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過渡期にある欧州列強、そしてエスナイデル千葉の未来は

2018.09.26

『戦術リストランテV』重版記念 西部謙司さんトークイベントレポート 後編


8月31日、くまざわ書店 ペリエ千葉本店 特設会場にて開催した弊社刊『戦術リストランテV』重版記念トークイベントの模様を、「フットボリスタ・ラボ」メンバーの嘉数翼さんがレポート。著者である西部謙司さんと、本書の編集を担当した『フットボリスタ』編集長の浅野賀一による“スペシャルメニュー”の後半はCL展望と、最後にジェフ千葉の話も。どうぞお楽しみください。


前編はこちら

● ● ●

西部さんの今季注目クラブ


浅野
「一つの質問で長くしゃべり過ぎてしまいました(笑)。次のご質問いかがでしょうか」


――直近の話題で、CLの組み合わせが決まりました。面白そうなグループがたくさんありましたので、今シーズンのCLの展望を伺いたいです。


浅野
「グループBとCが特に厳しそうに見えますがどうでしょうか?」


西部
「グループBは、まあバルセロナは通るでしょう。あとはトッテナムだと思いますよ。次にグループC。これはねー、リバプールは間違いないです!」


浅野
「そういえば、西部さんはリバプールを推してますよね」


西部
「いや、強いですよ(笑)。パリ・サンジェルマンもナポリも強いですよね。ただ、ナポリのアンチェロッティさんは序盤戦はあまり良くないことが多いので、このグループだとちょっと厳しいかもしれないですね。パリSGとリバプールかな、順当に見れば。グループHも厳しいね。ユベントスはたぶん大丈夫だけど、マンチェスター・ユナイテッドは今どうなるかわからない状態なので、ひょっとするとバレンシアかもしれないね」


浅野
「今季のCLの優勝候補だったり、注目チームだったりというのはどのあたりになりますか?」


西部
「CLはもう、優勝候補は変わらないですよ(笑)。スペインの3強とバイエルンとユベントスとパリSG、イングランドだとリバプールとマンチェスター・シティ。トッテナムは上まで行けるか微妙ですけど、でも力はあると思います」


浅野
「トッテナムは今季補強しませんでしたよね」


西部
「補強はないんだけど、ないなりの良さは出してます。面白いなと思ったのは、この間のユナイテッド戦(編注:8月27日のプレミアリーグ第3節、0-3でトッテナムの勝利)でトッテナムは[4-3-1-2]みたいなひし形で臨んだんですよ。中盤の底の3のうちの2人はデンベレとダイアーで決まっているんだけど、あと1人は決まっていない。デレ・アリとエリクセンが交互にトップ下に入っていくんですね。その時の流れで。アリが出ればエリクセンは右に下がる、エリクセンが出ればアリは左に下がるというようなダブルトップ下制になっています。

 それで、引く時は4人全員でブロックを作って引くこともあるし、攻め込んだ時にはアリとエリクセンの両方ともがバイタルエリアに入ることもあります。かなり柔軟にシステムを組めているのは、お互いの特徴をよくわかっている、コンビネーションがしっかりできているからかなという感じも受けますね」


浅野
「プレミアの優勝争いということになるとリバプール、シティが挙げられると思うんですけど、そこに続く存在はスパーズってことでしょうか」


西部
「スパーズも強いと思います。ただ、プレミアリーグで補強をしないチームってたぶん優勝できないリーグなんで(笑)。デンベレというのがかなり特殊で、ボランチで(相手を)剥がせてビルドアップできるという。このデンベレの仕事ができる代わりの選手がいない。そしておそらく、ケインの代わりはジョレンテなんでしょうけど、ちょっと差が……。ソン・フンミンとルーカス・モウラは交換できるし、中盤やSB、CBには代わりがいます。まあ、いくつかの懸念はありますけど……。確かに補強しないというのもわかります。(メンバーは)充実してますね」


