦と続く第3節レガネス戦で2戦連続2発をマーク。絶対的エースだったロナウド抜きでもやれる――そんな空気に包まれた。だが、この時点ですでに“異変”の予兆が数字となって表れていた。それは、ベンゼマのアシスト数。周囲を生かすプレーにも長けたフランス人FWは昨シーズン、リーガで二桁の10アシストを記録していた。ところが、今シーズンはこの段階でゼロだったのだ。

 そして、ここからチームの歯車は狂っていく。“ロペテギ・マドリード”の戦い方が世間に知れ渡ると、相手の引いた守備を崩すための攻撃パターンの少なさが露呈。スペースを埋める相手の分厚い守備網を崩し切れず、公式戦4試合連続ノーゴールに終わるなど大失速。ベンゼマも8試合ゴールから遠ざかり、大スランプの戦犯の一人として批判の的となった。

 そんな状況下で就任したソラーリは、ロペテギ前監督による極端なポゼッション志向を撤廃。ロナウドがいた昨シーズンまでと同じように、チャンスと見れば縦に速く攻め切る姿勢を打ち出した。事実、ロペテギ時代に平均60%台を記録していたポゼッション率は、ソラーリ政権下では50%台へと低下。就任後の公式戦成績(12月2日現在)は7戦6勝1敗と、解任直前7試合の1勝1分5敗からV字回復を見せた。

 そしてこれにより、より広いエリアを動き回る中で自分やあるいは味方が使うスペースを創出するベンゼマの秀逸なオフ・ザ・ボールの動きもより効果的に。監督交代後は4ゴールを挙げるだけでなくアシストも3つ記録し、周囲と連係しながら自らも点を取るベンゼマ本来の輝きが見られるようになっている。

 ただ、チームとしての完全復活にはまだ遠い。特に気になるのが、リーガ第12節セルタ戦で2-4と撃ち合い、続く第13節エイバル戦では0-3の完敗を喫した際に見られた守備の不安定さだ。現メンバーでの適切な攻守バランスを見出すことがソラーリに課せられた当面の課題となる。

 「クリスティアーノ(・ロナウド)がいない今、僕の番が来ているんだ」

 今年11月にクラブ公式チャンネルの番組でこのように語っていたベンゼマ。有言実行の活躍でチームを史上初の3連覇に導けるだろうか。

黄金期を謳歌するリーベル。キーマンは、W杯で日本がやられたあの男

Juan Quintero
ファン・キンテーロ

南米王者|アルゼンチン
RIVER PLATE
リーベルプレート
3年ぶり2回目
監督 マルセロ・ガジャルド(42歳/アルゼンチン)

文 チヅル・デ・ガルシア

 2014年5月にマルセロ・ガジャルドを監督に迎えて以来、およそ4年半の間に9個のタイトルを獲得したリーベルプレート。今回サンティアゴ・ベルナベウで行われたコパ・リベルタドーレス決勝第2レグで宿敵ボカ・ジュニオール相手に収めた見事な逆転勝利は、ガジャルド監督によって築かれたリーベル黄金期を象徴する快挙だったと言っていい。現役時代から持ち前の優れた戦術眼が高く評価されていたガジャルドだが、指導者に転身してからは分析力と現場での判断力に磨きをかけたうえ、リーダーシップと統率力においても傑出した一面を披露。選手やスタッフ、サポーターから絶大な信頼と支持を集め、敬愛されるカリスマ性を発揮している。

 そんなガジャルドが作るチームは現在、基本となるフォーメーションを持たず、一つのアイディアに縛られない多様性を秘めている。特に中盤のバリエーションが豊富であるため、先発布陣を予測することさえ困難な試合も珍しくない。また、2トップを好みながらも、好調のコロンビア人FWラファエル・ボレが累積警告により出場不可となった先述のリベルタドーレス決勝第2レグでは、トップ下を2人置いた1トップの形で勝負に出ている。このことからもわかるように、状況次第で大胆なフォーメーションおよびメンバーチェンジをためらわないのが特徴だ。

 そのような流動的なチームにおいて、ガジャルドの構想に欠かせないのがGKのフランコ・アルマーニ、DFのジョナタン・マイダナとハビエル・ピノラ、中盤のレオナルド・ポンシオ、エセキエル・パラシオス、ゴンサロ・マルティネスといった主力メンバー。自慢の中盤には、監督の要望に沿ってプレーできる多機能性の高いエンソ・ペレスとイグナシオ・フェルナンデスを擁している。そして、コロンビア代表として先のロシアW杯でも活躍したファン・キンテーロが勝負を決めるキープレーヤーとなっている。トップには前述のボレ以外に大型ストライカーのルーカス・プラット、優れたシュート技術を誇るイグナシオ・スコッコ、そして下部組織出身の18歳の秘蔵っ子フリアン・アルバレスといった逸材をそろえる。

