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トマ・ルマル。アトレティコ“史上最高”の看板を背負う男

2018.10.22


補強禁止処分により身動きが取れなかった昨シーズンの反動もあってか、移籍市場で例年以上に積極的な立ち回りを見せたアトレティコ・マドリー。中でも、クラブ史上最高額を投じた金額面はもちろんのこと、期待値も最大級なのがフランス代表MFルマルである。


Thomas LEMAR
トマ・ルマル
アトレティコ・マドリー MF
1995.11.12(22歳)170cm/58kg FRANCE


 今シーズンの開幕前、アトレティコ・サポーターにとって最も喜ばしかったニュースは、バルセロナ行きが現実味をもって語られていたグリーズマンの残留だっただろう。そして、この代えの利かないエースの“英断”に次ぐグッドニュースが、ルマルの獲得だった。

 1年前、アーセナルへの移籍が土壇場で流れたルマルだが、そのショックを引きずることなくモナコでハイパフォーマンスを披露。プレミアリーグの複数クラブが強い関心を示すなど、移籍マーケットで引き続き高い人気を誇っていたレフティを、アトレティコはクラブ史上最高額の7000万ユーロ(約91億円)で競り落とした。

 最大の魅力は、なんと言ってもその爆発的なスピードと高度なテクニックを駆使した局面打開力。リーグ1では優勝した16-17に10、昨シーズンも7アシストをマークするなど、左サイドを主戦場に多彩な仕掛けでチャンスの山を築き上げる。さらに左足の強烈なミドルシュートや、高精度のプレースキックも装備。ややフィジカルが弱く、デュエルで後手に回る傾向はあるものの、すでに現時点で世界トップクラスのウインガーと言っていいはずだ。

 昨シーズンのモナコではトップ下も務めたが、アトレティコでは[4-4-2]の左サイド、もしくは[4-3-3]の3トップの一角を担うことになりそうだ。いずれにしても、ジエゴ・コスタ&グリーズマンの2トップへの依存度が高く、攻め手が限られていた昨季までのアタックに、彩りを添えてくれるのは間違いないだろう。なにより同胞のグリーズマンとは息の合った連係を見せてくれそうであり、ルマルを左サイドに固定できれば、パスの供給源となれるコケを中盤センターで使えるメリットも生まれる。

 シメオネ監督も、得点力不足解消の切り札としてこの22歳の俊英に大きな期待を寄せている。昨季はEL制覇こそ成し遂げたものの、就任7年目にして初めて、CLでGS敗退という屈辱を味わった。すべては必要な時に必要なゴールを奪えなかったからだ。今季も堅守をベースとしたリアクションフットボールから大きく舵を切ることはないはずだが、ルマルの活用法も含めてその質を高め、得点力アップへと繋げるための試行錯誤をこの闘将は厭わないだろう。

 一方のルマルにも覚悟はある。

 フランス代表として臨んだロシアW杯では、開幕前はレギュラーと見られながら、蓋を開けてみれば出番は消化試合となったGS第3節のデンマーク戦のみ。しかしその悔しさも、まだ若い彼にとっては成長の糧だ。さらなるレベルアップを遂げるべく、強い気持ちで新天地マドリッドにやって来るに違いない。


Photo: Getty Images

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Profile

吉田 治良

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長など歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動する。

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