浅野
「CLに関しても隠れた躍進候補はスパーズでしょうか。ただ、組み分けがちょっと厳しいかもしれないですね」


西部
「僕はスパーズってプレミア向きな感じがするんですよ。プレミアリーグってアドレナリンのサッカーで、『ワー』って詰めていって、あとは野となれ山となれみたいな感じなので(笑)。で、その勢いが他のリーグと比べてもすごく強いので、パスを繋ぐ余裕もあまりないんですよ。バルセロナやレアル・マドリーだと、(相手が)来たら剥がすこともできるし、剥がすことでスペースが空くんだけど、(プレミアで)そこまでのチームって言ったらシティぐらいしかない。ということは、みんな蹴るわけです。蹴った先で戦うのがすごく強いんですよ、スパーズって。CBも強いし、運動量もある。プレミアでは無敵感のあるサッカーをしますよ。リバプールもそう。ただ、CLベスト4ぐらいになると、それ以上の相手と当たっちゃう。今までと違うタイプの相手にどうかなって思うところもあります。落ち着いてやればもちろんできると思いますけど、今まで通用していたものが『あれっ、ダメだ…』となった時の修正はなかなか効きにくいと思うので」


浅野
「なるほど。じゃあCLに関してもう一つ。今季こそパリSGはどうですか。ムバッペ、ネイマールなどタレントはそろっていますが。あと、今季から監督がトゥヘルになったんですよね。そのあたりでどうなるか」


西部
「たぶんダメだと思いますね(笑)。パリSGってかなり特殊なクラブなんで。何が特殊かっていうと、カタールの国策クラブです。カタールのためにあるクラブですから(笑)。ネイマールも余分なプレッシャーというか、CL優勝して、バロンドールも獲るっていうストーリーをカタール側が勝手に描いて、それを押し付けられている状況だから。プレッシャーがすご過ぎてかわいそうな感じはあります。自ら選んだ道ではありますけどね。

 もうネイマールが来ている時点で、自動的にネイマールのスタメンは決まっているし、ネイマール中心にチーム作るのも決まっているわけですよ。それは確かにそうなんですけど、他の選手からしたら『競争もしないうちからそうなのか』っていう思いは絶対あるし、もしネイマールが活躍しなかったら『こいつ中心にやってるのってどうなの?』っていうのは絶対出てきますよね。

 ただ昨季はネイマールも頑張ったので、そこまでの不協和音というのは出なかったですけど。まあでも、練習中にタックルしちゃいけないとかっていう内密な約束があったんじゃないかとか言われていましたね。そういうのってやっぱり不自然ですよ。メッシでもクリスティアーノ・ロナウドでも最初から王様だったわけじゃない。実力を認められて王様になったわけで、最初から椅子が用意されてやっているというのはサッカーするうえで不自然だと思うし、それを受け入れてしまうクラブのプラスティックな体質っていうのもすごく痛感します」


浅野
「ただ、ネイマールに関して言うと、ヨーロッパサッカーの現実の一部を反映している感じもあります。スター選手によるブランドビジネスですよね。ネイマール自体がブランドになっているので。ユーベに移籍したクリスティアーノ・ロナウドも一緒ですけど、彼らが活躍することでユニフォームが売れたりだとか、スポンサーもどんどん入ってくる、というのが前提になってきている。なのでクラブ経営的には絶対試合に出てほしいし、さらに活躍もしなければならないというビジネス面からの要請もある」


西部
「ビジネスとしては成功していると思いますけど、サッカーとしては不自然。最初からネイマール中心にやるって、『なんで決めてんの』ってことじゃないですか」


浅野
「そこはもう完全にビジネスですよね」


西部
「監督はネイマールの調子が良かろうが悪かろうが絶対に使わないといけないし、バロンドールも獲らせなきゃいけないって何のプレッシャーだっていう話ですよね。そりゃ辞めちゃうよ(笑)。トゥヘルって、もっとちゃんとサッカーがやれると思って来ていると思います。その現実に気がついた時の挫折感たるや、けっこうすごいと思うし、真面目なタイプだと思うので。ただネイマールは2年目で慣れてきているし、ムバッペがW杯で優勝してかなりスター性が上がってきたので、1年目ほどのプレッシャーではないかもしれないです」


