「日本の敵」のキーマン:コロンビア編
ついに開幕を迎える4年に一度の祭典ワールドカップ。大会前最後のテストマッチとなった12日のパラグアイ戦に勝利、新体制での初白星を手に本大会に臨む日本代表は19日にコロンビア代表、24日にセネガル代表、28日にポーランド代表と対戦する。ここでは、いずれも強力なタレントを擁する難敵たちのキーマンにフォーカスする。
現在メキシコ代表を指揮するカルロス・オソリオに抜擢され、アトレティコ・ナシオナルでデビューした10代のCBは驚異的なスピードで階段を駆け上がる。2016年にアヤックスに加入すると、レギュラー獲得。ボールを繋ぐアヤックスの哲学を吸収しながら、身体能力に優れたCBは若き才能があふれるヤング・アヤックスの躍進を支えた。トッテナムに加入した今季も継続的に出番を得ている逸材は、コロンビア代表の出世頭となる。4年前のメンバーが多く残っているコロンビア代表において、新戦力の筆頭がダビンソン・サンチェスだ。
育成名人ポチェッティーノは才能を守る
トッテナムの指揮官マウリシオ・ポチェッティーノは育成力に長けた指揮官として知られており、同じくアヤックスアカデミー出身のフェルトンゲンやアルデルワイレルトをチームの要として成長させてきた。ポチェッティーノは、イングランドでの初めてのシーズンに22歳の若者を適応させるべく、できる限りプレーを限定させている。
一例を挙げると、リスクの少ない短距離の横パスを増やすように指示していることだ。アヤックス時代はドリブルでの持ち上がりや縦パスといった積極的なプレーを見せてきたD.サンチェスだが、トッテナムでのデータを見ると縦パスや逆サイドへのフィードが少ない。実際、2月のアーセナル戦でも周囲の意識的なサポートが散見された。難しい局面になりそうであれば、SBが寄って行きパスの距離を短縮する動きでサポートすることに加え、GKへの安全なパスを指示。中盤に入ったエリック・ダイアーが3バックの右CBに近い位置まで下がることで、安全なパスコースを生み出すサポートも効果的だった。
ポチェッティーノは、D.サンチェスの縦パス能力に依存する必要がない「様々な位置からボール循環が可能なチーム」を構築することに成功している。その中に新戦力のCBを組み込むために今季は、ビルドアップの面では周囲がサポートし、守備的な仕事に集中させることによってチームに順応させる時間を短縮しようとしているようだ。
実際、プレミアリーグ初年度ながら、D.サンチェスは見事に安定したパフォーマンスを見せている。187cmの身長と天性のジャンプ力を武器に、空中戦で競り負ける場面は少ない。3バックの中央で起用される局面では慎重な選択が多いが、くさびのボールを潰す能力は高い。背後へのボールに対する反応も上々で、十分なスピードでカバーリング。しなやかな筋肉と長いリーチで、ボールを的確に捉える。地上戦でも、リラックスした状態での対応から長身CBとは思えない柔軟なタックルを仕掛ける。サイドに釣り出された場面でも簡単には抜かれないので、守備陣に安心感を与える。激しいタックルというよりも、ボールを絡め取ってしまうようなリーチの長いCBにはおそらく日本代表も苦しめられるはずだ。
唯一の課題は、クラブと代表のギャップ
空中戦ではプレミアリーグの屈強なストライカーを封じ込め、前後でのスピード勝負にも対応する。コロンビア代表の一員として臨むW杯本番ではバルセロナに加入したジェリー・ミナ、ミランに所属するクリスティアン・サパタのどちらかとコンビを組むと思われるが、彼を攻略しなければコロンビア代表のゴールは遠い。
3月の親善試合フランス戦でも、俊足アタッカーをそろえる難敵を相手に抜群のパフォーマンスを披露し、背後のスペースに抜けてくるようなボールを高さとスピードで封殺。くさびのボールにも積極的なボール奪取を狙いに行くので、縦に起点を作るのも難しい。代表ではエスパニョールに所属するMFカルロス・サンチェスがサポート役として両CBの間に頻繁に下がることで、安全なパスコースを生み出している。周囲が常にサポートしてくれるトッテナムと比べると代表では果敢な仕掛けのパスを送り込む意識が強く、そこを狙われてしまうことが唯一の課題かもしれない。
Davinson SÁNCHEZ
ダビンソン・サンチェス
1996.6.12(22歳)187cm/81kg DF COLOMBIA
PLAYING CAREER
2013-16 Atlético Nacional
2016-17 Ajax (NED)
2017- Tottenham (ENG)
■「日本の敵」のキーマン
・コロンビア編:ダビンソン・サンチェス
・セネガル編:サディオ・マネ
・ポーランド編:ロベルト・レバンドフスキ
Photos: Getty Images
Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。