海外サッカーマニア林陵平の職人芸 ゴールパフォーマンス大特集
林陵平(東京ヴェルディ)インタビュー
フットボリスタ4月号では東京ヴェルディの林陵平に、今ヨーロッパサッカー界で話題になっている「ポジショナルプレー」という新たな戦術用語を現役Jリーガーはどう考えるのか? というテーマで貴重な「現場の声」を聞かせてもらった。そもそも彼は「JリーグNo.1の海外サッカーマニア(本人談)」。せっかくの機会なので、海外サッカー専門誌の責任として31歳の熱過ぎる想いを受け止めてきた。 ※このインタビューは18年2月に収録した
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チームメイトに『誰?』って言われるのも多い。答えを教えても共感してもらえない(笑)
──(メインテーマが終了した後)せっかくなので、一部で噂になっている海外サッカーマニアぶりを聞かせてください(笑)。
「僕はJリーグでナンバー1の海外サッカーマニアですよ。そこは自信があるんで(笑)」
── なんでそんなに好きなんですか?
「なんでそんなに好き?(笑)。いやなんでだろう」
── 週に何試合ぐらい見るんですか?
「いや週何試合というか、家に帰ったら見てるし、チャンピオンズリーグもテレビで見ていて、この間もリバプール対ポルト、あとシャフタールの試合も見ました」
── 自分のプレーに何かを得ようと思って見ているんですか?
「ただ単にサッカーが好きで、Jリーグも見ますし。その中で目についた選手を選手名鑑で調べて覚えるのも好きですね」
── 完全にサッカーマニアの行動ですね(笑)。
「もちろん自分のプレーに照らし合わせるというか、フィルミーノのプレーとかはすごく参考にしているし、タメの作り方、ボールの引き出し方を見ている。あとは単純にサッカーが好きで各クラブがどういうサッカーをしているかチェックするのも好きです」
── では、最近気になっているチームは?
「今はマンチェスター・シティを見ちゃいますよね。システム([4-3-3])が今チームでやっているサッカーと一緒だし、グアルディオラのサッカーは見ていて面白いですね。本当は去年までモウリーニョの方が好きだったんですけど、今年はやっているサッカーがグアルディオラのシティに似ているので、やっぱり気になって見ちゃいますね」
── 同じポジションのアグエロのプレーを見たりとか?
「アグエロも好きですし、ガブリエウ・ジェズスもやっとケガから復帰してきたし。そういう面では[4-3-3]システムのチームは自然と見てしまいますね」
── ゴールパフォーマンスのお話もうかがいたいのですが、今まで何パターンくらいやってるんですか?
「去年14点取って、10パターンくらい出しています。実は山形とかレイソルの時もやっているんですよ。取り上げられるようになったのは去年からですね。DAZNのおかげで。そこから注目されるようになって、だから種類はたくさんやってますよ」
── そうですよね。テロー(フィオレンティーナ)やってましたよね(笑)。
「テロー、やってましたね」
── 誰が気づくんだってレベルですけど(笑)。
「クリスティアーノ・ロナウドみたいな有名なのはあまりやりたくない。雑誌でいうとフットボリスタ的な存在になりたい(笑)」
── テローなんてやっても誰も気づかない(笑)。
「誰も気づかないです。でもたまに気づく人もいるんですよ。そういう人に出会うと、『この人はサッカーマニアだな』と感じられてうれしいです。僕はマニアックなところに行きたいんです」
── 過去にやったゴールパフォーマンスでお気に入りは誰ですか?
「ムバッペとか最近みんなもやり出したけど、僕はムバッペがそんなに目立たない時からやってましたからね。そこから急成長して、モナコからパリ・サンジェルマンに移籍しましたけど、僕はモナコ時代からやってました。それと去年ゴミスやったんですよ。あれをやる人は日本でいないだろうと」
── あのピッチを這いずるやつですよね。あれはハードルが高い(笑)。その時のチームメイトの反応はどうでしたか?
「『何してんだ? アイツ』って、『赤ちゃんか?』って言われたんですけど、『あれはゴミスだよ』って言ったら『誰だよ! ゴミスって』。チームメイトに『誰?』って言われるのも結構多いです。答えを教えても共感してもらえない(笑)。去年の最終戦はベンテケとバレンシアのサンティ・ミナのゴールパフォーマンスをやったんですけど、誰もわからなかった」
── 守備範囲広いですね。プレミア、リーガと網羅してますから。
「全部好きです」
── コイツを見ておくと通ぶれるという選手はいますか?
「ラツィオのミリンコビッチ・サビッチ、シティのジンチェンコ、ユナイテッドのマクトミネイ。あとセルタのマキシ・ゴメス。あれも間違いなくきます、マキシ・ゴメスです。覚えておいてください」
── わかりました、わかりました(笑)。
広報担当「陵平のInstagramに載っている選手は名前が全然わからない。合宿中にも『ウディネーゼが、アタランタが……』って言っていて、『何を言ってるんだ』と思って(笑)」
── 次にゴールを決めたら何をやってくれるんだろうと、僕も楽しみになりました。とりあえず、たくさんゴール決めてください(笑)!
「ファンのみなさんには楽しんでもらいたいし、自分もやるのは楽しいので(笑)。今シーズンもやりたいと思っているので、期待してください」
昨シーズンのマニアックなゴールパフォーマンスを一挙紹介!
Ryohei HAYASHI
林 陵平(東京ヴェルディ)
1986.9.8(31歳)186cm/80kg FW JAPAN
東京都八王子市生まれ。東京ヴェルディの下部組織でジュニアからユースまで過ごした。05年に明治大へ進学して頭角を現し、大学3年の07年関東大学サッカーリーグで43年ぶりの優勝に貢献した。その年の天皇杯では4回戦まで勝ち進み、京都サンガから1得点、清水エスパルスから2得点を挙げる快挙を達成した。大学卒業後、09年に古巣の東京ヴェルディに加入したが、翌年に柏へ移籍する。12年7月からはレンタル、翌13年シーズンより完全移籍でモンテディオ山形に加入。17年に水戸へ活躍の場を移し、チーム最多の14得点を記録した。プロ10年目となる節目の今季、東京ヴェルディへ復帰を果たした。
Twitterアカウント@Ryohei_h11、Instagramアカウント@ryohei_hayashi。
Photos: Takahiro Fujii, Getty Image
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Profile
浅野 賀一
1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。