浅野
「(ネイマールとムバッペの)2党体制感が出てきましたよね」


西部
「はい。ただ、トゥヘルとネイマールが衝突する可能性はあると思います。その時は絶対にトゥヘルが切られちゃうから。力関係が選手が監督よりも強いっていうのは、どう考えても不自然ですよね。不自然な関係を抱えながら、どこまで行けるかっていうのがこのクラブの課題です。ただ、そういうクラブじゃないと客が入んないですよ。パリってそういう街です。華やかじゃないと人が寄ってこない。そうじゃないと社会的に不満がある人しか寄ってこなくなっちゃうんで(笑)。荒んできちゃいます」


浅野
「優勝候補で言うと、レアル・マドリーもロペテギが監督になって、ロナウドが抜けてかなり過渡期になっていますし、バルセロナもイニエスタが抜けてチームのスタイルもアイデンティティが問われている状況にもなっています。代わりに獲っている選手もアルトゥーロ・ビダルだったり、今までとは違うタイプの選手ですよね」


西部
「そうですね。バルセロナで言うと今までの自分たちのプレー哲学できっちりとやってきている。カルロス・レシャックっていう監督やったりコーチやったりメッシを見出したりと、バルセロナの生き字引みたいな方がいますけど、彼がインタビューで『バルセロナのサッカーとは何ですか』と問われた時に、『まず我われはいいサッカーをしようとする。ただ、いいサッカーをしても2割は負けるよ』っていう話から始めています。サッカーというのはいいサッカーをすれば必ず勝てるものではなくて、運にものすごく左右されるスポーツです。というのも、やっぱり運が悪ければ点は入らないんです。バスケットボールやハンドボールのように、攻めた回数の中でかなり高い確率で点が入るスポーツであれば、内容は結果にダイレクトに反映されると思います。ただ、サッカーの場合は10回攻めても、20回攻めても1点も入らない、なんてことはざらにあるので。なので、いいサッカーをしても、実力差があっても、勝てるとは限らない。負ける確率も2割ぐらいありますよ、っていう話からまず始めているんですね。負けることはあるだろうけど、100%勝とうとするのは間違っている。『80%勝てればそれでいいので、そのために我われはこういう手順でサッカーをします』というのが彼の結論で、バルセロナのサッカーです。

 そういった哲学がしっかりあって、ある意味人生観に繋がっているところでもあります。『大事なのは結果じゃなくて、過程だよ』っていう。ただ、確固とした哲学の中で育ったメッシが、ものすごい大物になってしまった。だからどうしてもメッシに頼ってしまうわけです。監督が代わるたびにやり方をちょこちょこと変えていますが、やりたいことは一緒。メッシに真ん中の右寄りで前向きにボールを持たせること、これだけです。メッシをCFで使ったり、右ウイングとして使ったり、2トップで使ったりとやり方は変えていますが、基本的には一緒です。

 昨季は圧倒的に優勝しましたが、バルベルデ監督がついに[4-4-2]を取り入れました。バルセロナの育成で[4-4-2]ってないですから。それはポゼッションをしてプレーするためには3トップがマストというのが彼らの考え方だから、[3-4-3]はあっても[4-4-2]ってまずないんです。相手のFWが何枚いるかによってバックラインの人数は変えますが、FWの数は変えないのがバルセロナのやり方だったんです。昨季そこにとうとう手を入れました。メッシというスーパースターを手に入れたがために、バルセロナの哲学自体が少し揺らぎ始めているっていう感じですね。どうやって折り合いつけて行くかですね」


浅野
「とても皮肉な現象で興味深いですよね」


西部
「はい。でもそういうものだと思います。ロナウドがいるがゆえのレアル・マドリーっていうのもありました。ただ、レアル・マドリーはそういうことに慣れているチームですから、いいサッカーをして勝つというよりも、なにがなんでも勝つ。そのために一番いい選手をそろえて『全部使え!』っていうサッカーです。ただ、全部使うためにロナウドはCFでは使えない。相手を背負ったらいいプレーができない選手ですから、左ウイングで使いたい。なので、ベイルはしょうがないから右に持っていけみたいな。という感じになってゴタゴタするのがレアル・マドリーです(笑)」