 今回のFCWCはガジャルドにとって、2015年に続く2度目のチャレンジとなる。前回は決勝でバルセロナ相手に涙を呑んだが、その屈辱を晴らし、自身にとってリーベルにおけるデシモ(10度目)となるタイトル獲得実現なるかどうかが注目されるところだ。

今の鹿島スタイルを成り立たせるデュエルの覇者

Léo Silva
レオ・シルバ

アジア王者|日本
KASHIMA ANTLERS
鹿島アントラーズ
2年ぶり2回目
監督 大岩 剛(46歳/日本)

文 田中 滋

 クラブ初のアジア制覇を成し遂げ、2年ぶり2回目のFCWCに挑む鹿島。レアル・マドリードの3年連続出場には及ばないが、多くの選手がFCWCとはどのような大会なのか、あらかじめ心構えを持って臨むことができるのは大きい。

 大会初戦の入り方は難しく、ましてや相手は北中米カリブ王者のグアダラハラである。前回のオークランド・シティのような相手であれば試運転もできたが、初戦からアクセル全開でなければ太刀打ちできないだろう。Rマドリードとの再戦へと至るには大きな山を越えなければならない。

 前回出場時は、ポゼッションを握れないと判断すれば割り切って耐え、好機がきた時にそれを逃さない集中力でゴールを重ねた。各大陸の王者がそろうこの大会は開催国枠で出場するアル・アインを除けばすべてが格上との対戦。今回も守備に回る時間は多いだろう。全員がスライドの意識を共有してスペースを埋めつつ、カウンターの好機をうかがう戦い方が基本戦術となるだろう。

 ただ、守ってばかりでは勝てない。ゴールに向かう鋭さの面で重要な役割を果たしているのがレオ・シルバだ。はからずも彼が不在となったJリーグの最終節鳥栖戦が、それを証明する試合となった。

 鳥栖とは互いに[4-4-2]の布陣を採用していたこともあり、マークががっちり噛み合いなかなか試合が動かなかった。加えて、引き分けでもそれぞれが目標とするACLへの出場権と残留が手に入る状況も手伝い、心理的にも動きを加えるのが難しかった。

 そうした場面で試合を動かすのはデュエルで勝てる存在だ。もちろん鋭いドリブルで目の前の相手を剥がせる選手がいれば簡単だが、それだけではない。相手からボールを奪い、体を入れ替えて自ら前に運ぶことでも、相手の整った守備を混乱させることができる。レオ・シルバがいないことで、そうした場面もほとんど作ることができなかった。

 ゴールを決める存在として鈴木優磨やセルジーニョはもちろん重要な存在だ。しかし、今鹿島の戦い方を成り立たせるのはレオ・シルバだろう。

北中米カリブ王者の多彩なフォーメーション、不変のホットライン

Isaác Brizuela & Ángel Zaldívar
イサーク・ブリスエラ & アンヘル・サルディバル

北中米カリブ王者|メキシコ
GUADALAJARA
グアダラハラ

初出場
監督 ホセ・カルドーソ(47歳/パラグアイ)

文 池田敏明

 18-19から指揮を執るパラグアイ人のホセ・カルドーソ監督は、[4-4-2][4-2-3-1][3-5-2]など様々なフォーメーションを使い分けて戦う。ゆえにどんな布陣になるかは試合が始まってみないとわからず、各メディアの布陣予想はほとんど意味をなさない。

 攻撃はサイドに起点を作り、クロスやカットインからチャンスを創出するのが得意の形だ。メキシコのチームというと華麗なパスワークをイメージしがちだが、今のグアダラハラは組織力よりも個の力に依存する傾向が強い。

 中心となるのは、イサーク・ブリスエラとアンヘル・サルディバルの2人だ。ブリスエラは右のサイドMFやウイングを務めることが多く、鋭いドリブルからのクロスや両足の強烈なシュートでバイタルエリアを侵攻する。サルディバルは2トップの一角や1トップを務め、ポジショニングとシュートのセンスを武器に得点を奪う。

 18-19前期リーグではブリスエラが5アシスト、サルディバルが6ゴールといずれもチーム最多の数字を残しており、ブリスエラのお膳立てからサルディバルのワンタッチシュートで得点を奪う形がパターンとなっている。

長短カウンターを機能させるアフリカの雄の命綱

Anice Badri
アニス・バドリ

アフリカ王者|チュニジア
ESPÉRANCE
エスペランス

7年ぶり2回目
監督 モイン・シャーバニ(37歳/チュニジア)

文 籠 信明(Qoly)

