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Jリーガーが語るCL第3回 小野伸二

2015.11.24

欧州サッカー好きのJリーガーに、UEFAチャンピオンズリーグの“自分流”観戦ポイントを指南してもらうスカパー!と『footballista』とのコラボレーション連載。第3回は大会を2季経験し、01-02には日本人として初めて「ヨーロッパ・タイトル」を獲得した小野伸二が登場!

――小野選手は現在も欧州サッカーをよくご覧になられますか?

 「好きなスペインリーグやスカパー!でチャンピオンズリーグ(以下UCL)を録画やハイライト番組を中心に見ています」

――UCLという大会は01-02に移籍したフェイエノールトで経験されました。そのシーズンのグループステージ(以下GS)第3節バイエルン戦が大会デビュー戦でしたね。

 「欧州に渡ったばかりで興奮状態でしたから、その時は大会の大きさや凄さをよくわかっていませんでした。オリバー・カーンがいたかな。ただ、オランダとは違う国の強豪と戦える喜びを感じていましたね」

――GS3位でUEFAカップに回るのですが、その後、決勝の舞台に立つことになります。

 「レンジャーズ、PSV、インテルと強敵に勝ち、決勝は自分たちのホーム、デ・カイプでやれるというので、みんな一つになっていましたね。また相手がドルトムントで、オランダ対ドイツと隣国同士の戦いになり、会場の熱気も凄まじくて。でも、あの時は負けるなんて気持ちは一切なく、僕自身とても楽しんでプレーできたんです」

――翌シーズンはUCL予選で2試合ともにゴールを決め、チームを本戦出場に導きました。

 「得点後の反響を知り、UCLに出るということが欧州の人々にとっては凄いことなんだと、2年目にして実感しましたね」

――欧州のトップレベルで戦うアジア人が珍しい時代に、違う文化の中で自分の力を認めてもらうために意識されていたことは?

 「言葉もわからない状況で行ったので、とにかくまず監督が何を求めているかを考えなければならないと。そして、チームメイトとは何よりコミュニケーションを取る。日常生活の過ごし方も大事でしたね」

――02-03のUCLではGS5試合にフル出場。ユベントスと対戦しましたが、思い出は?

 「ホームとアウェイの両方で試合後、デル・ピエーロさんがシャツを交換しに来てくれて。ヒデさん(中田英寿)と仲が良かったからだと思いますが、うれしかったですね。試合は最初のホーム戦が1-1で、その時は“勝てるかな”とも思った。けれど、アウェイの彼らは別人でした(2-0で敗北)。日本では双方で戦い方をあまり変えませんが、ここまで違うのが欧州かと。アウェイではまず負けないサッカーをする。で、ホームでは絶対勝つ。温度差というか、明らかにスタイルが違うんです」

――あれはヤバかった、という敵地は?

 「アウェイ感が一番なのはフェネルバフチェ。人が跳ねると地響きで本当にピッチが揺れるんです。国内ではアヤックスで、相手ファンからバスに石が投げ付けられるなんて、日本じゃあり得ないですよね」

――UCLを体験したことは、ご自身のキャリアにどのような影響を与えましたか?

 「世界には凄い選手がこんなにゴロゴロいるんだと知れたことでしょうか。有名選手だけでなく、戦ってレベルの高さに驚く選手が大勢いて。だから、そんな中でスポットライトが当たる人というのは真の一流なんだと。例えば、02年のUEFAスーパーカップで対したレアル・マドリーのジダンなどは、ほとんどボールを取れる気がしなかった。体にも触れないんですよ。テリトリーというか、彼の間合いは別次元」

パサーの視点

「セスクはいいところを見ている」

――今季のUCLに話を移します。GS第3節が終わった段階で気になるチームは?

 「バイエルンでしょうか。グアルディオラが監督になってサッカー自体が変わり、攻守とも非常に興味深く見ています。ユベントスは、ピルロやテベスらが抜けたチームをどう再構築していくかですね」

――そのバイエルンは第3節、2連敗中だったアーセナルに敵地で2-0と敗れました。

 「(スカパー!サッカーサイトで配信中のハイライト映像を見ながら)やはり中盤のミスから1本、2本のパスで一気にゴールまで行くスピードは凄い。両チームとも世界トップクラスですが、その中で好セーブを見せていたノイアーに考えられないようなミスが出て、そのチャンスをアーセナルがしっかり物にした。決め切れる力、そんな一つのプレーが勝敗を分けた試合でしたね」

――ボール奪取後、縦に速く攻める。アーセナルが普段とは違う戦い方を貫きました。

 「ボールを奪ってからは速いに越したことはない。DFが戻る前に数的優位の状態でゴールへ迫れれば、敵にとってそれほど嫌なものはないです。ただ、スピードがあればそれだけミスのリスクも増える。レベルが高くなればなるほど、そういう速さの中での『止めて蹴る』技術が重要になる。それが、今の欧州サッカーではないかと」

 ――小野選手のようなパサーに要求されるプレーや判断のスピード、正確性なども高まっているでしょう。そこで大事なのは?

 「とにかく周りを見ておくことですかね。全員が全員、90分を通して確実なプレーをやり続けることはないと思っています。だから、どこかの1分、2分で隙が出る瞬間を逃さずに突けるかどうか。僕は90分の中で、そこを見続けなければならない」

 ――その点で、優れたパサーというと?

 「セスクです。エジルも凄いですが、彼よりもパサーとしては無駄がない。いいところを見ているんですよね、それで味方のスピードを落とさないパスを出せる」

 ――第5節の注目カードを教えてください。

 「まず、全員攻撃全員守備で激しく闘えるアトレティコ・マドリー(対ガラタサライ)。互いに守りが堅いユベントス対マンチェスター・シティは、攻めに転じた際の『速さ』に注目です。バルセロナ対ローマではメッシが復帰するかどうかですが、そんな時に新鋭が台頭するのもバルサだと」

――最後に、サッカーが好きな子供たちに向けて、UCLはこう見たら楽しい!というポイントをアドバイスしていただけますか?

 「好きな選手を見つけることでしょうか。そこから“こんなプレーしてたな”とイメージしたり試してみたり。何かを学ぼうと考え過ぎない。『面白い』と思ったプレーや選手は自然と頭に残るはずです」

――ちなみに、小野少年のアイドルは?

 「もうそれはマラドーナ! マラドーナとメッシ、どっちが上?なんてよく言われますが、僕は断然マラドーナだと。あの人の技術、ゴール嗅覚……すべてが凄過ぎるし、そう、とにかく面白いんですから(笑)」


このインタビューの動画版をこちらのスカパー! サッカーサイトで配信中!
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