浅野
「ましてやハメス・ロドリゲスは……という感じでした(笑)」


西部
「今年、その一番の大駒がいなくなったので、割とみんなスッキリしてノビノビやっている感じがありますよね(笑)」


浅野
「ベイルなんて今季絶好調じゃないですか」


西部
「レアル・マドリーが適材適所になったのってロナウドが来てからたぶん初めてだと思います(笑)」


浅野
「では、レアル・マドリーは今季強そうですか?」


西部
「ただ、みんなが幸せだから一番強くなるとは限らないのがサッカーです」


浅野
「ロナウドはなんだかんだ年間50点くらい取ってくれる選手でしたからね」


西部
「3人ぐらい『なんだよ俺のこの仕事!』って言っている状態でロナウドが輝いている時がたぶん一番強かったです(笑)。バルセロナもそうです」


浅野
「ベイルが本当にロナウドのように点が取れるかどうかですね」


西部
「それは期待されるでしょうけど、ベイルがロナウドになっちゃうとまたいろいろと問題が(笑)」


浅野
「同じことの繰り返しですね(笑)」


西部
「同じですね。ただ、レアル・マドリーって半永久的に同じことを繰り返している強いチームなので。昔はそれこそ、アルフレッド・ディ・ステファノがいたころからそういった問題はずっと抱えているんです」


浅野
「なるほど」


西部
「バルセロナは哲学がしっかりあって、それがあって選手を選んでいる、というフィロソフィ優先のクラブなんですが。初めてじゃないですか、哲学が揺らいでいるのは。ロマーリオが来ようがストイチコフが来ようが、リバウドが来ても、そこは揺るがなかった。喧嘩してでも哲学を守ろうという感じだったのが、今は“メッシ様”になってしまっています。メッシとバルセロナがいかに共存するかっていう状態になっていますね」


CLで期待したいあのクラブ


浅野
「あえて一つ、CLの優勝候補を挙げるとしたらどこがいいと思われますか?」


西部
「リバプール!」


浅野
「その心は?」


西部
「いや、わかんないです(笑)。ただ、この本にも関連しますが、ポジショナルプレーって要はポジショニングを少しずつずらすことで、捕まえにくくする。これってチェスから始まっている概念ですよね」


浅野
「そうですね。これはもともとチェスの用語です」


西部
「一つ優位な状況を作ると、相手がそれに対応してくる。それを逆に利用することでどんどん有利な展開を生み出すっていう考え方です。ポジショナルプレーというのは位置的優位性と質的優位性と数的優位性があります。ただ、これに時間の概念が入っていないんですよ。スピードが入っていない。リバプールは速さを全面に出すことで、『ズレてたって早く詰めれば、潰せるじゃん!』っていうアプローチの仕方をしているので、意外と面白いかなと思っています。

 昨季はレアル・マドリーにやられてしまいました。いくら速く頑張っても、ボールの方が速いよっていう感じで動かされちゃって崩されました。けど2年連続で同じとなるとどうなるかですね。今年はナビ・ケイタが入って来て、机上の理論としてはやられちゃうはずなのに、速いから意外とやられないっていう現象が見れたら面白いなと」


浅野
「近年のCLの傾向として、レアル・マドリーが3連覇したことが象徴的ですが、ポゼッションもできて、カウンターもできて、トランジションが連続するようなハイインテンシティな展開にも強いという、万能型のチームが勝ち上がっているという傾向があります。グアルディオラのポゼッション特化型のシティや、クロップのトランジション特化型のリバプールがレアル・マドリーと当たると、相手の苦手な展開に持ち込めてしまうレアル・マドリーが結局勝つ、という現象が最近起こっているわけですが、リバプールはそこを克服できそうですか?」


