22日に行われたリーガ第28節バルセロナ対レアル・マドリーの首位決戦は、2-1でバルセロナが勝利。宿敵との勝ち点差を4に広げ、2シーズンぶりのリーグ制覇へ前進した。
結末は戦前の下馬評通りとなったものの、拮抗した展開となった一戦の勝敗を分けたポイントはどこにあったのか。プレミアリーグやブンデスリーガの公式データサプライヤーである『opta』が提供する詳細なパフォーマンスデータを基に分析する。
主要スタッツの中でまず目を引くのがボール支配率だ。グアルディオラ政権時のクラシコでは70%超を記録することも珍しくなく、敵地サンティアゴ・ベルナベウでの昨年10月の対戦時も57.7%を記録していたバルセロナが、今回は52.4%。後半途中の時点ではマドリーの方が上回っていた時間帯すらあった。
実際、ロナウドのシュートがクロスバーを叩いた12分のシーンは一度後方に下げて作り直してからのものであったし、25分から26分にかけての一連のプレーでも、最終的にマルセロが右足で放ったシュートはブロックされたものの1分以上ボールを保持して攻め続けたように、マドリーがしっかりとボールを繋いで相手ゴールへと迫る場面は何度となく見られた。
一方でバルセロナはと言うと、挙げた2得点はセットプレーとロングボールから。終盤、立て続けに相手ゴールへと迫ったシーンを思い返しても、印象に残っているのはネイマールやメッシがドリブルで持ち上がっていく姿であり、パスワークで相手守備を攻略する局面は多くなかった。
消耗強いられた攻守の要
ポゼッションに限らず、シュート本数などその他の項目に目を向けてみても数字上では大きな差はない。ただ、実際にピッチの上で起こったことを振り返ってみると、65分を過ぎたあたりから急激にペースを落としたマドリーに対し、バルセロナが速攻を中心に次々と襲い掛かる展開となった。ミッドウィークのCLマンチェスター・シティ戦から中3日であったバルセロナに比べ、前週のリーグ戦から中6日あったマドリーにコンディション面の利はあったはず。にもかかわらず、マドリーが先にガス欠を起こしてしまった要因として、パスワークを司る中盤3選手のプレーエリアに着目したい。
両チームの3MFのプレーエリアをヒートマップで比較してみると、マドリーの3人の方がより広い範囲をカバーしている(する必要があった)ことがうかがえる。
特に前方に位置する2選手、右インサイドMFのモドリッチは、守備時は[4-4-2]の右サイドを埋めるベイルをサポートしつつ、攻撃時にはボールをさばいて攻めの起点に。左サイドのイスコも献身的に守備に走り、対面のメッシ&ダニエウ・アウベスのコンビに途中までほとんど仕事をさせなかった。ただ2人とも最後は足が止まり、終了を待たずピッチを後にしている。
なお、守備への姿勢が批判されていたベイルは、この試合ではポジションを埋める意識は決して低くはなかった。ただ一方で、シュートはロナウドの4本、ベンゼマの3本に対しわずか1本。対決が注目されたバルセロナの3トップ(メッシ5本、スアレスとネイマールが4本)と比較しても一人だけ低調な数字が示すように、肝心の攻撃面での存在感が希薄になってしまった。
バルセロナが70%近くボールを支配していたかつての対戦では、マドリーはしっかりとブロックを形成してスタミナの消耗を最小限に抑えつつカウンターに活路を見出そうとしていた。今回はポゼッションで渡り合うことができたものの、その要となった中盤3選手への負担は大きく、最後は逆にバルセロナのカウンターにさらされる結果となってしまったのではないか。
マドリーにとっては、優勢だった時間帯に追加点を奪えなかったことが悔やまれる。とはいえ前半途中から60分過ぎまでは主導権を握り、トータルで見て互角かそれ以上のパフォーマンスであったことも間違いない。リーガの順位決定方式では、勝ち点の次に優先されるのは当該チーム間の対戦成績。第1戦に3-1で勝利しているマドリーは2戦合計スコアで上回っており、同勝ち点ならバルセロナをかわせる。これで優勝争いが決着したと見るのは早計だろう。
Data: Opta
Photo: Getty Images
Profile
久保 佑一郎
1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。