日本人12選手が参戦する今季のUEFAチャンピオンズリーグ。そのリーグフェーズ第3節で、UEFA公式のCL週間ベストイレブンに選出される活躍を披露したのが、モナコ在籍3年目の29歳、南野拓実だ。現地スタッド・ルイⅡでツルベナ・ズベズダ(レッドスター・ベオグラード)戦を取材した小川由紀子さんが試合後、本人に話を聞いた。
「セレブレーションする時間はなかったですけど(笑)、1点は1点なんで!」
10月22日に行われたCL第3節、モナコ対ツルベナ・ズベズダで、南野拓実は2ゴール1アシストの大活躍で5-1の快勝に貢献。この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した。誰もが納得の選出だ。
南野にとってCLでのゴールは、レッドブル・ザルツブルク時代の2019年11月27日、対戦相手として伊東純也(現スタッド・ランス)も出場していたヘンク戦以来、約5年ぶりのこと。
「チームの勝利に貢献できて、素直にうれしい」
試合後に南野は、晴れやかな笑顔を見せた。
映像をご覧になった方も多いかと思うが、開始20分に挙げた先制点のシーンは、ちょっと珍妙だった。
CBのウィルフリード・シンゴが、ハーフウェイラインより少し上がった深い位置から出したロングパスに反応して、南野はゴールめがけて駆け出したが、相手DFは追ってこず、完全な独走状態に。南野はそのまま1対1となったGKをかわして、ゴール右側にシュートを蹴り込んだ。
ボールがネットに収まったのを見届けても、副審の方を見ながら少しキョトンとしていた南野。しかしフラッグは上がらず、まもなくゴールが認定されると、スタンドは歓声に包まれた。
「センターバックの2人の足が止まっていたから、完全にオフサイドだろうと自分では思っていました。でも、VARがあるからいったんレフェリーが介入することになるのはわかってたので、とりあえず決めておこうと思って……。そしたらゴールになったので、セレブレーションする時間はなかったですけど(笑)、1点は1点なんで、よかったです!」
歓喜爆発の先制シーンになるはずが、「あれ、あれ?」という感じになってしまったが、南野の言う通り、1点は1点。モナコはこれで先手を取った。
それから10分も経たないうちに、元パリ・サンジェルマンのDFティロ・ケーラーが相手を止めに行ってPKを献上。これを決められて1-1に返されたが、前半終了間際にFWブレール・エンボロがゴール正面から叩き込み、モナコはリードを奪い返した精神的にもプラスの状態でハーフタイムに突入した。
そして迎えた後半は、モナコのゴールラッシュに。まずは54分、すでに1アシストのシンゴが驚異の30m弾で追加点。その直後、右ポスト手前からエンボロが頭で押し込んだシュートはボールが腕に当たっていたとして無効となったが、70分には南野が2点目を決め、アディショナルタイムには南野のパスを受けたマグネス・アクリウシュがドリブルで切り込んでトドメの一発。5-1で勝ち点3を手に入れた。
「試合2日前、監督に攻撃陣全員、活を入れられていたんです」
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。