西部
「克服したら面白いなと思っています」


浅野
「ある程度それ以外の戦い方もできるようになってきていますか?」


西部
「昨季の決勝だと、『ボールを持たせちゃえばいい』っていうのがレアル・マドリーの基本的な考え方でした。スペースを潰してしまえば、サラーとかマネとかがスピードを使えなくなる。深さが使えない。そこでリバプールがうまいかって考えるとそこまでうまくないです。ただ、深い位置なのでハイプレスに引っかかるとレアル・マドリーは負けるけど、そこをかわせる力はあるっていう自信がありました。だから、マルセロとトニ・クロース、セルヒオ・ラモス、そしてイスコあたりでボールをうまく保持して、ハイプレスを空転させてしまえば、そこで勝負ができる。レアル・マドリーがアトレティコ・マドリーに勝った時もだいたい同じ考え方でした。やりたいサッカーじゃないけど、相手の苦手なことをさせれば自分たちに勝機があるっていう。

 今年はそれを上回るプレスだとか、引かれても崩せる力というのをリバプールは求めていると思うし、そういう補強の仕方をしていると思います。そのリバプールが勝つと、今までと同じじゃダメだと他のチームも思うでしょうし」


浅野
「その攻防も注目して見たいですね」


西部
「バルセロナに関しても今、過渡期にあると思います。バルセロナの自分たちが勝つためにやるいいサッカーって何かというと『ボールを持って、チャンスをたくさん作れば、点もたくさん取れる。押し込んでいるから相手に取られたら、ハイプレッシャーかければいい』っていうサッカーです。そういう哲学でやっているわけです。それが自分たちのいいサッカーだと思っている。他のサッカーを否定しているわけではありません。70%ボールを持てば、80%は勝てるという。ただ、自分たちのいいサッカーが機能してればという前提で言っているんですが、それがうまくいかないことがあまりないチームなんですよ。バルセロナがボールを持てないっていうシチュエーションはほとんどない。常にポゼッションは上回る。

 だから、バルセロナに勝とうと思えば、ボールを取り上げてしまえば簡単に勝てます。引いて守ることに慣れていないし、それに対してのプレーの原則とかモデルというのがあまりない。だから、追い込まれたら難しいと思う。レアル・マドリーも、ほぼ同じような考え方のサッカーをしているんだけど、国内にバルセロナがいるから自分たちがボールを持てないっていうシチュエーションに、年に何回かは遭遇している。アトレティコ・マドリーはもっと遭遇している(笑)。でも、そうなっても強いチームを作っているから、オールマイティというか、やり方をいろいろ変えることができる。バルセロナは自分たちのサッカーができなきゃ負けです、ハッキリ言えば」


浅野
「ただ、バルセロナもちょっとずつ変わってきているんじゃないでしょうか?」


西部
「それはメッシがいるので、メッシは前に残さなきゃいけない。ルイス・スアレスもです。『じゃあ残り8人でゾーンを決めて守りましょう』ってやるようにはだんだんなってきましたね」


浅野
「パワー系の選手も獲得し始めていますよね」


西部
「パウリーニョを獲ったり、ビダルを獲ったりですね。それは守るシチュエーションも出てきたので、必要な選手ってことですよね。ただ、『バルセロナ的にそれでいいのか!』って話もありますけどね」


浅野
「そこは現地でも議論になっているみたいですね」


西部
「『メッシがいるからしょうがないじゃん』って結論になると思うんですが(笑)」


浅野
「では西部さんのCL優勝候補はリバプールということですね」


西部
「まあ候補っていうよりは、そうなったら面白いなってことです」


ディープなジェフ千葉の世界へ…


――千葉について質問したいのですが。


西部
「来たか~(笑)」


――最近システムをいじったりいろいろやってるんですが、何をやっても点を取られて勝てなくなってしまっているこの現状を、我われはどう捉えたらいいのかなと(笑)。攻撃はそれなりにできていると思うんですけど、やはりこれだけ失点していると勝てないと思うんです。失点しなければ強いんでしょうけど、監督も守備面をあまり修正していない。そういった試合が毎試合続いていて、今のままではヤバいんじゃないかなって危惧しています。今シーズンの千葉をどうお考えでしょうか?