 国内リーグを28度制覇している名門エスペランス。CAFチャンピオンズリーグ決勝では、第1レグでアル・アハリに1-3と敗れるも地元で3-0と大逆転に成功した。

 得点源は主に1トップを務めるFWケニッシ。スペースへの抜け出しや縦パスの引き出しを武器とする他、体を張って味方も使え守備もできる万能型CFだ。

 さらに、2列目にはチュニジア代表でも主軸となっているドリブラーのFWアニス・バドリがおり、彼のエネルギッシュな仕掛けは攻撃の命綱と言っても過言ではない。

 他にも高い技術を持つアルジェリア代表ウイングのFWユセフ・ベライリやゴール前への侵入と決定力に優れるMFサード・バギルなどが存在感を見せる。

 彼らを生かしているのが、主将のベテランCBカリル・シェンマムだ。左足から繰り出されるキックは精度抜群。セットプレーのキッカーを務めるだけでなく、時に果敢な攻撃参加も見せる。

 チームの武器はロングボールを使ったスペース攻略や2列目の選手によるドリブル突破、遠目からも積極的に放つミドルシュートとなる。手数をかけない攻めからアグレッシブな守備でペースを握るのだ。長短のカウンターが機能すれば、強豪を食えるだけの力はあるはず。

7連覇王者を沈め初出場。NZの新顔を牽引する絶好調CF

Hamish Watson
ヘイミシュ・ワトソン

オセアニア王者|ニュージーランド
TEAM WELLINGTON
チーム・ウェリントン

初出場
監督 ホセ・アントニオ・フィゲイラ(36歳/イングランド)

文 植松久隆

 前回まで7大会連続出場のオークランド・シティが独占してきたオセアニア枠。今回は、同じくニュージーランド勢でも首都に本拠を置くチーム・ウェリントンが初参戦する。

 常に国内リーグで覇権を争う仇敵オークランド・シティとの顔合わせとなったOFCチャンピオンズリーグ準決勝では、ホーム・アンド・アウェイで互いの意地がぶつかり合う激戦をアウェイゴール差で辛くも逃げ切り、余勢を駆って臨んだ決勝ではフィジーのラウトカを一蹴。うれしい大会初制覇でUAE行きを決めた。

 自慢の攻撃陣は国内有数の破壊力を誇り、中でも一番の注目は目下絶好調、国内リーグ7戦8発と得点王争いトップをひた走るヘイミシュ・ワトソンだ。Aリーグのウェリントン・フェニックスでの3季を経てパワーアップした長身CFが格上相手にどれだけ持ち前の得点力を発揮できるかが初戦突破のカギになる。

 一方、3バックが基本の守備陣は、格下との対戦でも失点を繰り返すなどやや不安が残る。本質的に攻撃的なウイングバックを5バック気味で攻守にフル稼働させ、少ないチャンスを確実に生かす戦いに活路を見出せるか。

力と技を兼備するFWコンビ。開催国代表を侮るなかれ

Caio & Marcus Berg
カイオ & マルクス・ベリ

開催国王者|UAE
AL AIN
アル・アイン

初出場
監督 ゾラン・マミッチ(47歳/クロアチア)

文 河治良幸

 開催国枠での出場だが、ホームアドバンテージを生かしてジャイアントキリングを起こしていくポテンシャルは十分にある。元広島の塩谷司とUAEの守護神ハリド・エイサを擁する守備が安定。元鹿島FWカイオと屈強なスウェーデン代表FWマルクス・ベリが牽引する攻撃はテクニックとパワーを兼ね備え打開力がある。

 ベリが前線で力強いポストプレーを行い、前を向いてボールを受けたカイオが得意のドリブルでDFラインを破るのが最もオーソドックスな形だ。ベリはスペースメイクにも優れており、相手のDFを引きつけながらカイオや2列目の元コートジボワール代表イブラヒム・ディアキ、快速のエジプト代表フセイン・エル・シャハトにシュートコースを提供する。カイオとベリのコンビに効率良くボールを届けるのが、経験豊富なアメル・アブドゥラフマンやUAE代表MFアフメド・バルマン。

 次期UAE代表監督候補にも挙げられるゾラン・マミッチ監督はロングボールに頼らずボールを繋ぐスタイルを掲げるが、相手に隙が生じればカイオとベリのコンビが推進力を発揮して直線的にゴールを狙う。そこにディアキやシャハトが絡むカウンターは迫力満点だ。


<放送スケジュール>
地上波日本テレビ系、BS日テレで全試合独占生中継!
http://www.ntv.co.jp/fcwc/

Huluでも全試合の国際映像をリアルタイムで配信!!
https://news.happyon.jp/cwc_2018

Photos: Getty Images

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