西部
「おっしゃる通りだと思います(笑)。Jリーグ最多失点、最多得点ですから。ガンバ大阪が降格してしまった年を思い出していただければと思うんですけど(2012年、ガンバ大阪はJ1で最多得点を記録しながらもJ2に降格している)、失点の多いチームは上には行けません。先ほども申し上げましたが、サッカーって本来は点が入りにくいスポーツですから、毎試合2、3点失点しているチームってやっぱりおかしいんですよ(笑)。ジェフはスペイン人のファン・エスナイデルさんが監督ですが、彼は基本的には攻撃のサッカーをやりたい方です。そして、バルセロナじゃないけど『ボールをキープして押し込むことによって、ハイプレスがかかるから、前でボールが取れればチャンスにもなるし、守備も大丈夫だ』みたいな。大雑把に言えば基本的にそんな感じなんですけど、大丈夫じゃなくなってしまっているのが現状です。

 去年も途中まで同じような状況があったんですが、去年と今年が違うのは、去年の段階ではエスナイデルさんのサッカーがちゃんと浸透していなかったんです。ポゼッションも微妙だったし、ハイプレスも微妙だったから、これが完成すれば『3-2で勝てるようなサッカーができる! 面白いから、続けてみればいいんじゃないか』と。もうちょっと時間をかけた方がいいと思っていました。ただ、今年は監督を変えた方がいいんじゃないかと言っています。なぜかというと、プレーの完成度は去年より上がっているから。監督のやりたいことがほぼできている状態で、失点が止まらないっていうのは、これは明らかに問題があると。これ以上チームの完成度が高まっても、そんなに失点は減らないと思っています。どこに問題があるかということよりも、相手チームの方がうまくなりました。W杯でハイプレスがかからなかったのと同じように、J2でもハイプレスされたからといって簡単にボールを失うチームは減りました。去年と今年では違うんです。

 エスナイデルさんでやると得点はできるんだろうけど、たぶん失点も止まらないだろうというのが僕の考えです。それでも『ポゼッションを高くしたり、ハイプレスをしっかりしたり、もっと得点が取れるようにしたりすれば、このサッカーの魅力が出るから続ければいいんじゃないか』という思いを持っている人もいると思うし、その意見は尊重します。

 ただ、僕が恐れているのはこのままだとJ3に降格する恐れがあることです。来年いいサッカーができるかもしれない、あるいは今年プレーオフに行けるかもしれないっていうプラスと、引き換えがJ3降格では重さが違い過ぎる。まずはJ3への降格をなんとしても避けること。15位でも16位でもいいです。18位でもいい。とにかく降格を避けるってことを第一に考えないといけません。ここで一発逆転を狙うような状況じゃないって僕は考えています。天秤にかける価値が違い過ぎる。今から本気でカッチリと守ったら、そんなに点は取られなくなると思いますよ。点も取れなくなるかもしれないけど、失点は減ると思います。そうしたら、必要な勝ち点はおそらく取れるはずです。ギリギリで急に変えるとそんなにうまくはいかないけど、今ならまだ時間がある。土壇場になって変えるとドツボにはまる可能性がありますけど、今だったら変えた方がいい、というのが僕の考えですね。

 まあ、このサッカーを続けても面白いし、来年大きく飛躍できる可能性があると信じてやるならそれはそれでいいと思います。まだ10ポイントくらい差があるので余裕はありますけど、もしこれで失点も止まらず、ズルズル負けちゃったらけっこう大変なことになると思うんですよ。J3ってプロが3人いればOKのリーグですから、実質アマチュアですよ。今の選手はほとんど残らないと思います。大変なことになりますよ。事の重要さがわかっているなら、天秤にかけるようなものじゃないと僕は思っています。……ちょっとヘビーな話をし過ぎてしまいました(笑)」


浅野
「最後に千葉のお話も聞けたところで、お時間となりましたのでイベントは以上となります。ありがとうございました」


西部
「ありがとうございました!」

当イベントは「くまざわ書店 ペリエ千葉本店」にて開催しました!


Photos: Getty Images

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Tsubasa Kasu

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